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第七話 病気

 

 翌日


「ねえ、流石にもう無理かも」


 優香の体力が見るからなすり減ってきているのが目に見て分かった。

 流石に小学生だからしかたがない。


「大丈夫。よしよし」

「……うん」

「なんかちょっとしんどい」

「え?」


 そして頑張って彼女の手をつかむ。するとかなり熱かった。これは……


「もしかして熱出てる?」

「かも……くしゅん」


 くしゃみをして、顔に鼻水が付く。彼女はうずうずと動き取ろうとするが、なかなか取れていない。


「どうしよう。とりあえず……」


 頑張って顔に手をやろうとしたが、上手くいかなかった。よく考えたらこの部屋は暖かい。

 夏ではないというのに。そこが、くしゃみをしなかった理由だろう。


 このままでは、私ももちろん風邪がうつってしまうし、このままでは優香の体力が持たない。今一番いいのは雄二にカムバックしてもらうことだが、それは無理だ。

 何しろ通報されるのを恐れてなのか、電話は私たちの届かないところにある。これでは、どうすることもできない。


 私は無力だ。今優香が苦しんでいるのに、私は何もしてやることが出来ない。はあ、本当に……


「うう、お腹痛い。痛い痛い痛い痛い」


 お腹をまっすぐ伸ばしながら、優香が言った。見てられない。本当雄二恨むぞ! と言うか、ウイルスはどこから入ってきたのだろうか。そんなことはどうでもいい。今は優香を何とかしないと。


 うちのご飯は主に雄二がいる朝ご飯と夜ご飯だけだ。つまみはあるが、優香はそれも食べられなさそうな感じだった。

 私が拘束された手で何とかソーセージをつまみ、優香に食わせたが、すぐに吐き出してしまったのだ。


 もう優香が戻したもので、床は汚く、鼻水まみれになっている。このままでは私も普通に風邪がうつりそうだ。

 あの男、私たちが風邪をひくデメリット考えてなかったのか。

 トイレ問題は結局オムツで解決したとはいえ、なんだろう、この無計画性は。


「お姉ちゃん……しんどい」


 優香を放っておけない。とりあえず、痛みを忘れさせないと。


「じゃあねえ、私が物語読み聞かせてあげる」

「……物語?」

「そう。痛みを忘れるためにね」

「……うん」

「じゃあ、話すね。昔々あるところにお金に困ってた男がいました……」


 と、私のオリジナルの話を話した。学校のクラスメイトに面白いと言われた物語だ。これで、面白いと言ってもらえたら、いや、痛みが和らいでくれればいいのだが。


 そして、優香は私の話が子守歌になっていたのだろうか、いつの間にか寝ていた。

 その瞬間安心したが、彼女の苦しそうな顔を見ると、そこまで安心できる状況ではなさそうだ。


 とはいえ、いつまでも心配しているわけには行かない。とりあえず、暇つぶしに物語を脳内で作る。とはいえ、こんなもので暇がつぶれるのかと言われたら答えは断然NOだけど。

 辛いのは優香だけじゃなくて、私もなのを忘れていた。はあ、本当につらい。私も寝られたらいいのだが、全く眠れる気配がない。

 結局眠れないまま彼が帰ってきた。


「おい! 大丈夫か?」


 彼は早速、優香の心配をした。良かった、人を心配する良心はあったのか。


「熱出して、ずっとうなされてた」


 と、私は簡潔に状況説明をする。


「えっと、この場合どうしたら良いんだ?」

「えっと……冷えピタとかお粥とかかな」

「分かった。すぐに作ってくる」

「あと、痛み止めあったら飲ませたら良いかも」

「ああ」


 そして、すぐに彼は外に出ていった。拘束は外してくれないけど、焦りはするのね。


「大丈夫よ、優香。もうすぐあいつが持ってきてくれるわ」

「……うん」


 そして、すぐに彼が帰ってきた。そして優香に薬を飲ませ、冷えピタを張り、お粥を作り出す。

 優香はそれにより、静かに眠り始めた。

 よく考えたら買いに行くということは、それなりのリスクも孕むわけだ。なににしろ、外から見て本来彼が慌てて薬や冷えピタを買う必要はなさそうに見えるのだから。


 そして一つ。


「優香の拘束外してあげてよ。しんどそうなんだから」

「それはダメだ」

「私はいいから、外して」

「ダメだ」


 どうやらそこまでの優しさはないらしい。

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