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毒の魔法で華麗な日常を!!  作者: うなぎ大どじょう
第一章 死を育む樹海の中で
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43 原初の言語☆その名も拳

「それはそうと君たちさ、オレらと戦ってかない?」


 蟲たちから告げられた、突然の決闘の申し出。


 ヒッタイトたちからすれば、脈絡も何もない意味不明な発言だが、これにはちゃんとした理由(わけ)があるのだ。






 ――新しい『樹海(もり)の主』って、絶対少女(あの子)のことじゃん!!


 少し時を戻して、ヒッタイトが名乗りを上げたあたり。

 彼女たちの目的が、新たに生まれた『樹海(もり)の主』との交流であると知った蟲たち。その時三匹の脳裏には共通して、()()()一つの考えが浮かんでいた。


 ――この人間たちをあの子に合わせたら絶対ヤバい……。


 これは別に、ヒッタイトたちが少女に危害を加えることを危惧しているわけではない。

 むしろ警戒しているのは少女の方だ。


 少女を赤ん坊の頃から十三年間育ててきた蟲たちは知っている。

 少女の好奇心と行動力の恐ろしさを。


 一見冷静(クール)な性格に見える少女。

 確かに、彼女が戦闘などの有事に見せる冷徹さには目を見張るものがある。

 しかし、それはあくまでレアケースだ。


 ならば普段の彼女は?


 そう、普段の彼女は、好奇心の赴くままに行動する暴走機関車なのである。


 昔、少女は好奇心から毒キノコを口にして、数日間寝込んだことがあった。

 死の樹海に生える()()()()のキノコを食べても『寝込む』程度で済んでいるのは、流石少女だといったところだが……。

 この出来事に、蟲たちの肝は極寒レベルに冷え込んだ。


 それから少女の一挙手一投足に気を配るようになった蟲たちだが、その努力も虚しく再び事件が起こる。

 なんと今度は、少女は樹海の底なし沼へとダイブしてしまったのだ。


 この時は百足が底なし沼を丸ごとゴーレムに変えて彼女を連れ戻したのだが、蟲たちはいよいよ少女の危険性を痛感することとなった。


 その後、蟲たちは少女を囲むように見守ることにした。

 だがしかし、少女の持つ力があまりに強烈強大過ぎるがために、彼らの包囲網は容易く破られることとなる。


 そうして起こったのが、『少女単独死海山脈踏破事件』である。蟲たちの包囲を振り切った少女は樹海を囲む死海山脈へと向かい、その山頂へと単独で登り詰めてしまったのだ。

 この時彼女は弱冠(じゃっかん)九歳ほどであったのにも関わらず、襲ってきた飛竜(ワイバーン)を全て返り討ちにしている。


 これには蟲たちも流石に頭を抱えた。

 そう、もはや少女は、人間の枠を超越した超人へと成長していたのである。


 そもそも、掴まり立ちよりも先に魔法に目覚めた少女のことだ。蟲たちにも、どこかそうなる予感があったのかもしれない。


 ……そして彼らは確信している。

 ヒッタイトと名乗った人間とその仲間たち。


 彼女たちは少女にとって、初めて見る自分以外の人間だ。

 そう、これに少女が好奇心を抱かないわけがないのである。


 そうなれば、少女は何を仕出かすかわからない。


 しかも、この死の樹海で傷一つ負っていないあたり、ヒッタイトたちは相当に強いようだ。それを少女が知ったら、彼女は確実に手合わせを始めてしまうだろう。

 少女とヒッタイトのような実力者が本気でやり合えば、最悪辺りが更地になる。


 それだけは絶対に避けなければいけない。


 このような考えが、刹那の内に蟲たちの脳内を駆け巡り……。

 そして百足、蜘蛛、蛇の三匹の総意の元に、決断が下されたのだった。


 ――自分たちでこの人間たちをぼこぼこにして、どうにかお帰りになっていただこう。


 そう、いつの時代でも、生物の最終手段(ラストリゾート)暴力(ぶんなぐり)なのである。

三人寄れば何とやら、です。

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