【第六話】朝食にて、目玉焼き〜新事実を添えて〜
朝起きたら朝食が用意されていた。
目玉焼き、お米、お茶etc…
勉強なんてしっかりやらず不真面目に、やっても宿題だけ。
自主勉強?もしやってたら明日災害が起こるかもしれないレベル。
それでもわかる。これは明らかに栄養バランスが綺麗な、ものすごく綺麗な三角形。正三角形。
もう既に席に着いていた幽霊は目を輝かせてウズウズと私を待っていた。
「チャオ!莉央ちゃん!さあさあ席に着いて!」
「‥別にあんたが作ったわけじゃないでしょ」
「えー!?何でそんなこと言うの!?さっくんの料理は格別なんだよ!?」
「‥さっくん?」
ゆっくり、零の言葉をなぞるようにして言う。
何ださっくんって、
「なんか前に言ってた高身長の鎌振り回す男のゲームのザックってやつ?」
「違うよ!それはまた別だし、…それならざっくんになるじゃん。…え〜?知らないの?さっくんだよ、さくやくん。さぁっくぅん。わかる?SA・KU・YA.Ok?」
「わかったから黙って」
まだ「えー」っと言っている。
何だコイツ。
零はまだぶつぶつ言っていたが、そのままテレビをつけた。
そこに映ったのは………
「あれ!?」
「朝からうるさい」
「だって!!兄者が!さっくさくさくさっくんが、!!」
テレビには兄、朔也…いや、芸名で言う『KaSa』が
「そのテレビ、消せ」
反射的に振り向く。
そこには
「さっくんおめでとー!!ってかこれマジで!?っすっご!!天才じゃん!!」
…さっくんがいた。
[いやー、新人なのにもう世界トップのアイドルですか。凄いですね〜。]
[しかもアイドルだけじゃなく、モデル、人気ブランドとのコラボ、俳優、他にもバライティの司会まで…]
テレビから漏れる音声。
テレビの中にいたのは紛れもない
私の兄だった。
「‥てか何で、零は知ってたの?」
「いや、実際のは今日が初めて」
よくわからなかった。
思わず顔を少し歪めて首を傾ける。
「…なに?」
「んー、でも、私が言うことじゃないからなあ。」
もっと顔が歪む。
「って言うか、莉央ちゃんは…りっちゃんは知らなかったの?」
「知らなかったからその呼び方やめて」
「ごめんね、りっぴょん」
「怒るよ」
零は肩をすくめる。でも全然反省の色は見えない。
「兎に角食え。今日が日曜日でよかったな。」
兄も席に座った。
「えー、アイドルなんだから踊って歌いながらラーメンでも食べてみてよ」
「バカなのか?」
「はぁー?バカって言った方がバカなんですー。知らないのぉ?ばーかばーか」
零はわかりやすくぷんぷんしている。と言うか、口でぷんぷん言っている。
「はぁ、昔はさー、『え、そ、それは…む、無理というか…えっと、その…』みたいな感じだったのに。こんな、言葉が露骨になって…。お母さん悲しいわあ?!」
どうしてこうも朝からテンションが高いんだろうか。
私は朝が苦手だからますます理解できない。
「…あ、言い忘れてた。ごめん、おはよう、変人さん達」
零が勢いよくこっちを見る。兄は目線だけ。
「もうっ!さっくん!りっぴょんの口が悪くなっちゃったじゃん!ばか!このツンデレ!」
「バカって言った方バカだ。知らないのか?それにツンデレじゃない」
「はー?このトンチンカン、ナスビ!このっ!イケメンが!だからみんな恋しちゃうんだよ!顔面国宝の癖に!生意気言っちゃダメなんだぞ!このモテ男!」
もう会話についていけない。
私がおかしいんだろうか。
今日もこいつらに付き纏われる…
「はぁ」
もういつぶりか、誰かの手作りの朝ごはんなんて。
食卓を囲んで、朝一緒に誰かと食べて、目玉焼きを作ってもらって、
もしやこれが家庭の匂いとか何だろうか。
今日もまた一日が始まっていく。