【第八話】幽霊、星空に手を伸ばす(後編)
空を眺めてしばらくしてふと思う。
…そう言えば、
「ねえ零」
「んー?」
「…結局スマホどうなったの?」
「持たせたに決まってるだろ」
兄が零より先に返事をする。
当の本人こと零は、うへーと言う変な声を出す。
兄は零のことになると兎に角敏感になる。
ポテチが食べたいと言えばポテチを出し、星が見たいと言ったらこういった場所に連れて行く、多分金が欲しいと言ったら箱で渡す。
そして一言
「足りないか?」
きっとそうに決まってる。
そして幽霊にスマホを持たせようとする始末。
最初零は「幽霊にスマホ?!聞いたことないナニソレ?!」とか言ってた。
…「確かに二次創作とか一次制作も見たいけど〜!!」とか何とか言ってたけど。
ちなみに兄が零と再会した日にスマホは注文したらしい。多分真剣にスマホいじり出した時になのかな…とか思った。
最新機種の高いやつ。
まあ、違うかもだけど。
そしてスマホは、そうやって零が言っても渡されるから貰って、次の日には兄の部屋のテーブルの上に置いてある。
でも、零が同じことを三回もやる頃には、兄の部屋に零が入るだけで兄は寝てても起きるし、扉の前に行くだけでも反応するようになってしまった。
と言うか、
「スマホを持つのがそんなに嫌か?ホントはチップ埋め込んでも良いぐらいなんだが?わざわざスマホで許してやると言うのに…そうかそうか、オマエはそう言うやつ「わかったわかった!わかったからぁ!!ごめんなさい!!」」
とか言ってた。
何と言うか…私にはオーラが見えた。
オーラが、ブワァッと、こう、背後に…
まあ、そんなこんなで、この幽霊、スマホを持っているのだ。
幽霊なのに。
「変なの」
「ヒドイ!傷ついちゃうよ!か弱いレディースになんてこと言うの!!」
「はっ、どこが?」
「今鼻で笑った!?」
なんだかんだいいながら、まだ零は望遠鏡をいじっている。
星空そんなに好きなんだ…
私は星の名前も星座の名前もろくに分からないのに。
「そう言えば、今更だけど、何で兄最初零見えてたの?」
ふと前から思っていた問いをぶつける。
すると返って来た答えは私の知らない新事実だった。
「俺昔から霊感あるぞ」
「…は?知らないんだけど」
「言ってないからな」
さも当然のような顔で言う。
「私は知ってたよ!」
零は大きな声で言う。
そして私は…正直少し呆れた。
何で言わなかったんだろう…
「…ねえ、あの星なんて言うの?」
少し気分展開にでも別の話題を振ってみた。
「「アルタイル」」
「…」
別に二人で揃って答えなくてもよかったのに…
「というか兄も星詳しいの?」
「昔、どっかの誰かさんが横でずっと騒いでたからな」
「え?さっくん浮気?」
「お前だよ。それに、俺は一途だぞ、お前に」
零、しばらく黙って
「…変なのー!」
と言い顔が見えないようにする。
バレてるぞ、照れてるの。
「…お前も照れるんだ」
「うるせー、照れてないしー、これは、惑星みたいに太陽の光を反射してるだけだし…!みんな眩しいと思って配慮してあげただけだし!」
「はいはい、そういうところも可愛いよ」
「何なのオマエ…!」
「イチャつくならそこの森の中に行ってよ…」
「莉央ちゃん!?!?」
星とか夜とか、興味なかったけど、悪くなかった。
また後で、星について調べてみようかな。
そこで一つ、息を吐く。
ーーー
ーー
ー
「ってかさ、今日のセリフ、なんというか、…甘くなかった?」
零があっちも見てくるとどこかに走っていってしまった後、兄と並んで座る。
「あぁ、そのことなんだが…」
風が吹く
「あいつは言わないと伝わらない。というか、言っても伝わらない。特に自分関係のこととなるとな。他人には敏感のくせに。だからもう、今度からはドストレートに行こうかと」
「ああ…なるほど…」
何と言うか…必死なんだな…
「まあ…頑張って、」
「あぁ、もう逃す気はないからな」
そう言って兄は立ち上がる。
「…どうしたの?」
「もちろん、アイツを追う。目が離せないからな。お前も、しっかり待ってろよ。先に寝ててもいいから」
そう言って兄は走っていってしまったのだった。