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毒の魔法で華麗な日常を!!  作者: うなぎ大どじょう
第一章 死を育む樹海の中で
15/160

15 一輪の毒花

「きめた。あなたの名前は……」


 少女が戦杖を天に向かって掲げ、声高く宣言する。


「あなたの名前は、紫涎(しぜん)!」


 蟲たちから拍手がわいた。


 戦杖の名も決定し、これにて、ついに少女の武器『紫涎』の完成である。


 やり切ったという顔の百足、完成の祝いに大量の果実を持ち出してきた蜘蛛、百足を何度もシバいたせいで疲労感のにじむ蛇。

 三者三様、それぞれ違った思いを抱いて終わったこの武器づくり。しかし、少女の初めての武器を祝福する気持ちは同じだ。


 そして紫涎を握りしめ、しみじみと感じ入っている少女。

 どうやら、業物が手中に収まっている感覚に感動しているようだ。


 しかし何よりも嬉しいのは、この戦杖が、百足が自分のためにこしらえてくれた唯一無二(オーダーメイド)であるということ。


 紫涎という名は、蜘蛛の『樹海に咲いている紫色の毒花から名前をとってはどうか』という意見と、蛇の『毒を撃ち込まれた魔獣って、大量の涎を垂れ流して死んでいくよね』という独り言からとられた。


 百足はというと、『プリティーステッキ』という名前を考案したのだが、少女直々に却下されてしまった。

 毒を放ち、肉を叩く強烈強大な戦杖は、さすがにプリティーじゃない。

 提案を却下された百足は泣いた。






「ウジョォ!?」


 突然、少女が百足にぎゅっと抱きついた。


「ありがとう、むかで……わたしうれしい……!」


 そしてそっとそう呟いた。

 少女が喜びを爆発させている。余程嬉しかったのだろう、蜘蛛への感謝の念も相当であるようだ。


 突然のことにあたふたする百足。彼の無数の脚たちが、わらわらと統率を失って動いている。


 人間であるのならば、赤面でもする場面なのだろう。しかし百足は蟲。その顔が赤く染まることはない。

 だが彼の焦り様を見てみれば、どんなことを思っているのかなど一目瞭然。むしろ人間よりもわかりやすいのかもしれない。


 その後、数十分の間少女に抱きしめられ続けた百足は、()(がに)のように真っ赤になって、しばらく元に戻らなかった。

すこし加筆しました。(8/22)

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