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毒の魔法で華麗な日常を!!  作者: うなぎ大どじょう
第一章 死を育む樹海の中で
34/160

34 結界でつくる☆あったか温室

 吹雪く豪風、積もりゆく雪と氷。ここは雪山、冷たい世界。


「ほーんと、雪と氷と岩ばっかりですね」


 永遠と続く真っ白な光景に辟易(へきえき)した様子のソバ。


「そりゃあ雪山だからな」


 ヒッタイトは慣れたように、それを右から左に受け流した。


 現在、百鬼夜行(ゴーストパーティー)の四人と一匹は樹海を目指して、山脈越えに挑んでいる最中である。

 食料やその他諸々が詰め込まれた大きな背嚢(リュックサック)を各々担いで、超特急で山を越える強行軍だ。


 ざくざくと踏みしめられ、積雪に刻まれていく足跡。しかしそれも、降りしきる豪雪によってすぐに消し去られていった。


 死海の外周をぐるりと囲む雄大な山脈。その高さ、いずれも五千メートル級。越えるのは容易ではない。


 容易ではない。……そう、普通の人間には。


「コマチの結界があってよかったぜ、ホント」


 しかし、ヒッタイトたちはこの極地でも存外けろっとしている。


「キャン!」


「ふふふ。結界って便利でしょう?」


 この極寒の地でも彼らが平然としていられる理由は、東洋魔術師ミノ・コマチが展開している結界にある。


 結界とは、此方(こちら)彼方(あちら)を魔術的に()()()技術。東洋で特に発達を見せており、独自の体系から『結界術』と区別して呼称されることもある。

 そして、その区切った内の此方側には、術者が自由に魔法を付加することが可能だ。


 現在コマチは自身を中心とした球状の結界を展開しており、その内部を魔法によって暖かく保っている。


「とはいえ、これを永遠に続けることはできません。わたしの魔力が切れてしまう前に、山脈を越えましょう」


 既に彼女たちは二日間不眠不休で登山を続けている。その間ずっと結界を展開し続けているコマチの魔力は、確実に底へと向かっていた。


「これを食べろ」


「あら、ありがとう笠松」


 歩きながら、笠松がコマチに乾パンを差し出した。彼女はそれにぱくりと(かじ)りつく。


 コマチは結界の展開のために、手で()を結び続けている。

 両手の塞がった彼女のために、笠松はぶっきらぼうにだが、優しさを差し伸べたのだった。


 相変わらず笠を深く被っていて感情が読み取れないが、少なくとも笠松がコマチを心配していることは確かである。






 その時だった。


「――キャンッ」


 ソバの肩にいた狐の魔獣――茶太郎が、その大きな耳をピクリと反応させた。


「ああ、茶太郎。()()な……」


 斥候役として索敵を行なっていた彼らが、迫る異変の気配を察知したのだ。


「前方……数は三……。まさか、この羽音は……!」


「ああ。死海山脈名物、翼竜(ワイバーン)のお出ましだ」


 吹雪の(カーテン)を突き破って前方から迫ってきたのは――


「ギャオオオオオス!!」


 大きな翼で白銀の斜面を滑空する、三頭の竜だった。

笠松……意外といい奴だ……。


そういや、笠松の性別だけまだ明かしていませんでしたね。

まぁ、そこは『ロマン』です。

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