ep42 アップグレード
魔道具の呪文の暗記に憂鬱になるエクス。
あれから数日。
何事も無く平穏に日々を過ごしていた。
5歳での叙勲にブルーフォレス伯爵に認められた事実の確認で、
王都に集まっていた親貴族達は情報集めに必死となっていた。
子供達はと言うと、親に言われたのだろうか遠巻きに静観している状況だ。
「あいつ等エクスを腫れ物扱いしやがって気分わるいなぁ。」
ルードががボヤいている。
当のエクスはそれが心地よく、気にも留めずに過ごしていた。
少しやつれた感じのモルデンナートは高飛車な態度は無くなり
気弱な先生と言った感じだ。
「今日は魔道具の呪文についての講義をします。
皆さんは魔力循環が出来ますので、それは割愛します。
魔道具は魔力循環をすることをきっかけに作動させて、
呪文と言われる設定をする事で発動します。
この呪文の暗記が大事となりますので、頑張って覚えて下さい。」
エクスにとって呪文は未知の領域であった。
しかし魔道具使える事は便利な事も多く、呪文は避けては通れない。
苦手な暗記をひたすら繰り返さないとならないのだ。
「はぁ〜、、、。
暗記は苦手なんだよな〜。」
うなだれるエクス。
シロガネは首を傾げてエクスに言った。
『何を一生懸命にやってるニャ?
言葉と体の記憶領域をリンクすればいいニャ。』
「そっか!何も一生懸命に覚えなくても良いのか!
流石シロガネ!頼りになる〜。」
シロガネをわちゃわちゃと撫でまわすエクス。
シロガネは我慢できずにゴロゴロ喉を鳴らし始めた。
「エクス君遊んでないでちゃんと勉強して下さい。」
モルデンナートは苦虫を噛み潰した顔をしていた。
エクスは魔力循環を加速しながら言葉と記憶領域をリンクさせていく。
授業の時間を使って教科書の全てを記憶したのだった。
「これって色々使えそうだな。」
エクスを見つめるシロガネを時折撫でながら
色々なパターンを思い描くのであった。
放課後、スカイやルードの誘いを断り、図書館へ向かうエクス。
「えっと、図書館は、、、。
ここだここだ。」
扉を開けると広い部屋にぎっしり詰まった本棚が並んでいる。
吹き抜けで3階はあり、めまいのしそうなほどの荘厳さを醸し出していた。
エクスは魔獣図鑑、植物図鑑等の図鑑系を片っ端から記憶していった。
2日ほど繰り返し、必要と思われる情報を記憶したエクスは
学園の休みに王都の外に足を運ぶ。
サーチと記憶をリンクさせ、広範囲サーチを行う。
「やった!成功だ。」
実物を見ていない魔獣のサーチも何の魔獣かが分かるようになり、
指定した植物もサーチ出来るようになったのだった。
鑑定も情報が細かく分かるようになり利便性が増した。
実際は記憶に有るのだが普通に思い出す事になる為、
ど忘れや勘違い、なかなか思い出せない事もある。
より正確に情報が得られる為にも鑑定の意義は高いものとなる。
「便利便利。これで採取依頼も楽になるな。」
エクスは満足気に笑うのであった。
「シロガネ!ついでに狩りでもしようか?」
『狩るニャ!一緒に狩るニャ〜!』
「森の入口にいるボアにしようか?
もっと奥にレッドボアもいるけど。」
『両方ニャ!奥まで行くニャ!』
「よし!じゃぁ行くよ!」
魔力循環を加速させ、走り出すエクス。
シロガネもその横を難なく走っていく。
「3体いるから2体あげるね。」
『まかせるニャ!』
シロガネは1体をすれ違いざまに両断しつつもう1体へ、エクスは残りの1体をアイスブレードで倒す。
インベントリに回収してる間にシロガネはもう1体を倒した。
「次はレッドボアニャ〜!」
そのまま速度を落とさず走るシロガネ。
「アハハ!シロガネってば暴走し過ぎ!」
「エクスとの狩りニャ楽しいニャ」
「見えた!レッドボアだ」
レッドボアはエクスとシロガネに気付いているようで、
戦闘態勢に入っていた。
それに気付いたシロガネはレッドボアのサイドに回り込み
高くジャンプしながら襲いかかる。
レッドボアは長い牙をシロガネに向けた。
視線の逸れたレッドボアの懐にエクスは入り込み、
その首を落としたのであった。
「シロガネ!陽動すごく良かったよ!」
『咄嗟に飛んだニャ!エクスも良く反応したニャ!』
エクスはシロガネを抱き上げ鼻タッチをしたのだった。
「結構森の奥まで来ちゃったね。」
『それにしては魔獣が少ないニャ。つまらないニャ。』
「多分王都の周りは騎士団の人が魔獣退治をしてるんだろうね。
王都の安全の為に頑張ってるんしゃないかな?」
『つまらないニャ!狩りたいニャ!』
「ん〜。こればっかりはね〜。
シロガネ、サーチに引っかかる何だか分からないトコに行ってみる?」
『もう少し奥のやつかニャ?
まぁエクスが行くなら一緒に行くニャ。』
知識を詰め込んたエクスのサーチにも内容不明なその場所に向かってエクス達は歩き出した。
「全然動かないから生き物じゃないみたいだよね。」
『魔獣じゃないみたいニャ。大したものじゃないと思うニャ〜。』
「でも反応があるから魔力を持った何かだよね。気になるよ。」
その地点に着いたが何も無い。
エクス達は周りを探り始めた。
「あれ?これは、、、。」
エクスの目の前に2メートル程の草に覆われた岩が有り、
中央に異次元にでも繋がっているような
漆黒の穴らしきものが空いていた。
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