表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代の妖怪  作者: 山鷺 青
2/2

すねこすりの在る地 ~来たる日~

ソレは、ただそこに在るだけだった。

なんのこともない。ただ、夜になったら通ってくる人間を少しばかり驚かすだけの存在。

それ以外は何もしない。


長い間、ソレに名前は無かった。必要としなかった。なぜなら、人間はソレがそこに在るのに気が付かないから。皆それぞれ、結果を不思議がり、或いは恐れるものの、原因については全く無頓着だった。


ある時、誰かがソレの起こす結果に名をつけた。

『すねこすり』という名だった。




ソレは、ずっとその場に在った。

いつから在ったのか。

なぜ在ったのか。

それは、誰もわからない。

ソレにもわからない。

いや、ソレがわかるはずもない。

なぜなら、ソレには意思がないから。

ただ在るだけだったから。

言うなれば、ソレはただの『力』であった。

ただ存在して、とある事象をもたらすだけの、『力』。

磁力が鉄に作用するのと同じ。ただ相手が人間だっただけ。


『力』に、意思のあるはずがない。





「おっと」

1人の男が、夜道を走っていた。何かが股の間を通った気がして、脚がもつれそうになる。

「危ない危ない」

そう言って男は再び走って行った。



ソレは、明らかに衰えていた。

いや、この言い方は正確ではない。

人間は、ソレに対して強くなっていた。

なぜか?ソレはそんなことは考えない。ただの『力』は、何も考えない。


人々の間から、『すねこすり』は消えた。

恐れも、疑問も、何もかも消えた。


それでも、ソレはずっとそこに在る。

哀しみも、苦しみもしない。

ただ変わらず、夜に通った者の股の間を、何かが通ったような錯覚を与える。




ソレは、そんな『場所』として、ずっと、そこに在り続ける。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ