ep45 港へ
受付の人が持ってきたモノとは?
受付の人が戻って来た。
「エクス君、はいこれ。」
渡された物はCランクの冒険者カードであった。
「?!これは?」
「エクス君は今まで子供用の特別カードだったんだけど、
その実績を見てCランクに上げる事になりました。」
「はい?
僕はまだ10歳になってないし、通常ランクもFからですよね?」
「これはかなりの特例になるんだけど、
まずシロガネ君を1人と考えても、
二人で中級の魔物を倒せるのはEランクでは無理な事。
そして、最上位のボスクラスを二人で倒すのはDランクでは無理な事。
この事から年齢を無視しても最低でCランクに相当すると判断されたんだ。」
「でも僕が嘘をついていたらギルドの信用にかかわりますよ。」
「エルマー王国の王都からここまでほぼ一人で来た事。
ロンフィールでゴブリンを討伐してる事、
ブルーフォレス伯爵の御子息を助けた事、
全て裏は取れてるのでエクス君を疑う事は無いよ。」
「まぁ嘘はついてないですけど。」
「ギルドからの本日の話は以上ですね。」
「騎士団からも大丈夫だ。
マップが有るから調査も早いだろう。」
「では只今の時間よりダンジョンは騎士団の調査が終了となるまで
立ち入り禁止とさせて頂きます。」
「え?」
「「ん?」」
エクスの反応にウィルネスティ騎士団長達が反応する。
「立ち入り禁止にするんですか?
ギルド終わったらシロガネと次の階に行こうと思ってたのに!」
「あぁ、すまんな。
騎士団としては新しく出現した王都近郊のダンジョンを、
調べもせずに出入りを自由にして置く訳にはいかないんだよ。」
「僕達は6階からだから邪魔はしないと思うけど駄目ですか?」
「それでもだ。
4〜5日で終わると思うから我慢してくれないか?」
「、、、分かりました。
来週の休みまで我慢します。」
「ありがとうエクス君。
ダンジョンの発見と報告と言う事で、国から報奨金も出るだろう。
それで我慢してくれ。」
ウィルネスティ騎士団長はマップをしまい、足早に帰って行った。
すぐにでも出発するらしい。
部屋を出たエクス達は
仕方なくギルドのCランク冒険者用のボードを見に行くのであった。
『ニャにが有るかニャ、ニャにが有るかニャ。どれにするかニャ。』
「慌てない慌てない。
ん〜近場では良さげなのは無いなぁ。
多分治安の為に騎士団が討伐しちゃってるんじゃないかな?。」
臭い物でも嗅いだかのような顔で呆然と固まるシロガネ。
見かねたエクスは簡単な近場の常設依頼を指差してシロガネに話しかける。
「とりあえず外に行って常設依頼をこなしながらプラプラしようか?。」
『しょうがないニャ。それで我慢するニャ。』
気落ちするシロガネを撫でながら南の平野に向かう。
「そうだ!僕達だったら走って30分もしないで港に行けるから海行こっか?」
中途半端な距離の為にラグンハーツ港と呼ばれている港町がある。
実際は王都を囲む外壁の外に有り、
間には平野が30キロほど広がっている。
当然討伐されて少ないが魔獣も出現するのであった。
『海ニャ?!魚ニャ?!行くニャ!』
エクスは少しだけ魔力循環を早めて走り始める。
シロガネも尻尾を立てて嬉しそうに走る。
魚を食べられると言う気持ちがダンジョンの件を忘れさせたようであった。
「♪ナ!グルナ〜オ!グルニャ!アゥニャ。♪」
人で言う所の鼻歌なのだろうか、嬉しい時のシロガネは、
無意識に言葉を発している事が多い。
声帯から発したシロガネの声は高く澄んでいるとても綺麗な声だ。
そのくせ思考伝達の頭に感じる声はダミ声で、
1オクターブは下の声に感じるのだ。
初めの頃はその違いに違和感をかんじていたが、
今はそのギャップが愛おしくてしょうがないエクスであった。
港町に着くとエクス達は早速市場へと向かった。
新鮮な魚介類を大量に買い込みインベントリに収納する。
「これで魚が食べたくなったら何時でも食べられるよ。」
『食べるニャ!今食べるニャ!』
「海っぺりの良いとこ探して食べようね。」
『海っぺりって何ニャ?』
「海の縁の事だよ。
目の前が海になってるトコで海を見ながら食べようって事だよ。」
『良いニャ!風情ニャ。海を見ながら食べるニャ!』
「ウンウン。良い所が有るといいね!」
シロガネはエクスの頭の上に乗って辺りを見回し始めた。
『あ!あそこはどうニャ?食べるニャ!』
少し奥まった所に砂浜と岩場が混在した場所があり、
人も居らず、他人に迷惑をかけない場所があった。
「良いね!ここにしよう!」
エクスはインベントリにしまってあった手作りかまどとテーブルを取り出して、
バーベキューの準備を始める。
初めのうちは波で遊んでいたシロガネは、
具材が焼きあがる頃には
かまどの横で目を丸くして半開きの口からゆだれを僅かに滲ませていた。
『も!もう良いんじゃないかニャ?
食べ頃じゃないかニャ?』
「うん。良い感じだね。」
エクスはシロガネ用に焼けた魚介を皿に移してあげる。
「はい、どうぞ。」
皿をシロガネの前に置くとウニャウニャ言いながらがっつき始めた。
エクスも食べながら次々と焼いていく。
気が付けばシロガネのお腹はコロコロに丸く膨れていた。
『もう駄目ニャ!入らないニャ〜!』
ヘソ天しながらお腹をグルーミングするシロガネ。
エクスもだいぶお腹がこなれたので後片付けをしてサーチをかけた。
岩に付いたそれをスダレのような物に薄く広げて浄化と乾燥をさせる。
『何をしてるニャ?黒い紙でも作ってるのかニャ?』
「あぁ、これ?
これは海苔って言うんだよ。ジーポングで主食のお米と一緒に食べるんだ。」
『あの鳥の餌みたいなつぶつぶかニャ?』
「そっか。僕は食べてるけど、シロガネは基本肉ばっかりだから食べた事が無いのか。
今度シロガネの気が向いたら食べさせてあげるよ。」
『、、、。
食わず嫌いは駄目ニャ。いつか食べてみるニャ。』
「アハハ!無理しなくていいからね。」
エクス達は海を満喫して王都へと帰るのであった。
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