13 職人☆百足
百足の操縦する少女型ゴーレムが、枝角鹿の角の加工を始めた。
ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ……。
なんと、手刀で角の余計な突起を削り取り、表面を均している。職人技の光る作業の一コマだ。
百足がゴーレムを操る方法は二つある。
一つは以前のゴーレム演舞で見せたような、ゴーレム自身を自律させて、命令を与える方法。
そしてもう一つが、今やっているような、百足がゴーレムを直接操縦する方法だ。
百足自身がゴーレムの内部に潜り込み、魔法で神経のような仕組みを一から構築。そうすれば、ゴーレムの身体の隅々までもを、彼の意思で精密に動かせるようになる。
彼が小物づくりをする時は、緻密な動きが可能な後者で作業を行っている。
全生物の中で、トップクラスの器用さを宿している人間の身体。ゴーレムを使ってそれに擬態することで、百足は精密な作業を実現しているのだ。
「ウジョ!」
少女の前に。ツルピカに仕上がった角が置かれた。
猛獣の牙のように鋭く尖り、なめらかな曲線を描いたそれは、もはや美術品。
しかし、まだ磨いて形を整えただけ。ここからさらに。少女の掌にフィットするように調整を重ねていくのだ。
「むん……」
少女が角を持ち上げ、試しに魔力を注ぎ込む。すると……。
ビリィッッ!!
落雷のような激しい音があたりに響き渡り、魔力が稲妻のように空中を迸っていった。
ディアの角が少女の魔力を増幅したのだ。
「『ポイズンバレット』」
そして一度少女が呪文を唱えれば、その溢れんばかりの魔力は、百本の毒矢を生み出した。
「すごい……!」
「ウジョウジョ!」
驚く少女を見て、誇らしげに胸を張る百足。
確かに、未完成でもこれほどの威力を発揮するとは末恐ろしい。
ひとえに上質な素材たちと、百足の技術のおかげだ。
きっと、かなりの業物が仕上がるだろう。
そんな予感を抱えながら、百足は再び作業に取り掛かった。
今日は二時にもう一話投稿します。
いかんせん武器づくりパートが長くなりすぎているので。
その理由はもうわかっています。百足が暴れまくるせいですね。