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【第十話】友達と放課後遊び

「で、途中抜けてたけどどこ行ってたの?」

「My darlingのところ♡」

 兄のところか…と思ってハッとする。

 ノートで会話するの忘れてた。

「?莉央ちゃんどうかした?」

「い、いや‥何でもない」

 今は放課後。

 帰る時に一緒に遊びに行かないかと言われ一緒に行くことになった。

 幸いみんなの後ろの方にいたのでバレなかったようだ。ギリギリだけど。

「莉央、覚えとけよ。ここが学校の近くで一番景品が取りやすいゲーセンだ!」

「‥ゲーセン、行ったことないからわからない…」

 そもそも誰かと遊びに行くことすら初めてなのに。

 するとみんながこちらを振り返り驚いたような顔になる。

「は!?お前行ったことねーの!?」

「それは、…じゃあ今日からゲームマスターだね莉央ちゃんっ!!」

 琴音ちゃんはなぜか興奮したように言う。ゲームが好きなのだろうか。

「…どうでも良いけど、私行くなんて言ってないけど」

 二人の後ろの方にいた凛さんが言う。

 ‥私も凛さんが来る経緯見てたけど、ほぼ引っ張る形だった…

「いいじゃんかー、ほら、そんなこと言ってる間についたぞ」

 中に入る。

 結構大きめのゲームセンターで人もまあまあいる。

 混んでるかは初めてだからわからないけど…

「今日結構すいてるね」

「取り敢えずみんなで見て回ろうぜー、あ、俺今欲しいフィギュアがあって…」

 とりあえずついていく。

 何だか心がくすぐられるみたいな、未知の領域だった。

「あー、ゲーセンかぁ、懐かしいなー、また今度さっくん誘おっかな」

 兄もゲーセンに来たことがあるのだろうか。

 あまりそんなイメージないけど。

「あるよ」

 一瞬足が止まる。

「あー、心の声、キミの意思が『この考えとか見て良いよー!』ってやつなら分かるよ。でも微弱程度だけどね。全部がわかるわけじゃないけど。まあ、ココロ読むってより…波動‥的な?」

 振り向いて零を見る。

「…何その顔?!」

 そのままみんなの後を追う。

「ま、待って!何その顔?!ごめんってー!!」

 そんなこんなでクレーンゲームの前に着く。

 景品は…何か筋肉マッチョの強そうな男の人のフィギュア。

 技を出そうとしてる?

「これこれ〜!見とけよ、こうやってやるんだぜ!」

 百円を入れて、クレーンが動き始める。

「莉央ちゃん、目がすごいキラキラしてる…こんな莉央ちゃん初めて見たよ…」

「(うるさい)」

 カシャ

「!?」

 横を見れば零が兄から貰ったスマホで私の写真を撮っていた。

「おー、高画質ー」

「っ…」

 スマホ結局使ってんじゃん。てかやめて、とか何とか言いかけてやめた。

 みんな見てる、あ、

「(やめて)」

 心の声で通じるかもしれない。

「えー、もう兄者に送っちゃったよ」

「は?」

 ホントに伝わったことも驚くけど、それよりも、兄に送られた事実に驚く。

「え、あ、莉央…」

 振り返る。3人がこっちを見ていた。

「お、俺が取れなかったから…?」

 目がうるうるしている。

 クレーンゲームは取れなかったのか、さっきの位置から少し斜めになって台の上にまだ乗っていた。

「ち、ちが…春太くん、」

「あーもう貸せ!」

 そこに凛さんが間に入ってきた。

 百円を入れる。

 うぃーん、と動き、機械が喋る。

「いけー!」とか、女の子の声が機械からする。

 ガタンッ

「一発…」

「流石だよ!凛ちゃん!やっぱゲームとかこういうの上手いよねっ!また今度勝負しようよ!!」

「うるせぇ…!」

 すると凛さんがこちらに振り向く。

 目が鋭い…

「あ、えっと…」

 すると他二人がニヤリと笑った。

「さーさー、莉央ちゃん何が欲しい?」

「そーそー、見てまわろーぜ、あ、リズムゲームとかもあるぜ?ここそういうのも多いから」

 背中に回ってきたかと思えば、ぐいぐいと背中を押される。

「おー、莉央びっぴ、お母さん、友達ができて嬉しいよ…ぴえんぴえん、何かあったら言って?お母さん、何でもしちゃう」

「(その母さん呼び、や め ろ)」

 その時目に入ったのは

「…あれ?莉央ちゃんあれが気になるの?」

 そこにあったのは、白いふわふわの変なマスコット。

「い、いや、そういうわけじゃ」

「凛ちゃん!」

「あーあー、うるせーうるせー」

 凛さんはそう言いながらそれに近づいていく。

「こんなの、どこがいいんだか、………ほらよ」

 そう言って不器用に片手で渡してくる。

 はやっ、すごっ、

「あ、ありがとうございます…凛さん」

「は?さん?…あ”ー、そうかよっ」

 頭を掻く凛さん。

 何か怒らせてしまったのだろうか…

「もー、莉央!同級生にはみんなにタメで良いんだぜ?」

「そうだよ、莉央ちゃん!」

「え、あ…凛、ちゃん?」

「なんだよ」

「い、いや、特に理由があったわけでは」

「じゃあ呼ぶな!」

 そう言ってどこかに行ってしまった。

「…ごめんね、何度も言うけど、良い子なんだよ」

「でもあいつ、ホーント人付き合い苦手だよなー」

「んー、それは、しかたないというか、なんというか…」

 琴音ちゃんは苦笑いする。

 すると今度は零が思い出にふけ始めた。

「懐かしいなあ…、あやちゃん思い出す…」

 誰だよあやちゃんって…

「(誰?)」

「ん?あー、あやちゃん?あーそうだなー、…友達かな?」

 ニコッと返される。

「(……その笑い方、やめろ)」

 すると微かに、本当に気のせいかもしれないが、表情が動いたような、固まったような、気が…した。

「…なんで?」

「(…なんかやだ)」

「えー、何それ」

 だって、その笑顔は、その顔は、

 どこが、遠くに行ってしまいそうだったから。

 知らない顔だったから、

 少し、怖くなった。


 そうして、初めての「友達と放課後を遊び過ごす」ということをした日堪能したのだった。

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