ep33 憤怒
王都ラグンハーツに向かうエクス
護衛の冒険者がいるためシロガネは狩りに行けず・・・
3月も半ば、エクスは馬車に乗っていた。
ジーポング王国の王都ラグンハーツの学園寮に入寮する為である。
あれから世界花に花をブレンドし、数種類の香りを商品化した。
花単体でアロマキャンドルや石鹸を試してみたが、
香りは薄く商品としてのレベルにはならなかった。
世界花に混ぜる事で香りが引き立つ事に気付き、商品化を成功させたのだった。
バタフライガーデンのブランドを立ち上げ
全国展開を開始。
この1か月でジーポングの全領土からの受注を受けるまでに至った。
VIP扱いの移動となり、冒険者が護衛に付く暇な移動となった。
『暇だニャ〜。シロガネも狩りたいニャ~。』
猫の亜種と言う肩書きのため、何も出来ないシロガネはエクスの頭の中で喋りつづけていた。
しばらくして前方に10体の反応をサーチした。
「あの〜すいませんシロガネがトイレみたいなんで、
少しだけ止まってもらえますか?」
またかよ と言うような顔をする冒険者達。
馬車が止まるのを確認し、
「シロガネ、行っておいで。」
その言葉をきっかけに猛然と走り出すシロガネだった。
数分で討伐してスッキリした顔で戻ってくる。
「ま〜たスッキリした顔してるよ!」
冒険者達は笑っていた。
「おつかれシロガネ。」
労うと満足そうにしてエクスの膝の上でまるくなる。
そんな事を繰り返し馬車は進んで行ったのであった。
冒険者は魔獣の出現が少ないと喜んでいるが、
シロガネが行かなかったら死人も出ていただろう。
それぐらいの魔獣が群れで出没し、
それ程冒険者は弱かった。
「逆に足手まといだよな。」
つぶやくエクスの声は冒険者の耳には届かなかった。
夕闇が迫り、野営の準備を始める冒険者達。
流石に手際が良く、かまどやテントを瞬く間に作り上げる。
契約上それらは各々が用意する事になっており、エクス達を無視して肉を焼き始めた。
(おいおい、いくらそこが自由だとしても、護衛対象がいるのに
魔獣を誘き寄せるような事をするか?)
御者のおじいさんも驚き、慌てていて、これがどれだけ非常識かを物語っていた。
今回の事、シロガネを笑った事。自分達がいなくなったら、じいさんと子供だけじゃあ野垂れ死ぬと言わんばかりの態度。
エクスの目がどんどん据わっていく。
それを見たシロガネが馬車の後ろに隠れる程の雰囲気を醸し出す。
「冒険者のおじさん達、また明日の朝ね。いなくならないで夜番してね。」
冒険者達は怪訝な顔をし何かを喋ろうとした。
「何だガk・・・」
エクスはそれを無視し、自分達の周りを長方形の岩で囲む。
おじいさんや馬は一瞬驚いたがすぐに落ち着きを取り戻した。
「これなら安心して寝れるのぅ。
あのままだったら何時魔獣が来るか分からんかったからの。」
「ええ。しかもこの中なら普通に料理も出来ますよ。
今作りますんで待ってて下さい。」
エクスはオークミンチ肉でハンバーグを造る。
おじいさんの歯が弱いかもと思い、食べやすいものにしたのだ。
その匂いにシロガネがそっと近づいてきた。
『エクス怒ってないニャ?怖くないニャ?』
「大丈夫だよシロガネ。あの冒険者に腹が立っただけだから。
大好きなシロガネに怖い事はしないよ?」
『よ、、、良かったニャ〜。エクス怖かったニャ〜。』
「ほら、シロガネも大好きなハンバーグだよ。一緒に食べよう?」
『うニャ〜!』
「ホッホッホッ君達は会話してるみたいだなぁ
わしも馬と話をするんだぞ。」
「ブルルル!」
『おじいさんが一方的に喋ってるだけだって言ってるニャ』
(え?他の動物と喋れるの?)
『喋れるニャ。エクスだって動物ニャ。』
(ああ、そうか。シロガネは心で会話するんだから
心が有ればどんな動物とも喋れるのか!)
『流石エクスニャ。理解が早くて助かるニャ。』
エクス達は食事を終え、それぞれ間仕切った部屋で休んでいた。
『冒険者がどっか行ったニャ。良いのかニャ?』
「構わないよ。多分元々僕達を魔獣に殺させようとしてたみたいだし。」
『そうなのかニャ?!』
「バリス叔父さんの競合店か僕の特許狙いか分かんないけど、
誰かがあいつ等に依頼したんじゃないかな?
こんな所に残されたら生きて街にはたどり着けないだろうとでも
思っているんじゃないかな。」
『シロガネ達なら楽勝ニャ。』
「まあ街に着いたらギルドに苦情を入れよう。
彼等と勲章持ちの僕とじゃ信頼度が違うからね。
下手をすると彼等は一生強制労働する事になるかもね。」
極上の笑みを浮かべるエクス。
『ニャ!やっぱり今日のエクスは怖いニャ〜。』
「だってシロガネの事笑ったんだよ!ホント腹が立ったよ!
シロガネはこんなにカワイイのに!」
『うニャ〜!だから顔でシロガネのお腹グリグリするのやめるニャ!
こしょばったいニャ〜!』
読んで頂きありがとうございます。
また来てもらえると嬉しいです。




