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〈6〉三姉妹が美少女とアイドルをやったら、案外売れるかもしれない。

現在、街を目指して3日が経った。


「ね、ねぇ……結構遠くない?」

「ね、やばい……」


 ななとつながはぁはぁ息を切らす中、さなは冷静に地図を見ながら歩いて行く。

 さなって頭がいいくせに割と体力もあるよね、羨ましいとななが言いながら足は止めずにいた。


「僕がお姫様抱っこしましょうか?」


 キラキラした瞳をしながら、人になりそう言ってきたエメを断るなな。


「私たち友達みたいなものだから、そう言うのはいいよ」

「……?そうですか」


 ポカンとするエメ。上下関係がないだなんてこの人は優しいな、なんて考えながら、ななの服の裾を掴んでついて行った。


 一方フェニくんはクタクタになっていたので、つなが魔法で浮かせながら歩いている。


「うげー……私だけ鬼畜すぎない?」

「さっきフェニくんの背中に乗ったりしてたんだからお互い様でしょ?」

「ううそうだけどぉ……」


 はぁと大きなため息をつく。だけど、ようやく街の姿が見えてきたのだ。


「あれは……!!着いたんじゃない!?」


 いち早くそれに気がついたななが飛び跳ねながら指を指す。

 着きましたねとエメもななに微笑みかけて、一同はぁと一安心して胸を撫で下ろした。


 ケルト風の、ゲームの中に出てきそうな街並みがとても美しい。


「よし、まずは観光からだよね!」

「そうですね!主様」


 ななの意見は全て肯定するようになったエメが満面の笑みを浮かべる。

 他の2人と1匹は呆れながらも、なならを放置してどこかへ行ってしまった。


 スマホで連絡も取れるので、別行動が開始される。ななどエメは、街並みを楽しんでいた。


「綺麗な街だね〜」

「主様の方が綺麗ですよ?」

「あはは〜ありがとうって言うか見て!」


 なながとあるものを指さす。それは、見目麗しい男性たちだった。


「踊って歌ってるみたい!カッコいいね!」

「そう……ですね」


 イケメンを褒めるにつれてどんどん機嫌が悪くなって行くエメ。

 現在人間の姿をしている。エメはその男たちとは比べものにならないほどイケメンだと言うのに一向に自分に振り向いてくれないのでモヤモヤしていた。


(この世界に、アイドルなんて概念があったんだな。異世界とはいいつつ、少しは現代っぽいものを取り入れたりしているのかも)


 それを考えた瞬間、少しモヤッとした。普通、やっぱり異世界といえば魔法だけ発展しているもの、と偏見があったなな。なぜ、よりによってアイドルなのかわからないままでいると、遠くからつなたちが戻ってくる。


「早かったね」

「なんかこの人拾った」

「えっ?」


 つなの言葉を疑問に思って、後ろを見ると引きずられてきたと見られる綺麗な顔、三つ編み、丸々眼鏡をした同い年ぐらいの女の子がいた。


「あ、あのぉっ……私、何にもしてないんですけどっ……」

「ってことで、お金集めなきゃいけないからアイドルやらない?」

「アイドル……?」

「さなが、髪の毛整えて可愛い服でも着れば平凡な私たちでも少しはサマになるでしょって」


 コクコクと頷くさな。

 アイドルなんてただの憧れだったからと驚くななだが、少しやる気が出てきた。


「そ〜だね!お金稼ぎのためにやるかっ!」

 

(お姉ちゃんめちゃ乗り気じゃん)


(ドヤ顔の主様も可愛い……!!)


 こうしてアイドルをやることが決定した。となればまず、この美少女と仲を深めなければ、とななが美少女に聞いた。


「お名前は?」

「アネット、です……」

「私はなな。よろしくね」


 手を差し出す。アネットがその手を握り、ななが引っ張って立ち上がった。


「ななさん……!聞いてくださいよっ!この人ったら、私のこと可愛いからって攫ってったんですよ!!」

「ああ、ごめんごめんその人私の妹……」


 あはは……と苦笑いしたなな。


「えええ!?姉妹なのに似てるの顔だけなんですね!」

「あはは……」

(結構言うなこの人……!)


 アネットの勢いに戸惑いながらも、妹を侮辱された気分で少しイラッとしてしまった。

 そして、エメを視界にいれたアネットは飛びかかるように近づく。

 手を握ろうとしたのか手を伸ばした瞬間、ヒヤヒヤしやがらエメが避けてななの後ろに隠れた。


「あれ?エメって結構シャイ?」

「主様、自分の所有物を無作法に触られるの嫌でしょう?独占欲が強いくせに」

「え、なんでそれ知って……じゃないよ!」

「僕が主様意外に触れたくないんです!!」

「そうなのね!」


 少し照れながらそっぽ向いたなな。そしてアネットがムッと頬を膨らまして怒っている。


(せっかく美青年とお近づきになれると思ったのに)


「えっとアネットちゃん?そんなにジーッと見つめられると……」

「えっ?あ、ああごめんなさい!」

(ついこの女のどこがいいのか見つめてしまっていたわ私ったら!)


 ふぅと一息ついて、心を落ち着けたアネットはアイドルをすることに賛成をした。


(アイドルになってあの美青年を振り向かしてみせる!)


 そう、心に決めて。


 髪の毛がサラサラ揺れて、風が吹いたことに気がつく三姉妹。

 光魔法で照らされたサングラスのようなものを掛けた男が、こちらへと歩いてきていた。


「キミたち……アイドルやるんだって?」

「そーですけど」


 つなが警戒しながら返事をした。なんだかやばそうな人だ、と全員引き気味な中、また男が喋り出す。


「ぜひ、うちでプロデュースさせて欲しい」


 差し出された紙切れには、大手アイドル事務所という胡散臭い文字が書かれていた。


「……まあ、いいんじゃない?」


 怪しいところだったとしても今のななたちは最強と行っていい。恐れることなどあまりなかった。

 ということでプロデューサーも見つけて、アイドルを始めることにする。

 この世界のアイドル業と言うものは地球とは異なるようで、わりと色々緩い。


 連れて来られた異世界風の三階建の家の中には、数々のアイドルと見られる者たちがいた。


 だけど服装はやっぱり異世界のもの。現代風では決していない、言ってしまえば少しダサい。


「じゃあまずここにある服テキトーに選んでもらって、そしたらステージに行ってね」

「えっ?持ち歌とかないんですけど……」

(色々と展開早すぎでしょ……!!)な


 さすがに焦るなな。聞いても、そんなのどうにかしろとだけ言われてプロデューサーは出て行ってしまった。


部屋に取り残されてしまった5人。


「どうしますか?僕が歌考えてもいいですけど」

「えっ!いいの?」

「はい!」

(主様の笑顔……!可愛い!)


 目を輝かせるななを見てついときめくエメだったけれど……その、エメの歌というものが問題で。


「できました!」


 差し出された紙に書かれているものは、全て自分への愛を謳うようにできたななに歌って欲しい歌詞だった。


「ちょっと……エメ?」


 ワナワナと震え出す。エメはやばいと悟ったのかカラスの姿になって、口笛吹きながらななの肩に戻って行った。


 カラスの姿になったことに驚いていたアネットだけれど、そんな彼女が実は結構有能で……。



 数十分後。



「できた!こんなのどう?」


 いつのまにかタメ口になっていることになど気が付かず、アネットの考えた歌詞と振り付けが書かれた紙を見つめる三姉妹。


「えっ、普通にすごくない?アネットちゃん天才じゃん!」

「ちょっと恥ずいけど、悪くはない振り付けだねぇ〜」

「私もこれ、いいと思う」


  全員の賛成を得たことにより、歌と振り付けはアネットのこれで行くことに決定した。


 ステージに立つのはあと1時間後。


「私は作ったし1時間で覚えられるけど……3人とも、大丈夫そう?」


 そう尋ねられて、全員少し躊躇しながらもできる!と声をあげた。


「衣装は私に任せて」


 さながそう言えば、可愛すぎず派手すぎない、オシャレなアイドルらしい服が創作スキルで出てくる。


「ええ!?そ、その魔法って……」


 アネットが焦ることなど気にせず3人はエメを追い出して早速衣装に着替えていた。


 つなはああ見えてダンス経験者なので、振り付けは誰よりも上手く踊れる。


 アネットは歌がずば抜けてうまい。


 ななとさなはと言うと……悪くもないがよくもない、中途半端な一番面白くない位置にいた。


「つなもアネットちゃんもすごいね……私たちなんか全然だよ」


 はぁと大きなため息をつく。そんなななの元に、エメがやってきた。着替え終わるのを待っているがてら街を回ってたら、少し時間が経ってしまったらしい。


「僕にいい考えがあります!」


 自身ありげにそう言ったエメが、ななに魔法をかけて操り出した。


 瞬時に振り付けを覚えて、それ通りに踊らせていく。


 すると、指先まで美しく完璧に踊れるななが完成した。


「わっ、すごい……!!じゃあ本番もエメがそうやってくれればいいね!」

「はい!」


 頼られてとても嬉しそうにしているけれど、彼が操るのはただ1人ななだけ。と、なるとさなが問題だった。


「私は……裏方に回ろうかな」


 しょぼんと少しへこむ。だけど、さなもいいことを思いついた。


「いや、やっぱり私の使い魔を使おう。エメの魔法を覚えさせて、同じことをさせれば」

「コウモリくんってそんなに器用なの?」

「わからないけど、きっとどうにかなる」


 ななに心配されながらも、やってみる価値はあると実行することに決めた。


 そしてさながとある違和感に気がつく。


「ねぇ、フェニくんは?」

「えっ?ああ、フェニくんならこの土地の魔物を手下にしてくるーって言って出て行っちゃったよ」

「何それ」


 あははとななに笑われてしまった。つながムスッとする中、アネットが困ったような顔をする。


 それに気がついたつなが、どうしてなのか考え出した。


(まさか……ななが好きとか言う百合展開?)


 だけど程遠い妄想を繰り広げるのはやめて、練習を再開させることにした。



 そして数十分後、いよいよステージに立つ出番がくる。


「き、緊張で吐きそう……」

「あはっ、大丈夫だよななは操られてるだけだから歌えばいいし」


 ポンポンとつなに背中を撫でられる。さなはいつものポーカーフェイスのままで、アネットも平然としていた。


 だけど、ほんの一瞬だけ、アネットが何かななに言おうとしていた。でもそれに気づいてなどもらえず、出番が来てしまう。


 ステージに立つと、観客席は一応人気アイドル会社なのがあって、満員だった。


 それに余計に緊張するななだけど……。



「いえーいみんな盛り上がってるかぁ〜!!」


 アイドルとはまたちがうようなことを言い出したつなを即座にガン見して、少し和んで緊張が取れた。


 観客席からは、歓声が聞こえてくる。


 こうして彼女らの歌が開始された。


 最前席に何の変哲もなく座っていたエメが、ななを見つめながら操る。


 目を奪われる観客たち。結局さなは根性で乗り越えることになった。



 こうして、無事公演は終了。


「はぁ〜疲れたぁ〜」

「いい汗かいたね」

「ね!ってあれ……アネットちゃん?」


 舞台袖に入って、楽屋に模した場所まで戻る途中でアネットがどこかへ行ってしまったらしい。


「このあとグッズ販売があるらしいんだけど……」

「えっ?も、もうグッズあるの?」

「私が作った。それも二次元の可愛いイラスト風」


 さながそう言って差し出したのは缶バッチにアクキー、イラストのものもあれば実写のものもある、割といいものだった。


「さなってそう言うところ抜かりないよね」


 あははと苦笑いしたなな。


「私、アネット見てくる。グッズの販売よろしく」


 それだけ言ってどこかへ行ってしまったさな。プロデューサーからはグッズの販売を許されていたので、2人で売り出すことに。


「仕方ないね、行こうかなな」

「うん。さな、大丈夫だよね?」

「大丈夫だよ、ってか過保護すぎ!」


 わははとつなに笑われる中、売り場を創作で創り出した。

 そこに商品をささっと並べて、少しお手軽な値段で商品を売り出す。

 サインもできるように席を置いて、そこに座った2人。


(うちの妹は可愛いけど、私なんかにお客さんくるかな……?)


 ななが少し不安になっていながらも席に座ると、目の前には長蛇の列があった。もちろん、つなのところにも。


 承認欲求が満たされた気がして、いい気分になりながらグッズを買ってくれた人にサインをしていく。


「ありがとうございました!」

「本当に良かったよ、また来るね」

「はい!」


 にっこにこの笑顔を浮かべながら、なながサインを書いて行く中……。


 隣のつなの声が聞こえてくる。


「うーん、キミは受け」


「キミは攻め」


「キミは年下攻めだね」


 ささっとサインを書いては、そう用語を使ってお客さんを混乱させていた。


「ちょ、つなやめなさい!」

「ええぇいいんじゃんこんぐらぁい。」

「だめに決まってるでしょ!ほらちゃんと売って!」

「も〜つまんないなぁわかったよぉ〜」


 はぁ……と残念そうに大きなため息をついたつなは、やっと真面目にグッズを売り始めたのだった。


 そして2人は知らない、さながピンチに陥ることなんて。

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