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魂Xの理  作者: to-er
55/67

ep54 魂の楔

エクスの心の内に有るものは、、






子爵邸より帰る際にエクスはミリーにたずねる。


「結局子爵様は僕と会ってどうしたかったんだろう。」


「5歳で準男爵に叙爵されたエクスに会ってみたかったみたい。」


「それだけ!?」


「あと、昔から私に言い寄る変な人が多くてね、

お友達作るのもお父様の許可が必要なの。」


「あ〜。先ずは大事な言葉を話すようにしないと。

誤解のせいって言うのもかなり有ると思うよ。」


「誤解?何の?」


「さっきの子爵様もミリーもそうだけど、

お付き合いじゃ無くて友達付き合いって言わないと。」


「別に当人が分かってるなら良いじゃない。」


「分かってない人がいるから変な奴に求婚されるんだよ。

そりゃゲイルも心配するよ。」


実はゲイルはこの家族で1番まともなんじゃないか?

そう思うエクスであった。


「まぁ私とエクスははれて親公認のお付き合いを始めた訳だし、

何も問題ないでしょ。」


「だからそれを辞めなさいってば。

あ!あと男の人に近づき過ぎるのも駄目だからね!」


「そっか!妬いているのね。エクスったら。

大丈夫よ。私他の男の人には近づかないようにしてるもの。」


「妬いてるんじゃなくて誤解の元なんだってば。

ミリーは視力良くないでしょ。

だから人に近すぎるんだよ。」


「私視力良いわよ。何か勘違いしてない?」


「え?あれ?視力が良いの?

他の人には?まさか、、

いやいやそれは無いだろ。

そうか!面白そうな奴だから友達になりたかったんだな。

それで納得いくな。」


「何をブツブツいってるの?

そうそう。エクスは明日何か予定あるの?」


「え?あ、あぁ。シロガネと狩りに行くんだよ。」


「そう、なんだ。

気をつけて行ってきてね。」


「うん。ありがとう。気をつけるよ。

じゃあ僕は帰るね。」


「えぇ。また学園で。」


「うん。またね〜」


エクスはフロックホース邸を後にした。


エクス自体ミリーが多少なりとも好意を持ってくれている事は

薄々感づいてはいる。

しかしそこまでの面識も無いミリーが好意を寄せる筈が無いと考えていた。


それは前世での記憶が心をセーブさせる為であり、

好意を否定する事により物質世界の心の汚さから

魂を守ろうとする為であった。

記憶を持って転生すると言う事はハイリスクであり、

物質世界での心の一部である体の記憶の中に

基礎となる幼少時の純粋な記憶が欠けるのてある。


人は2つの記憶を持っている。

魂Xの時に語ったが、魂の記憶と体の記憶である。

全ての事象や物には相反する理があり、

+には−、光と闇、善と悪。

互いに相反する存在であり、1つの事象でもある。

魂の記憶と体の記憶もその1つで、

世界を構築する理の中で

物欲のない慈愛の存在とし続ける魂の記憶に対して

物質世界で溢れる欲にまみれ支配され

個々の利害で物事が判断される体の記憶。

その相反する記憶の葛藤が、魂自体の格を上げ、

体に残る葛藤の記憶がこの世界の全てを維持する源となるのだ。


葛藤もせず物欲、性欲、食欲に呑まれ

怠惰に生きた者はその魂が食物連鎖の最下位に落とされ、

上位種に接種され続ける連鎖の一部となるのである。


前世のエクスは騙され、裏切られ、人を恨みながら人の幸せを願った人生を送っていた。

人の汚さの記憶をも残したまま転生してしまったエクスは、

純粋に人を信じ、愛する事が出来ないでいたのだ。


ミリーに好意があったとして一過性のものならば、

いずれ裏切られる未来がそこには有るとエクスは思うのであった。


全てが表裏一体となるこの世の理の中で、

人の心はそんな単純に是非を決められないのは分かっている。

しかし魂の繋がりが重視されない物質世界では

怖がるエクスをなだめる事は出来ないのである。


肌に突き刺さる1月の寒さの中を

エクスはゆっくりと歩いて行くのであった。







読んで頂きありがとうございます。

また来てもらえると嬉しいです。


少しクドくなってしまいました。

ep00も参考に見てもらえると嬉しいです。

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