【第七話】幽霊、星空に手を伸ばす(前編)
「あ、はくちょう座」
私たち3人は今、山に来ていた。
あれから一週間ほど経った。
学校はその一週間の間行っていない。
何故なら、兄が本当に私を引越させて学校も転校になったのだ。
別に私はいい、興味ない。
学校なんて、思い出もない。
だから、どうでもいい。
親とか学校とか、全部兄がやってくれた。
その間、私はテレビを見たり、兄にもらったスマホをいじったりしていた。
「いやー、まさか、りおりん、スマホ持ってなかったんだねー」
「あの家見てそう言う?」
その通り、私はスマホも持っていなかったし、テレビだって滅多に見ていない。
だからもしかしたらテレビを普段から見ていたら、兄がアイドルって気づけたのかなって、思ってみたり。
「しかもスマホ音痴だし」
「うるさい、そんなことより…」
空を見上げる。夜空にはたくさんの星。
「何で急に星が見たいって言い出したの?」
「んー?あー、何でだろうねぇ」
零は空を見て答える。
笑っていて、瞳に星が映る。
「私昔から星好きでさ、いつか行ってみたいって思ってたんだ。星見に山に、天体望遠鏡とか持ってさ、」
山はやっぱ涼しい。
風が少し吹く。
「だから、まあ、生きてた時は叶わなかったんだけど、今叶ったなあって、あはは、ごめん、答えになってない?」
何だかその顔は、いつもと変わらないはずなのに、
「…あの日も、確か——」
「どうだ、何か見えたか」
兄が帰ってきた。
ここは穴場な夜空スポットだか、結構わかりずらいところにもあって、予約も必要だから今迷子になっていたおばさんに道を案内しに行っていたのだ。
因みに兄はアイドルのことがバレないよう変装をしている。
「グラサン似合ってるねぇ」
「お前も相変わらずそのマフラー似合ってるぞ」
いつも同じ服の零が今日はいつもつけていないマフラーをしている理由。
…と言うかさらっと褒めたな。
兎に角、理由は兄が
「たまには他の服を着ろ。ほら、昔持ってたお気に入りのパーカーとか。もう持ってないのか?」と聞いたことがきっかけだった。
でも零は着替える気が無く、
「せめて山行くならその制服はどうにかしろ。できれば、できればでいいから(圧)」と兄。
そして渋々零が着替えたのは、というか巻いたのは、まさかまさかの夏マフラー。
こんなクソ暑いのに。
聞いてみたら
「幽霊に温度とかないんだよねー、だから北極行っても平気平気〜」
と言っていた。
まあ、見てて暑苦しいけど、馬鹿に見えるけど、本当に。
因みにマフラーは、チェック柄で端に変な猫のマークが付いているやつ。
そのマフラーは零が昔から持っていたらしく、兄がそれを見たら目を伏せて闇を感じたため、私は黙った。
そして新しく買って貰えばそれを着用することもできるそうだ。
零曰く、「よくホラー系で『いつの間に?!』ってのあるじゃん?物が動いてる、無くなってる、とか、あれだよあれ、」
とのこと
よくわからない。
「よーし!早速、望遠鏡♡」
零は望遠鏡をいじりだす。
「後で二人にもしっかり私がリードして教えてあげるからねー」
零は変な鼻歌を歌いながら操作していく。
明日は初めての学校。
小さく軽い息を吐いてから、空を眺めた。
…この時間、嫌いじゃない。