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魂Xの理  作者: to-er
48/67

ep47 王の好きなもの

公式が終り非公式へ

エクスは降りかかる事態に歯を食いしばる





別室へと案内されたエクス。


(ねた)(そね)みの強い貴族達の今後の出方を気にして、ため息をついていた。


扉が開く。


執事が決して閉まらぬよう開いた扉の前に立ち頭を垂れる。

王冠を外したグレスフィン国王を先頭に

ブルーフォレス伯爵、ロンフィール伯爵と続く。


「エクスよ、頭を上げなさい。」


国王の声が聞こえた。


執事が頭を下げた時にエクスも無意識に立ち上がり、頭を下げていたのだった。


「先ずはそちらの猫はお前の従魔だったな。」


「はい。シロガネと申します。」


「触っても大丈夫なのか?」


「?!え、ええ。良い子ですので大丈夫です。

お触りになりますか?」


「うむ。とても綺麗な猫だな。

見たこともない毛色をしている。

尻尾も2本有るとは珍しい。」


「シロガネ、王様に撫でてもらいな。」


「グルナ〜。」


シロガネは王の足元に座る。

王はシロガネを抱き上げて膝の上に乗せた。


「抜け毛がお召し物に付いてしまいます。」


焦るエクスの声は王の耳には届かず、シロガネを撫で始めた。

(あ!王様猫好きだ!)

目尻の下がった王は御満悦の表情だ。


シロガネはヘソ天しながら王のマントのモフモフ装飾めがけて白虎(ねこ)パンチを繰り出している。


王は突然我に帰る。


「ウォッホン!

して、そなたは魔力について儂に話したい事があるそうな。

ブルーフォレス伯爵から聞いてはいるが、

今一度そなたから直に聞きたいと思っての。」


エクスは意を決し、魔素理論の話をした。


王は長考し口を開いた。

「なるほどのう。確かに魔素と言う存在が有れば、

魔獣の出現、さらにダンジョンの魔物の消滅など、全てにつじつまが合う。

ただ1つ疑問となるのは、おぬし以外の人間がそれを、魔法を使えるのか?!」


エクスはハッとした。

口外しないようにしていた為に、他の人が魔素を使用し魔法を使う事が出来るのか、

定かでは無いのだ。


「失念してました。口外しないようにしていた為、

検証しておりませんでした。」


「やはりそうか。

事は重要な案件だ。信頼出来る誰かに使わせてみんとならんな。」


、、、、

、、、、。

「あの、。グレスフィン国王様。

信頼出来る友人が二人おります。」


「ほう、身元はきちんとしているのか?」


「はい。ブルーフォレス伯爵様の御子息、スカイジーネ・ブルーフォレスと

フォルパディ伯爵様の御子息、

ルーディアス・フォルパディでございます。

友として付き合っておりますが、

両名とも、信頼に足る人物と思います。」


「ブルーフォレスよ、いかがする?」


「我が息子でしたらその期待に応えられると。」


「ふむ。

フォルパディには儂から話しておこう。

あそこも良い子息と噂は聞いておる。

エクスよ、二人にもおぬしの魔素理論を聞かせ、結果を報告するのだ。よいな?」


「はい。かしこまりました。」


言葉にすると仰々しいが、話の間王はシロガネを撫で続け、

王の顎髭(あごひげ)白虎(ねこ)パンチを繰り返すシロガネの姿に、

全員笑いをこらえるのに必死であった事は内緒であった。



昼を過ぎる頃、ようやく開放されたエクスは、

王のすすめもあり、宮廷の庭園を散策していた。

見晴らしの良さそうなガゼボを見つけたエクスは

椅子に腰掛け、大きくため息をついた。


「なんか今日は色々有ったな、、、。

非公式と聞いてたのに公式の場から始まって、

叙爵、叙勲、ときて最後に非公式の会談。

そりゃあ疲れるよね〜。」


少しの間、放心するエクス。


「あ、、、。

お腹空いたな、、。ここで食べたら美味しいだろうな〜。」


辺りを見渡すと要人警護だろうか、エクスから付かず離れず

距離を保って付いてくる騎士がいた。

魔力循環を早め、逃さぬように騎士との距離を詰める。

居たはずのエクスが視界から消え、驚く騎士の懐にエクスは立った。


「あの〜すいません。そこのガゼボでお弁当食べてもいいでしょうか?」


ビクリとした騎士は冷静さを見せ


「大丈夫ですよ。王家の方は今仕事してるはずですので

ゆっくりしていって下さい。」


心臓がバクバクしているのだろう、その声は上ずっていた。


「はい、ありがとうございます。」


ガゼボに戻りシロガネにお肉を出し、

自分用におにぎりを出して食べ始めた。


「あ〜やっぱり外で食べるおにぎりは最高だ!」


『あの時のヤツニャ!シロガネも食べてみたいニャ!』


おにぎりの海苔の付いた所をほぐしてお肉の隣に添える。


「じゃあお肉を少しかじって、そのままこれを食べてみて。」


『!!ニャ!!ウマニャ!お肉の美味しさが更に広がるニャ!

甘さとしょっぱさと海の香りが美味いニャ!』


「フフッ。

流石シロガネ。詳しい食レポありがと。」


「それは何を食べてるのかな?」


油断していたエクスはビクリとし、恐る恐る後ろを振り返る。


「グレスフィン国王様?!何故ここに?」


「儂の庭だ。別に何時居ても構わんだろう。

それよりワシも小腹が減ったぞ。それはもう無いのか?」


「有ります・・が、、、食べますか?」


「いただこうか。で、それは米だな?

巻いてあるのは何だ?見たことが無いぞ。」


「ああこれは海苔と言います。

昨日ラグンハーツ港に行った時に取ってきました。」


「ほう。市井(しせい)の人々の食べてるものか。」


「いえ、、食べてる人は見ないですね。

食べ物として認識されてないみたいです。」


「食べても大丈夫なのか?」


「はい大丈夫です。何でしたら毒見いたします。」


「よい。儂はおぬしを信じてるでな。」

王はガブリとおにぎりを頬張った。


「ムームームムム!ムームムムム!」


「グレスフィン国王様、お話はそれを飲み込んでからで、、、。」


王はゴクリと飲み込み


「何だこれは!これは美味い!

米の甘さに軽く振った塩、そこに海の香りが詰まった海苔が最高だ!」


「気に入っていただけたのなら良かったです。

おかずも有りますから、おにぎりと一緒にどうぞ。」


「ムムムムムー!ムムムームムムムムーム!」


「イヤ、あの、、飲み込んでから、、、」


ゴクッ!

「これは凄い!いちだんと美味くなった!

海苔の風味がおかずの味を引き上げている。

エクスよ!もう海苔は無いのか?少し分けてくれんか?」


「まだ有りますから料理番の人に渡しておきますね。

食べ方が有りますので。」


「そうか。ではよろしく頼むぞ。

ワシはそろそろ行かねばならん。」


「はい。かしこまりました。

魔素の件を含めましてまた御拝謁させて頂きたく存じます。」


「うむ。待っておるぞ。」



エクスは海苔を料理番の元へ持って行き、

炙り方やアレンジを教えて王宮を後にした。











読んで頂きありがとうございます。

また来てもらえると嬉しいです。

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