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魂Xの理  作者: to-er
38/67

ep37 2人の伯爵

エクスを乗せた馬車は王都ラグンハーツに到着する。






「サーバス様ラグンハーツに到着しました!」




護衛の声が聞こえてきた。

馬車は貴族や王族が使用する正門からの入都となる。


馬車は停まり、衛兵が確認作業を行う。


「失礼ですがそちらの少年は?」


「ブルーフォレス家の客人でエクス殿ともうします。

身元はブルーフォレス家が責任をもって保証します。」


「かしこまりました。

後ろの馬車は一行の者達でよろしいでしょうか?」


「はい。元はエクス殿の乗車する馬車でしたが、

負傷した護衛兵の移動に使用させていただいております。」


「分かりました。確認作業を続けますのでもうしばらくお待ち下さい。」


流石に伯爵家一行でも入念な検査がはいる。

王都とはそれだけ厳重な体制をもって守られているのである。


「確認作業完了いたしました。どうぞお進み下さい。」


馬車は先程よりゆっくりと進み始めた。

安全性の意味合いもあるが、市民に貴族の存在を誇示するのが主となるのである。


馬車は曲がる事無く進み貴族街へと入っていき、

ブルーフォレス伯爵邸の前に着くと

門番は馬車の速度を落とさせる事無く門を開く。

早馬を走らせていたのだろう、使用人の並ぶ玄関先に馬車は停まる。

最後にスカイが降りると従業員一同が頭を下げた。


「スカイジーネ様、エクス様を応接室へお通ししなさい。

私は旦那様にお話しをしてまいります。」


「え?伯爵様はこちらにいらっしゃるのですか?」

エクスは驚いた顔でサーバスを見上げた。


「はい。3月中旬から4月末迄は各領主が集まり、

懸案事項等のすり合わせをするのです。」


「ではロンフィール伯爵様も王都にいらしているんですか?」


「いらしていると思います。

ロンフィール伯爵様に何か御用がお有りですか?」


「功労勲章をいただいたのですが、護衛の冒険者とのイザコザで

伯爵様の威光を使ってしまいまして、お礼とお詫びをしたいと思っております。」


「エクス様は叙勲なされていたのですか。」


「はい。ロンフィールの発展に寄与したとの事で。」


「それは素晴らしい。いずれ詳しいお話しを聞かせていただきたい。」


「話せる範囲で宜しければ。」


「それで結構でございます。

さあ、応接室の方へどうぞ。シロガネ様も御一緒にどうぞ。」


メイドに案内され応接室へと足を進めた。

ソファーに腰掛け伯爵を待つ。


「お父様遅いな、、。何をしてるんだろう。

呼びに行こうか?!」


「スカイ、駄目だよ。伯爵の仕事はとても忙しいんだ。

それに伯爵が応対する一般人に対して急ぎましたなんて態度はしちゃいけないよ。

それで増長する人は少なからずいるんだから。」


「でもエクスは命の恩人なんだよ!」


「それでも、だよ。

大切な子供を助けてもらって、すぐお礼したい。無事な息子を確認したい。

それでも一般人に対して伯爵が取り乱したり、焦ったりしてはいけない。

有事の時に感情が先になったら、守れる者も守れないだろ。

爵位をいただいた人の義務でもあるんだ。」


「そう、、なんだ、、。

冷たく思えてもそう言う理由があるからなんだね。」


「だからこそ(うやま)えるんだよ。」


「敬ってもらう為にはそれなりの態度が必要になるんだね。

僕も貴族としてそう言う事を学ばないといけないな。」


「スカイなら良い貴族になれるよ。

僕の話もきちんと聞いてくれるし、その話を自分に置き換える事ができるから。」


「うん。頑張って良い貴族になるよ。

そしたらエクスは一緒に来てくれる?」


「え〜どうしようかなぁ。

僕はやりたい事をやって、

田舎でのんびり楽しく暮らしたいだけだからなぁ。

シロガネだって走り回れる方が良いだろうしね。」


「ウチの領地は田舎だよ!」


「じゃあ僕達が大人になっても田舎なら考えてみようかな。」


「そうなるように頑張るよ!」


「いやいや、領主の息子なら発展させないと駄目だよ〜。」


ガチャ!


応接室の扉が開く。

エクスは立ち上がり深々と礼をする。


「初めましてエクスと申します。

この度はお忙しい所ご拝謁(はいえつ)させて頂き誠にありがとうございます。」


「エクス君、頭を上げてくれ。」


エクスは頭を上げる。

するとそこには見覚えのある人が並んでいた。


「私はブルーフォレス家当主メイルベン・ブルーフォレス伯爵だ。

驚いたと思うが、ロンフィール伯爵にも来てもらった。」


「ロンフィール伯爵様お久しぶりにございます。

ご存知かとは思いますが、

護衛の冒険者とのイザコザで御威光を使ってしまいまして、

誠に申し訳ございませんでした。」


「それも含めて叙勲したのだ。気にするなエクスよ。

あ奴等は一生強制労働をする事になったから安心しろ。」


「さてエクスよ。我が息子、スカイジーネ・ブルーフォレスの命を

救ってもらったと聞いた。感謝する。」


「人の道として助けたまでの事でございます。

あと少し早ければ伯爵様の大切な部下を守る事も出来たでしょう。

悔やむ次第でございます。」


「ふっ、、。ハハハハ!」

大声でブルーフォレス伯爵が笑い出す。

隣ではロンフィール伯爵が笑いをこらえていた。


「ロンフィール伯爵の言った通りだな!この歳にしてこの言い回し、気に入るのも納得だ。」


「だろう!その才知でアロマキャンドルや石鹸を作り上げたのだ。」


「あれは良い発明だ。我が領土でもその知識を活かしてもらいたいものだな。」


「おいおい!エクスは私が先に目を付けたんだ。渡さんぞ。」


「今後エクスがどこへ行くかは彼次第だろ、

ウチのスカイとは友達なのだからどうなるかは分からんだろう。」


「それはそうだが。」


「してエクスよ!その方には礼として金貨50枚。

そして息子のスカイと対等の立場を約束しよう。

無礼罪は無い。スカイとは良い友になって欲しい。」


「は!ありがたき幸せにございます。」


「実は先程の二人の会話、ロンフィール伯爵と隣で聞いていた。

スカイの貴族としての立ち位置、立ち振る舞いにも良き影響を与えるようだ。

エクスよ。スカイの事よろしく頼むぞ。」




「はい。かしこまりました。」




エクスとスカイは顔を合わせ微笑んだ。





読んで頂きありがとうございます。

また来てもらえると嬉しいです。

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