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第九話 絶望

 倉庫に移されてからも私たちは様々暴行を加えられた。運のいいことに、犯すなんてことはされなかった。だが、以前の彼とは違う、暴力性の強い生物(何か)になっていた。


 何が彼をそうさせたのだろうか。私には不思議で仕方がない。ただ一つ言えることは、私たちにとって悪い方向に動いているということだ。


 私にとってしんどい生活が続いている。それは優香にとってはもっとだ。

 優香を何とか助けたい。だが、それは不自由な私にはとてもできることではない。


 あれから優香の泣く頻度が高くなった。仕方がない事だろう。

 優香にかける言葉も何も思いつかない。そんな私を責めたくなってくる。

 ああ、早く解放されたい。そう思う事しか無力な私にはできない。


「さーて」


 そんなことを考えていると、雄二が帰ってきた。ああ、今日も暴力の的にされてしまうのだろうか。そう考えると、絶望と言う感情がまた私を覆いつくす。もはやほかの感情は一切ない。希望なんてもってのほかだ。


「おりゃあ!」


 そう私の腹を拳が襲う。痛い痛い。そんな言葉しか私の頭にはまぐってこない。


「優香には手を出さないでよね」

「それはどうかな!」」



 そして髪の毛をつかまれながらもう一発のパンチを喰らった。もう、痛いなんてところではない。っしかし、女の腹を殴るなんて、最悪の行為過ぎる。


「もう一発!」


 もう限界だ。私にはもう……。

 だが、絶望する暇もなく次の激痛が私を襲う。あと何発喰らえば私は解放されるんだ、あとどれくら耐えれば私は解放されるんだ。


 ああ、だめだ、私が涙を流したら優香まで不安になってしまう。それは避けなければ。

 ああしんどい、もう嫌だ。


 その瞬間私の中で何かが切れたような音がした。今までたまっていたものが、爆発したのだろう。


 それからというもの、私は言葉を発せ無くなってしまった。いや、正確に言えば、声を発する動作が出来なくなってしまったというべきだろうか。心的な問題によってだろう。

 それともう一つ、もう、私の身に起こる全てがどうでもよくなってしまった。無心。それがこの状況を打破する唯一の手だ。

 何も考えなければ。なにもしんどくはない。そう、簡単なことだ。


「ねえ、お姉ちゃん」


 そう、優香の話しかける声がする。だけど、私は何も答えない。


「お姉ちゃん!!」

「お姉ちゃん!!!」


 こたえる必要などない。私は疲れてしまったのだ。


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