僕らのラプソディー。
その拳は、少年の鼻頭に正確にヒットした。
「―――ッッ!?」
自分より頭2つ分は小さい人物に殴られたというのに、よほど強い力だったのか―――少年はたやすく吹っ飛ぶ。
そして、とても不幸なことに気絶しなかったらしく、すぐに地面を転げ回り始めた。
「ツ、ツッ!アアァアイヅウゥアアッ!!」
そんな、痛みに悶える少年を見下ろして、当の殴った本人は、困ったように呟いた。
「え、えぇ...ッ?何か、私がどうしようもない悪者みたいじゃないですか...。先に殴りかかってきたのはそっちなのに...」
小柄な身体に大きな瞳、長い黒髪をツインテールにしたその姿は清純派アイドルのようで、人を殴り飛ばせるようにはとても見えない。
しかし、少年は確かに少女の足元に転がり続けていた。鼻血とうめき声を吐き出しながら。
「まったくもうッ!!開始13行で私の印象は底辺じゃないですかッ!?あなたは弱すぎるんですよ、もー!後は任せましたからね、星奈ッ!」
ふてくされたように頬を膨らまし、隣に立つ男に声を掛ける少女。
すると、左目の下に泣きぼくろがあるその男は、少女の頭をポフポフと撫でると、いまだに鼻をおさえている少年の前にしゃがみこんだ。
「いやーどぅもどーも!俺らの事知ってる?知ってる?」
その言葉に、少年は顔を上げ、すぐに絶望したような顔になった。
「―――...、代表ッ......!!」
少年が発したそれに満足したのか、男は更に笑顔の色を濃くする。
「そーそー、ご名答ッ!!じゃあ、俺達が今日君のところに来た理由は、もちろん分かるよね☆」
再びうつむく少年。その額には、大量の汗が浮かんでいる。
それを分かっているのかいないのか、男は一人で話し続ける。
とても、楽しそうに。
「いやぁー、それにしてもイケないなぁー。学校に保管してある薬品、勝手に持っていって売っちゃうんだもんなー。二週間前から、今までで計5回盗ってるよねぇ。イケないイケないっと」
そして男は、鼻血にまみれた少年を地獄に突き落とす為の、最後の一言を呟いた。
「―――そんな人、この学校には要らないなぁ」
瞬間、少年は再び顔を上げ、正座になり、両手をつき、つまり土下座スタイルになった。
「す、すみませんでしたァッ!!もう二度としません、だから、だからッ!それだけはやめて下さい!!」
頭を床にこすりつけて叫ぶ少年に、男は少しだけ困った顔になった。
「ちょッ、よしなよッ。そんな事されたら、こっちも罪悪感感じちゃうよー。ね、顔上げて?君の言うことは分かったから」
「!!じゃあ...ッ!」
少し見えた希望に、顔をあげる少年。だが、このような流れは往々にして良い終わり方にならないのがお約束。
例によって、少年もまた、目の前の男に踏みにじられた。
「まぁ、今更何をされたって考えは変わらないけど。」
「――『代表議会より通告。1学年医組、小山田カケル。学校内の薬品の無断転売及び校内暴力未遂。今日をもって、我が校より退学を命ずる。』...って訳だから。バイバーイ」
続く←
第1話に目を通していただき、ありがとうございます。
拙い部分もたくさんありますので、アドバイスを頂けるととても嬉しいです!
えーっと(´ω・`)
今回の話はプロローグ的なものなので、よく分からない所がたくさんあると思います(最後の『1学年医組』とか)。
そこらへんは次あたりで説明していきます。
ややこしい説明かもしれませんが、ご容赦下さい(´∀`)テヘ
では、2話で逢える事を楽しみにしています←
読んでいただきありがとうございましたー♪