23 うるとら☆下克上?
本日二話目となります。
遠くに見える山脈から御来光。ブランニューな朝が来た。
「うーん、おはよぅ……」
「ウジョ……」
もぞもぞと起き出す少女。身体にぐるぐると絡まっている百足をほどきながら、目をこする。
「あれ?」
ふと見れば、彼女たちの側には鮮やかな果実が山のように積まれていた。
「……なんでだろ?」
いつも果物を採ってきてくれるのは蜘蛛だが、彼は今、サピエンスたちのアジトで警護を行っている。
なら、この果実の山は誰が?
「あ」
少女の側の果実の山のそのまた側には、ガッツポーズをするゴーレムたちと、ドヤ顔の百足がいた。
「しゃくしゃくしゃくしゃく……。うん、おいしい」
「ウジョォ」
山のような果実が次々と消えていく。恐るべき食事スピードだ。
粉砕機の如きその顎で、少女は果実を噛み砕いていく。果汁の飛沫と甘酸っぱい匂いがふりまかれる。
「しゃくしゃく……あれ? ちょっと渋い?」
だが、彼女がふと食事の手を止めた。
「ウジョ」
少女の掌の中にあったのは少し青い果実。これでは、旬にはまだ早い。
「ウジョウジョ」
百足とはいえ、果物超絶愛好家の蜘蛛には敵わないようだ。
「ウジョ!」
「うん! いつでもいいよ!」
朝食を終えた少女たちが、なにやら二人で怪しい儀式を始めていた。
地面に描かれた円形の魔法陣と、そのまわりに突き立てられたバーバリアル・ボアの骨たち。
そしてそこからあふれだす大量の魔力。
「ウジョウジョ」
そして最後の鍵として唱えられる百足の呪文。
「おぉ……」
詠唱に呼応して、魔法陣から眩い光が放射される。
そして、その中から現れたのは……。
「グゴオォーーー!!」
竜を模した巨大なゴーレムだった。
鱗に宿る光沢、翼を構築する繊維、双眸を潤す威厳。元は土くれだというのに、その姿はまさに最強種そのもの。
ばさばさと小刻みに翼をはためかせるドラゴンゴーレム。その度にあたりの巨樹がざわざわと揺れる。
「これならひとっ飛びだね」
少女も百足も昨日一日での進行具合から、さすがに徒歩での山脈到達は無理があると悟っていた。
このドラゴンゴーレムはそれに対する解決策。そう、竜の飛翔力を使って弾丸旅行である。
「よいしょっと」
「ウジョ〜」
「グゴォ」
少女たちはドラゴンゴーレムの背中に乗り込むと、早速出発の号令を下す。
「しゅっぱーーつ!」
「ウジョォーー!」
大きな咆哮が樹海に響き渡る。
ゴーレムの翼のはばたきが巻き起こした旋風とともに、彼女たちは大空へと旅立っていった。
最強種の姿写しを生み出せる時点で、百足も相当やばいやつです。強いです。