復讐は冷静に
上から騒音がする。
そしてそれが悲鳴だから、戦争は始まったのだろう。
此度の勝利は勇者パーティの二人の殺害。
内一人は戦士タイプで、今頃外へ向かっているはず。
もう一人は魔術タイプ。遠距離が得意だから、城壁の上にいるはずだ。
そう、私のやることは決まっている。
魔術師を殺して、バランスを崩して、また、一気に攻める。
同じだ。だからできるはずだ。
下水道の梯子を登り、マンホールの蓋を開ける。
ドォン!
爆発が起こる。
マンホールが砕け散る爆発が、街に起きた。
それを起こしたのは、はるか先にいる女の魔術師。
魔術探知が出来るらしい魔法使いというのは、的確に私の位置を把握して攻撃をかけてくる。
爆発、炎上、竜巻。
けど、けれど、それはこの場では意味がない。
大通りに出る、民衆が避難している。
その人の波を、人の頭を踏みつけて逆らう。
魔法の攻撃が止んだ。
どうせならと、毒ガスを撒いて罪のない人を殺していった。
「ゲスな魔物が!」
声が届く距離まで来る。
が、その対象は私ではなくて、魔王軍全員に対してだ。
城壁内に入る。
石造りの暗いそこの階段を駆け上る。
「煙幕!?」
建物内から発する煙に、魔法使いの女は驚く。
風邪の魔法を使い、煙を吹き飛ばしていくが、けれど数メートル先にはいまだに煙が。
「反応で位置はわかる!」
魔力の反応の探知、位置の把握。
煙の中から、魔力反応。
(近い!速い!来た!)
煙が揺らぎ、内からゼルリ。
「死ね!」
カウンターの、風魔法。
それが出る前に、影が煙のうちから伸びる。
ゼルリのコートに住まう生物、影に生きるものが、女へ向かい物体を投げる。
「な……に……これ……」
煙が溢れ出る。
周りのと同じ煙だとわかって、けれど吸い込んでしまって、彼女はその場に倒れ込む。
「なに……したのよ……」
この煙は毒性で、特に麻薬成分に特化している。
少しでも吸えば脳はまともに動かなくなって、赤ん坊より知能は劣るはずなのだが、それでも話せているのは、力のおかげなのだろう。
彼女の服装を剥いでいく。
「いや……やめて……」
産まれたての姿になった彼女を、城壁から放り捨てた。
下から物が潰れる音がしたが、どうせ二度と動かないので問題はないだろう。
私は内ポケットから、アレスティナに貰ったものを出す。
それをチョークのように使い、魔法陣を描けば、光と共にアレスティナがやってきた。
「手筈通りね、魔法使いの人は?」
「下に捨てました」
「出来るだけ、健全な肉体が欲しいって言ったよね?」
「脳内が麻薬で犯し尽くされてあるから、健全ではないと思います」
「はあ……まあ死体でも、ゼルリの餌にはなるか」
「そうですね」
「投げ捨てたのはキミなんだから、後で拾いに来てよね」
「はい」
「じゃあ準備するから、着替えといて」
「はい」
さっき剥いだ女の衣装へ着替えていく。
女ものだが、私が小柄なおかげもあり着替えられた。
深く帽子をかぶって、顔が判らないようにする。
「じゃあ、影は呼んでおいたから後はよろしく。私は適当に人殺してくるから」
馬に乗り、平原をかける。
目の前には敵の軍勢がいるが、そのまま真っ直ぐ突っ込んでいく。
「魔女様!街の方はどうなっているのですか!?」
偉そうな立場の男が、私に近寄り話しかけてくる。
馬から降りて、その男に話す。
「街には突然魔物の軍勢が現れた」
街の方から爆発が起こるので、説得力が増す。
「私だけでは対処できず、この、残った数人の衛兵と共に逃げ出せたぐらいだ」
衛兵たちは、呼んでもらった影に衛兵を殺して手に入れた鎧を着せたものだ。
「このままでは負ける、逃げることを進める」
「それは……無理です。我ら生まれ育った街を捨てるぐらいなら、ここで打ち果てます!」
「……なら、最後まで付き合おう」
「そのようなことは……」
「いや、敵は二手に分かれているから、層自体は薄い。全力で街方へ攻め込めば、内部の魔物を全滅させ、籠城することができる」
「おお……!」
「全軍にこのことを伝えてくれ。我らは、街の方へ攻め込むと。そして門を全て閉じるために、東西南北へ向かう、4隊に、分けると」
「聞いたか!今すぐに全軍に伝えろ!」
「大将!人間どもが逃げていきます!」
「よし!手筈通りだ!わざと逃がせ!」
人の軍勢が街の方へ翻り、移動し始めた。
「クソっ、どうなってるんだ!」
ゼルリの父が悪態をつくが、周りの音のせいで誰にも聞こえない。
「爆発!?」
目の前、嫌、至る所から爆発が起こる。
それを大きく見れば四カ所で、別れた分隊がいる場所で起きている。
「下水道ですよ、コレ!」
地面が割れた先には、汚い水の塊であった。
「魔力反応はなかった……爆薬か!?」
「何だこの煙……は……」
「おい!煙を吸うな!」
「抜け出せないのか!?」
「梯子を使って登るような深さだぞ!?」
「影だ!影が襲ってくる!?」
「戦士様!戦士様は!?」
「いない!殺されたのか!?」
「わかるか!うわぁぁ!」
「来るなあ!」
「叫ぶな!叫んだら、ガス……を……」
「クソっ、こんな負け戦にいつまでもいられるか!」
ゼルリの父が、平原を走る。
他者を見捨て、自分のためだけに。
「おい!お前!」
三角帽子を被る、魔法使いのような外見の人へ話しかけた。
「見捨てたの?」
その声に、彼はこう言った。
「当たり前だろ!あんな奴らの為に命を張れるか!お前だって言ってただろ!イケメンしか守る気はないって!」
「そうね、そうだったわね。なら一緒に、みんなを見捨てなきゃねえ……」
「ああ、そしてまた、女や男を貪り食おうぜ!何てったって勇者パーティだからな!知名度だけで女が寄ってくるよな!」
「そうよね、みんな、私たちのこと見ているものね」
魔法使いが帽子を外す。
「そうだ!だからさっさと魔法で俺を逃が……して……く」
男がいた。憶えている男がいた。
「あっ……ああ、何で……お前が、お前が!」
「いい言葉だった。スマホに録音させてもらったよ」
「何で……何で」
ナイフのは先を向けると、男は怯え泣き始め、体をジタバタさせながら逃げようとした。
が、彼の体は動かない。
「刺激臭で、無色の気体なんだけど、鼻がやられて判らなかったでしょ」
彼の男性の証があるであろう場所に、ナイフを置いてみる。
震えがさらに上がり、声が出なくなってしまった。
「ああ、というか、これじゃもう使い物にならないか。またアレスティナさんに怒られてしまう」
足の指を全部切り落としてみる。
叫ぶ、泣き喚く。
「そういえば、最初に首を刺したせいで声は聞けなかったよな」
足を少しずつ細切れにしていく。
飽きたので、爪を思いっきり剥がした。
また飽きたので、媚薬を飲ませた。
そうしてまた、足を切り刻んでいけば、さっきよりも大きな叫びが出る。
「はあ、飽きたな。もともと惨めなやつを惨めにしたって、意味ないもんな」
ナイフを大きく振り翳し、顔面に刺した。
「食っていいよ」
獣人の方々が、私の父を喰らっていく。
「毒は消化できるので、ご安心を」
今回の戦争の総大将が話しかけてくる。
「分断、陽動、そして作戦立て、見事なものでした」
「いえ……」
「いや、大したものです。四天王のお二人が、勇者達の仲間を二人も殺してくれたのですから」
「いや……」
「やはり魔王様の言葉が身に沁みますな、我々はどうにも作戦を立てるというのが苦手で」
「ですが……」
「特に下水道へ落とし込むのは、そうかその手があったかと!」
「けれど……」
「ここまで鮮やかに決まるとは!貴方は私たちにとっての英雄ですよ!流石四天王!」
「……はい」
あんまり人間側の描写はないです。
RPGのような世界で、地球から召喚された者には強力な力がつくから、ガチャガチャみたいに大量に行われました。
で、勇者を引き当てたので、その他のハズレと共に魔王は挑むぜ!みたいな感じで戦争が始まりました。
魔物側はなんもしてません。精々狩みたいに人間を殺したぐらいで、なんかいきなり攻め込まれたなと思っています。




