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【第一話】ウザい霊に絡まれました

 夏

 蒸し暑くて汗が伝うなか、私は家に帰らずに公園の木陰のベンチに座っていた。

 高校でも家でも居場所なんかない。

 でももう慣れた。

 私の影の中を歩く蟻をぼんやり眺めていた。

 そんなとき

「ねぇねぇキミ、何してんの?よかったら私と遊ばない!?」

 変な奴に絡まれた。

「…」

「ねえ無視!?」

 ヤバいやつ来た…、何で私ばっかり…

 それが私の第一感情だった。

「ねえねえねえねえ、莉央(りお)ちゃん!」

「は?」

 そう言って顔を上げると初めて彼女の顔が見える。

 少し離れたところにいて、髪の毛は肩まで、笑顔で、紺色の冬の制服、首のワンポイントの赤いスカーフ…今は夏だぞ…

 てか、

 …服が、今の制服じゃない…?

「もう〜、そんなおっかない顔してどうしたの?」

「何で名前知ってんの?」

「名札見た」

「……」

 そんな彼女はふざけていて、テンションが高い、所謂いわゆる『陽キャ』

 私とは大違いだ。

「…私たち、初対面だよね?」

「んー、まあ、そうなの、かな?」

「何その曖昧な返事…」

 そう言って私は怪訝そうな顔をする。

 でもそんなのお構いなしだった。

「じゃあこれから私たちはズッ友ってことで!」

 それを聞いて私は顔をゆっくりと下に向けた。

「言い方古っる…」

「え」

 …

 少し黙る、風が吹き抜ける。

 生暖かくて、でも何処か気持ち悪さはなかった。

「…え、そんな傷つく…?…え、ご、ごめん、大丈夫…?」

 そしてそのまま首を上げ顔を覗き込もうとすると

「ん〜〜辛辣ぅーー!唐揚げさん奢ってね!」

「…」

「ねえねえ莉央ちゃん、聞いて——」

「帰る」

「ちょ、置いてかないで〜!!」

 夕暮れの公園、私は人生を変える出来事に出会ったのだ。


 そして、

 そんなこんなで公園のJK不審者に出会ってからはやニ週間。

 あれから私は毎日のように付き纏われてる。

 しかもこの前なんて——

 ーーー

 ーー

 ー

 私の部屋にて

「そう言えば、アンタ名前は?」

 勉強机に顔を伏せ問うた。

「あ!そうだったね、自己紹介まだだった!」

 私が顔を上げるとそこには軽く身だしなみを整えているコイツがいた。

 すると自信満々な笑みを浮かべ言った。

「我が名は、(れい)!可愛くて〜、キュートで〜、トレビアンな零さんだよ!困ったら何でも聞きなさい!」

「…」

 結構真面目に聞こうとした私がバカだった。それは認めようと思った。

「あれあれ〜、何その『何コイツ、キッショ、マジないわ』って顔!」

「……」

「も、もう…、大胆なんだから♡特別に他の情報も教えちゃうゾ♡」

「………」

「わ、わたしぃ、じ、実は、実は——、これでも一生懸命毎日頑張って幽霊やってます、きゃ♡」

「…………は?厨二病かよ目も当てられない」

 夏は嫌いだ。蝉はうるさいし、暑いし、…こんなのに絡まれるし。

「そ、そんな…告白だなんて♡」

 勘違いも甚だしい。

 ーーー

 ーー

 ー

 でもそれから、勝手に学校についてきたりしたこともあったけど、


「ねえねえ、この英文間違ってるよ」


 誰も見えてないし気づきもしない。

 本当に幽霊なのかもしれない。

 そして

 昼休み

 ガヤガヤとした教室。

「お前最近独り言多くない?今まで以上にキモいわーw」

 そう言いながら笑って近づいてくる男子。

 すると

「もう、ちょっと男子〜!」

 零が男子の足を蹴り、

「痛った!?」

 男子は痛がった。

 周りの子がこちらを見たが、私を見た後すぐに何も無かった様に友達と話し始めていた。

 男子は「お前ついに呪いまで使えるように!?」とか言いながら去っていった。

「…はあ、」

 零が見えないからなんだろうけど、私じゃないし…

 てか呪いなんて使えるわけないじゃん。

「良いよ良いよ〜、ため息いっぱい出しな〜」

「何それ…っていうか幽霊なのに物理できるの?」

 すると零はキョトンとした顔をしてから笑って

「そりゃあね〜、ほら、墓とかに置いてある湯呑みとか、あの変な窪み、わかる?水入れるやつ、あれとか、次行った時見ると水減ってるでしょ?」

「え、あれ蒸発したんじゃないの」

 そしたら笑顔で「んなわけ」と返された。

「意外と幽霊って色々できるんだよねー。例えば、物理干渉ON・OFできるし、壁抜けとか、長時間はキツイけどある程度の高さなら飛べる、いや、浮ける?よ!」

「…」

 本当何で私なんだろう。

 初めて出会った時も、今までコイツに会った覚えもなかったし。

 私霊感ないのに。

 こんな、うるさい死人に付き纏われるようになって…

「はぁ…」

 そして、もう今日何度目かわからないため息をついた。

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