ep63 ダンジョン探索④
ボス階層の扉の前に辿り着く。
瞬殺。
その言葉の意味を騎士団長はまざまざと見せつけられた。
互いの力量を熟知し、流れる様な連携は
騎士団長の描く戦闘の到達点そのものであった。
しかしそれは己の技量の低さだけでなく、
身体能力の限界を痛感させるものであった。
「エクス殿。その高みに私は登りたい。
修練が足りないのは認めよう。
しかしその身体能力は、、、。」
騎士団長は一瞬言葉に詰まり、続けて口を開いた。
「、、その身体能力に辿り着く事は出来るのだろうか?」
エクスは言葉に悩み、伏し目がちに語った。
「僕の身体能力は偶然が重なった結果なんです。
通常ではまず不可能でしょう。」
「そう、、か。」
騎士団長は肩を落とした。
「けど、魔素研究の先に近い能力まで行けるものが有るかも知れませんね。」
「そう、、なのか?
、、、なら!この身を賭して魔素研究をいたしましょう!」
「はい。団長さんの想いが叶うよう
微力ながらお手伝いしますよ。」
「俺も!俺も頑張るよ!」
「僕だって頑張るよ!」
ルードやスカイも思う所が有ったらしい。
その真剣な眼差しに嬉しくなるエクスであった。
「じゃぁ取り敢えずはこの先のボスを倒しましょう。
生きて帰らないと何もできませんから。」
「「あ!、、、」」
先の戦闘がボスと勘違いしていた
スカイとルードであった。
最奥の扉の前に立つ。
禍々しい気配が漂っている。
「嫌な雰囲気だね。」
「なぁエクス。ボスは何が居るんだ?」
「ん?オークキングと、、、
サイクロプスだね。」
「サイクロプス?!
あの伝説の1つ目の!?」
「何十年、下手すると百年に1度出現すると言われるオークキングと
伝説のサイクロプスだって?!」
「幾らエクスでも不可能だよ!」
3人はエクスの絶望的な言葉に打ちのめされる。
しかしエクスとシロガネが怯む事は無かった。
「大丈夫。皆んなは守るから。」
それは新たにエクスが創ったステータス魔法による所が大きかった。
索敵とリンクされたステータス魔法は
エクスやシロガネのそれが上回る事を教えていたからである。
エクスとシロガネが居なければ進む事も戻る事も出来ない3人は
エクスの言葉を信じるしかなかった。
「行くよ!」
身の丈の十倍はある扉を触ると
その扉はゴゴゴと音を立てながら開いた。
中に入ると案の定扉が閉まる。
3人にシールド魔法をかけるエクス。
『シロガネは1つ目を狩りたいニャ』
「分かった。アイツの方が強いから気をつけてね。」
エクスとシロガネは互いの相手の前へとにじり寄る。
「ガァァァゥー!」
キングは大剣を予備動作無く振り下ろす。
エクスは両手に展開したアイスブレードでいなし、
振り下ろした腕を狙う。
キングは巨体に見合わぬ速さで後に跳びそれをかわした。
ジーポングに来た時に戦ったキングより明らかに早い動きであった。
シロガネは先手を取りサイクロプスの懐に飛び込む。
サイクロプスはその怪力で人の目に追えない速さで巨大な棍棒を振り回す。
かい潜るシロガネ。
隙を見てレイブレードで斬りかかる瞬間、
力学をも無視するかのように方向を変えた棍棒が
シロガネを弾き飛ばした。
「ニ゛ャ !」
壁まで飛ばされ叩き付けられるシロガネ。
視界の端でそれを見たエクスはシロガネの無事を目で追った。
キングはその隙を見逃さず最小の動きで大剣を突き刺しにくる。
エクスが視線を戻した時、その目に剣先が飛び込んだ。
体を回転させながら斜め後方に跳ぶエクス。
同時にウィンドカッターを剣が有った場所に放った。
すかさず体制を整えるエクス。
その右目の横1センチがパックリと裂け
血液が滴り始める。
キングの横腹はウィンドカッターがかすったのであろう
えぐれて血が流れ出していた。
(シロガネ!大丈夫?シロガネ?!)
『ウニャ〜油断したニャ。大丈夫ニャ。』
(良かった、、。)
『ごめんニャ。心配かけたニャ。エクスはそっちに集中してニャ。』
シロガネは体を巨大化させる。
(分かった。気をつけて!)
ウィンドカッターを放ちながら距離を詰めるエクス。
キングは大剣の一振りで真空状態を作り出しそれを打ち消した。
懐に飛び込むエクスはアイスブレードを振り上げる。
後方へ跳ぶキングを追従しながらロックバレットを喉元へ打ち込み
かわしながら大剣を振るうキングの手を切り落とす。
大剣が無くなり、バランスを崩したキングの横腹に
零距離からアイスランスを斜め上に撃ち込んだ。
横腹から肩にかけて突き抜けるアイスランス。
キングは着地と同時に霧散した。
シロガネはサイクロプス振り回す棍棒を高速白虎パンチで払いながら、
その合間に風爪でサイクロプスを血だらけにして行く。
だが深く切り刻む事が出来ず倒せないでいた。
(シロガネ、合流するよ!)
『頼むニャ!こいつ面倒くさいニャ』
エクスはシロガネの後に立ち魔力を練り始める。
集まる魔素はパチパチと音を立てながら光り始めた。
シロガネの毛が光りに吸い寄せられ逆立ち始め、
ザワザワと毛先を揺らす。
「シロガネ!」(いくよ!)
隙を見て斜め後方へと跳ぶシロガネ。
「サンダーコンティヌエーション」
エクスが呟く言葉をきっかけにして
収束された光りからサイクロプスへと雷が走る。
それは落雷のように一瞬ではなく
相手の命尽きるまで継続され続けるのであった。
サイクロプスの体は瞬時に焼け爛れ
沸騰した血液は破裂し炭化していく。
ギリギリ人型を保った物体となったサイクロプスは
崩れ落ち霧散していったのであった。
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