【第五話】そういえば私家出してきたんだった
二人が戻ってきた。
さっきまでの空気が変わって、少し雰囲気も解けている様に感じた。
零も笑顔だし、さっきしっかりは見てなかってけど所々?微笑みを浮かべていた兄もいつもの真顔に戻っていた。
「…ふたりは、どう言ったご関係で…?」
なんて聞けるわけもなく、私は黙っていた。
「…最近親とはどうだ」
兄がソファにまた座ってから私に問う。
その一言に私は息を呑んだ気がした。
自分でもはっきりは分からなかったけど、もしかしたら私はやっぱり母親に怯えていたところもあったのかもしれない。
あぁ、我ながら情けない。
「…こっちに引っ越してきても良い」
「「は?/はえ!?」」
思わず俯けていた顔を上げる。
JK二人揃って綺麗に声が重なった。
いきなりすぎる。
「てか何でアンタまで驚くの」
「だ、だって〜」
ひぃ〜っと言っている零。
やっぱりよく分からないが何かを察した気がした。
これが、幽霊の事情というやつなのだろうか。
兄の方に目をやった。
そして私はガン見した。
いわゆる二度見というやつだ。
兄は零をガン見してた。目の奥に事情が伺える。私には流石に事情の内容まではわからないが。
人を殺せそうな、絶対ヤバいやつだ。
きっと兄は怒らせたらダメなタイプ。
ハイライトなんて言葉を忘れた。
「……お、親がなんて言うか…」
「莉央ちゃん!?何で私を見るの?!やめて!そんな目で見ないで!引きと哀れみが混在してるよ!?」
「…」
「やめたげてよお!!」
騒げば騒ぐほど逆効果なのに。
すると兄がスマホを取り出す
…真剣
すると兄がこちらをチラりと見た。
「…」
ただこちらを見た。それだけのことだった。
「…私は、別に、住めるならどこでも」
すぐさまこちらを向く零
「なら決まりだな」
すぐさま兄を見る零
そのまま零はあっちを見たりこっちを見たりして
「…やっぱ兄妹水入ら「「勝手に構ってきたのはお前だろ」」……」
今度は兄妹揃って声を発した。
やはり兄については昔からよくわからない。
まあ、兄と言ってもそこまで接点があったわけでもないし、仲が良かったわけでもない。
5歳も差があるし、兄が家を出たきり会うのだって今日が初めてだし。
零については、…私、何にも知らなかったんだ。
…兄の目には、零はどう映っているのだろうか。
そして今日は泊めてもらうことになった。
時刻はもう22:00を過ぎていて、
今更ながら、私は何かが始まったと感じたのだった。