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【第零話】救って、救われて、そして死んでいった故人
人気モデル、人気ブランド、アイドル、俳優…
俺は世界に上り詰めた。
でも、いくらファンがついても、給料が入っても一番欲しいものは手に入らない。
失ったものはもう手に入らない。
声も、姿も、形も、
もう見ることはない。
救われた癖に救えないとか、笑えない。
ファンに好きと言われてもどんなに熱を上げられても
「(クソが…)」
イラつく、あの時誰も助けなかった癖に、今更。
容姿をバカにして、喋り方が変とか笑ってきた癖に。
俺を救ったのは最初から最後までアイツだけ。
そして動画編集を終える。
「…」
目標は無い。
ただ、二人の夢だから。
ただ、二人の夢だったから。
それだけ、たったそれだけ、されどそれだけ。
「…アイツ、『マジで!?っすっご!!天才じゃん!!』とか言うんだろうな」
今日の天気は快晴。
まだ暑さの残る風が、街の木を揺らしていた。