ep35 貴族の君
貴族の一行を助けたエクス
馬車の扉が開き、そこから出てきた君は・・・
貴族の護衛達は唖然としていた。
70ものゴブリンに囲まれ死を覚悟した途端にゴブリンの数が減り、
更に小さな子供がバッサバッサとゴブリンを切り倒して行くのだ。
その姿に恐怖を抱いた護衛達は剣先をエクスに向ける。
「大丈夫ですか?」
ゴブリンを殲滅し、あっけらかんとした表情で話しかけるエクス。
「な!何者だ!」
震える剣先を向けたまま護衛達は声を振り絞る。
「お前達!助けてくれた方になぜ剣をむ向ける!」
馬車の中から現れた執事と思われる初老の男性が一喝した。
「し、しかし!」
「剣をしまわんか!」
護衛達はビクッと体を震わせ我に返った。
剣を収めエクスに一礼する護衛達。
「助けて頂いたのに大変な無礼申し訳ありませんでした。」
「構いませんよ。生きるか死ぬかの瀬戸際だったんですから。」
「そう言って頂けると助かります。」
すると馬車の扉が開いた。
そこから現れたのは同じ位の年齢の少年であった。
(男かよ!)
エクスは心の中で突っ込みをいれる。
しかしその見目は美少年と形容するに値するほどであった。
「僕はブルーフォレス家の二男でスカイジーネ・ブルーフォレス。
助けてくれてありがとう。」
「エクスと申します。ご無事でなによりです。スカイジーネ様」
「恩人に敬語は使わせられないよ。
普段通りの言葉でいいからね。
あと僕の事はスカイって呼んでね。」
2人は顔を見合わせ、微笑んだ。
「私はブルーフォレス伯爵家にお仕えする執事のサーバスともうします。
先程は助けて頂いたのにもかかわらず部下が無礼を働き大変申し訳ありませんでした。」
「いいえ。謝罪の言葉も頂きましたのでお気になさらずに。」
「失礼ですがエクス様は何処か名のある家の出なのでしょうか?
言葉の言い回しが随分と長けていらっしゃるようで。」
「僕の実家はエルマー王国でアイテムショップを経営してます。
接客業ですので乱暴な言葉遣いはしないよう心がけていますので、
そのせいではないかと思います。」
「エルマー王国ですか。
旅行か何かでジーポングに?」
エクスは少し困った顔をしながら祝福での出来事を話した。
「なんですと?!その歳で追放されたのですか?!
それはとても辛い経験をなされましたな・・・。では、今はお一人で?」
「はい。ロンフィールにいる叔父と話し合いまして、これからの経験を積むために
ラグンハーツ学園に行くことにしました。その寮に向かってる所です。
馬車で近くまで来た時に人が襲われてるのがわかりまして駆けつけました。」
「じゃぁエクス君も5歳なの?!
僕もだよ!
僕も学園寮に向かう所だったんだ。」
「え?でも伯爵家なら王都にも別宅が有るんじゃないの?」
「旦那様の教育方針で子供のうちから従者がいる環境はその子を駄目にすると言う考えで寮暮らしをさせる事になったのです。」
「あ、少し分かる気がします。
増長してしまうと大変な事になりますからね。」
「フフ。エクス様は本当に色々な言葉を知ってらっしゃる。
ですが私にも普段の言葉で話していただけませんか?
スカイぼっちゃんとは普通に話して執事の私に敬語はいささかよろしく無いですから。」
「そうですね、、。いや、そうだね
ただ、目上の人に敬語を使うのは癖なんで、たまに出たらゴメンね。」
「ええ。分かりました。」
「ねぇエクス君。ラグンハーツまで後少しだし、寮まで一緒に行かない?」
「ん〜御者のおじいさんと従魔が向こうで待ってるからなぁ・・・。」
「お待ちしておりますので、良ければ呼んで来て下さい。
エクス様は戦闘も慣れていらっしゃるようですし、御一緒できればこちらとしても心強いですから。」
「じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。」
「うん。待ってるよ。」
エクスがシロガネ達を連れて帰ってきた。
「思ったよりも時間がかかりましたね。何か不都合でもお有りでしたか?」
「え?いやすぐ来たよ。3キロ離れていたからこんなもんでしょ?」
「さ、3キロですか?そんなに遠くで私達が襲われていたのが分かったのですか?」
「え?・・いや、あ〜、まあ・・・はい。」
「その魔道具は何処で売っておりますか?
いくらでも構いませんので売って頂きたい。」
「え?魔道・・あの〜・・試作で非売なアレでして・・・」
「そうですか・・残念です。もし製品化されたときは御一報下さい。
すぐにお金は用意させますので。」
「あ〜はい。わかりました。」
うっかり喋ってしまったエクス。魔素理論が誰も知らない事であり、
それを使って魔法でサーチしてましたとは言えないのである。
「スカイ君、僕の従魔のシロガネだよ。」
「ニャ!」
「うわ!白銀の猫だ!カッワイイ〜!
あ!!尻尾が2本ある!」
「この子も一緒だけど良い?」
「いいよ!いいよ!!一緒に行こう!
あ、あと、君はいらないよ。スカイで良いからね。」
「あ!僕にも君とかいらないから。エクスでいいからね、スカイ!」
「うん!分かったよエクス!」
「ニャ〜!」
「シロガネも宜しくだって。」
「よろしくねシロガネ。」
「白銀で2本の尻尾・・・。シロガネ君はなんて言う種族なのでしょうか?」
「猫(奇形腫)で登録してあります。」
「そうですか・・エクス様は大変珍しいものを多くお持ちのようですね。
やましい心を持った人間は多いですから、お気をつけて下さい。」
「はい。それでシロガネとは従魔登録したんです。」
「僕もカワイイ従魔が欲しいな!」
「従魔とするにはその動物と余程仲が良く、信頼関係が無いと駄目なのです。
簡単には従魔契約出来ませんよ。
それに、シロガネ君以上にカワイイのは無理と思われます。」
「そっか、、残念。」
「そのうちスカイにも従魔になってくれる動物が現れるよ。」
「これからエクスと一緒の学園だから、シロガネとは何時でも会えるしね。」
「グルニャ」『たまになら撫でさせてやるニャ』
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