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毒の魔法で華麗な日常を!!  作者: うなぎ大どじょう
第一章 死を育む樹海の中で
30/160

30 扉を破壊☆豪快女傑!!

「おいギルマス! その話、あたしに回しな!」


「……"首刈り"の女傑(じょけつ)ヒッタイトか。ギルドの英雄であるA(ランク)冒険者が、何故このモラトリアムに?」


「……」


 扉を乱暴に開け放った、いきなりの乱入者――ヒッタイトと呼ばれたその女性に対して、多少の驚きはありながらも冷静に対応するギルドマスター。そして黙りこくるストリングス。


「ん? そんなもん気まぐれに決まってんだろ!」


 ヒッタイトはギルドマスターの問いかけにさらりと答えた。

 

「気まぐれで扉を蹴破られちゃぁ、こっちもたまったもんじゃねぇ。ったく……」


「はっはっは! 悪りぃな!」


 呆れた様子で白髪の頭をかくギルドマスター。ヒッタイトはそれが愉快なようで、豪快に爆笑している。

 ちりちりとした短い茶髪が、彼女の笑いにつられてガサガサと揺れる。


 なんというか、天真爛漫、自由奔放の化身のようだ。


 ヒッタイトは冒険者の(ランク)の中で実質的最上位である、A(ランク)を冠する者。

 彼女のトレードマークは茶髪と巨体。執務室の天井に触れそうな程の長身は、天賦の戦闘力を示す。


 多少粗野な所もある彼女だが、しかし決して悪い奴ではない。A級冒険者なのだ。武勇は勿論のこと、人望だって求められる立場にいる。


「扉の修理費は後できっちり請求するからな」


「そりゃ勿論さ! むしろ黄金の扉にでも改造(リニューアル)するか? ここは黄金の国なんだからよ!」


「はぁ、まったく敵わん……」


 多少荒々しいのだって、ご愛嬌だ。






「死海への調査隊か。こりゃまた胸踊るこっちゃ」


「お前だけだよ。あの死海に入るのを躊躇(ちゅうちょ)しない奴は」


 ストリングスが執務室を去った後。ヒッタイトとギルドマスターは今回の重要任務、死海調査についての打合せ(ミーティング)を行っていた。


「で、ストリングスの奴の報告にあった、『樹海(もり)の主』候補との友好的接触が目標だな」


「そうだ。特に『友好的』って所を重視してくれ」


 計画を綿密に擦り合わせていく両者。

 ヒッタイトの顔付きも、A級(プロフェッショナル)の顔に様変わりしていた。


 ギルドマスターは語る。


「先代の『樹海(もり)の主』だった九頭毒竜(ヒドラ)が突然姿を消してから二百年あまり。その間、樹海開拓は停滞し続けていた」


「それでお前ら、多方面から叩かれてたもんなぁ」


 『樹海(もり)の主』とは言葉の通り、樹海の全てを統べる者のことである。


 かつて人間たちは、交渉に交渉を重ねて、主から樹海開拓の許しを勝ち取ったことがあった。それが二百年前、ヒドラの時代のこと。


 しかし、彼女は突如姿をくらました。幸い割譲(かつじょう)された土地にこの街(モラトリアム)を築くことはできたが、樹海は再び人外魔境へと姿を変え、樹海開拓はふりだしに戻ってしまった。


「莫大な財宝に、聖遺物まで持ち出しての交渉だったらしい。結果として、グゴーリアの国宝の一つを差し出したことで交渉は決着した。主は人間の誠意と情熱を認めたのだ」


「でも姿をくらましたんだろ? その主は」


「それについては……未だに謎だ」


 大きく溜め息を吐くギルマス。

 この立場への就任以来、開拓停滞の(しわ)寄せである非難の声を全て受け止めてきた男だ。額の皺も増える。髪の毛は減る。


「安心しな。あたしが今回の任務をバシッと決めて、万事解決してやるよ」


 胸にどんと拳を当てるヒッタイト。その背中はとても頼もしい。猛者の風格というのだろうか、有無を言わせぬ信頼感をまとっている。


「……あぁ、頼んだ」


 二人はガッシリと握手を交わした。






「じゃ、朗報を待てよ」


 二人の会議が終了した後。

 たてつけの悪くなった扉のノブに手をかけて、退室しようとしたヒッタイト。


 その背中に、ギルマスから声がかかった。


「……最後に一つだけ」


「ん、なんだどうした? 寂しくなっちゃったか?」


 揶揄(からか)うヒッタイト。しかし、彼の顔を見るや否や、その表情を引き締めた。


「もう一つ、極秘で頼みたいことがある」


 深刻な顔で、ギルドマスターは吐き出した。


「死海に出現している……密猟者の確保だ」

第三十話です。また一つの節目を迎えることができました。

最近はじわじわと総合ポイントやPV数が増加しており、思わず頬がほころび、一層執筆に力が入ります。


今一度、読者の皆様に感謝を!!

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