12 それ以上はいけない
蛇と百足の争いは、少女と蜘蛛の仲裁によってなんとか収まった。
しかし、未だに蛇は百足に殴りかかる機会をうかがっている。乙女の怒りとは、こんなにも恐ろしいものなのか。戦慄する。
そんなところで武器づくりを再開していく。ここからは百足の腕の見せ所だ。
今更だが、百足はデカい。
どれくらいデカいのかというと、少女を五人分並べてやっとその全長に届くくらいデカい。
そんな巨体を持ちながらも、彼が作業の繊細さを欠かない理由は、実はゴーレムにある。
「ウジョウジョジョ……」
呪文を唱える百足。
すると、魔法によって空中にたくさんの粘土の塊が生み出され、地面にボトボトと降り注いできた。
さらにその粘土たちは、しゃくとり虫のような動きで地面を這い、百足の所へと寄り集まっていく。
その様子はすこし可愛らしい。
集結した粘土たちで、百足の身体はだんだんと覆われていき……ついに彼は粘土の塊に完全に包まれてしまった。
そして、百足入り粘土塊の表面が、まるで水面のように揺らぎはじめたと思うと……。
ニョキッ、ニョキッ。
手足が生えてきた。
ズボッ。
頭が生えてきた。
パキィン……!
余計な部分が剥がれ落ちていった。
なんということでしょう、あっという間に人型ゴーレムが完成してしまいました!
その容姿は少女そっくり。
なんと、髪の一本一本も、整ったまつ毛も、腹筋のふっくらとしたふくらみも、全て完璧に再現している。
そして、控えめな発達を見せている胸も――
「シャァァ!!」
ドガァッッ!!
……少女型ゴーレムの胸部は、蛇の鉄拳によって粉々に砕かれた。
さすがに、こんな風におふざけばかりしていたら、武器づくりが進まない。
……いや、百足は至って真面目なのだ。
蛇の脱け殻を使おうとしたのは、それが最高の戦杖を作るために必要な素材であったから。ゴーレムに少女の細部まで再現させたのは、彼の完璧主義ゆえのこと。
とはいえ、ダメなことはダメ。
百足はきっちり蛇にシバいてもらって、今度こそ武器づくりを再開しよう。