24 怪奇・空飛ぶ百足!
「すごーい! 雲が近い!」
「ウジョウジョ!」
ドラゴンゴーレムに乗って、少女たちは大空を飛ぶ。
びっしりと立ち並ぶ巨樹たちが眼下に広がっている。いつもは見上げている景色を、今日は見下ろしているのだ。
そんな新鮮な光景に、少女の心も大いに踊る。
このドラゴンゴーレムは、樹海中を見渡せる最上の展望台だ。
「あ! あそこ! 丘が見える!」
「ウジョ!」
「あっちはウィズダムたちの家! くもとへびに見えてるかな?」
「ウジョウジョ!」
少女のお気に入りの丘や、サピエンスたちのアジトも見えるようだ。少女がこんなにもはしゃいでいるのは中々に珍しい。
「山にもすぐ着きそうだよ!」
ぐんぐんスピードを上げるドラゴンゴーレムは、山脈に向かって一直線に飛んでいく。
この様子なら、日が沈む前に到着することができそうだ。
「さるをおそったやつ、待ってろよ!!」
少女が目指している山脈。
その中腹に広がる針葉樹林、そこに一匹の魔狼が佇ずんでいた。
彼の目の前には、地面に突き立てられた二つの岩がある。
それは墓標だ。
「我が妻よ……娘よ……なぜ?」
魔狼の牙がぎりりと噛み締められる。悔しさと悲しみをたたえた彼の瞳から、一滴、また一滴とこぼれていくものがある。
「なぜだ……?」
積もった雪が強く踏み締められる。
取り返せぬ死を目の前にして、生物はあまりに無力なのだ。
「くっ……」
魔狼が身を翻し、墓標を後にしようとしたとき――
「あああーー!? 落ちるーーー!?」
「ウジョォーーー!!」
はるか上空から、二つの影が降ってきた。
百足はこの世界で、初めての空を飛んだ百足です。
そりゃそうだ。