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魂Xの理  作者: to-er
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ep13 違和感

本当の意味で一人になったエクス。

気付かぬうちに心は閉ざしはじめていた。





あの祝福以来何かがおかしい。



ステータス魔法でもおかしな所は無く、

バグった文字と平均的な数値のみ。

頭に感じた電気や頭痛の後遺症的なものも何も無い。


違うとすれば、魔力循環の流れのイメージが線の集合から

体全体が魔力の塊に感じるようになった。

体を(おお)う器、卵のようなものが体を(おお)っていて、中身が渦を巻くイメージ。

いや、銀河系が体の中にあると言う方が近いだろう。

血管以外にも体の細胞全てに魔力を感じるのだ。


自分の身に起こる異変に漠然とした不安感が心を押し潰そうになる。


「はぁ~」


深いため息を吐くと冷えきった風に白い息が溶け込んでいった。



「フータリヌが見えてきたぞ!」


冒険者の一人でが大声で叫んだ


王都に引けをとらない5m級の壁に囲まれたその都は

圧倒的な広さと賑わいを見せ、王国東端最大の都市となっていた。


「ふぅ~やっと着いたわい」

「数は多かったけど一度しか魔物に会わなかったわね」

「ああ。今回は運が良かったなぁ」

「エクス君は神の敵じゃなくて、護られているんじゃないかしら。」

「ワシもそんな気がするわい。」


老夫婦の会話がエクスの心をかるくする。


しかし本当にそうなら敵に会う事さえ無かったハズだ。

未だ創れない『運』のステータスが有れば、もしかしたら人より高いのかもしれない。



領都の門にたどり着く。

国外に出るまでエクスの腕には(かせ)がはめられていて、国外追放が完了するまで外される事は無い。


枷を見た門番は険しい顔でエクスをマジマジと眺めた。

「王都から話しは来ている。領都の滞在期間は今晩のみだ。明日朝一で出発するように。」

無慈悲な言葉に奥歯を噛み締める。

「しかしよくここまでたどり着いた。明日からが一番辛くなるだろうが、頑張って生きぬけよ」


門番も人の心を持っている。

神の敵と疑われてはいるが、5歳の子供の国外追放に胸が痛むのだろう。

ましてこの先、1月の極寒の中、魔物が数多く出現する森や山を越えないといけないのだ。



軽く会釈をし老夫婦と領都に入る。

冒険者の任務完了書にサインをする老夫婦。

冒険者と別れた後エクスに話しかける。

「今日はうちで休むといい。美味しい物を作ってやろう。」

少し驚いた顔をしながら老夫婦を見上げ、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。」

精一杯の感謝であった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







早朝領都の東門にエクスの姿があった。


あの後、老夫婦は東行きの馬車がないか探してくれていたのだが、

どうしても見つけられなかったらしい。

「エクス君わしらの方で馬車を探してみたんだが、・・・

あいにく東行きの馬車が無くてのぉ」

心苦しい顔をしながら老夫婦は弁当を差し出した。

「せめてこれだけでも持っていってくれ」


温かい弁当と数日過ごせる乾燥肉が袋に入っていた。


「何から何までありがとうございます。

この恩は一生忘れません。」


「あぁあぁ達者でな。どんな事が有っても諦めず生き抜くんじゃぞ。」


老夫婦と門番に一礼をし、エクスは歩きはじめた。





草原を抜け森に入る。

魔素を使い常時サーチをかける。


魔道具とは違い1km先まで調べる事が出来、常時監視してるので危険を回避出来るのだ。


森の中と言っても馬車が通れる道はある。

迷ってしまう事はなさそうだ。

しかし結構歩いたのだが体が疲れる様子はない。

魔力が細胞の疲れを取っているようだ。

祝福の日にはすぐに力尽きてしまったのに。

あの頭痛以来体が変わった理由は一体何なのか答えは出ずにいる。



少し広まった空間に出た。

火を焚いた跡があり、ここで一息入れる人がいるのがわかった。

通常開けた場所でないと何処から襲われるか分からないので、

開けた場所で休むのが一般常識だ。

しかも森の中では次の休める場所が何処に在るか分らないのが普通であろう。

領都の冒険者が使ってる場所なら次の開けた場所までの休憩場所として

丁度良い位置に在るのかもしれない。

だからこのような誰かが休んでいた場所では休むのが鉄則なのだ。


「日も高くなってきたし、そろそろ食事にするか・・・」


老夫婦から貰ったお弁当はアイテムバッグに入れるフリをして

インベントリに入れてある。

温かいままのお弁当を口いっぱいにほうばった。

「お・・・おいしい・・・」

冷えていた体に暖かな食事が染み渡る。

自分が冷えていた事、お腹が空いていた事にその時気付いたのだった。

生きてこの国を出るために全てを考えるのをやめていた。

ただ前だけを見て「前へ、前へ」「歩け、歩け」と心を閉ざしていた。


考えてみると日の出から昼頃とすると6時間ほど歩いていた事になる。

通って来た道の事はほとんど覚えていない。

晴れていたのか曇っていたのかさえ覚えていない。

心に余裕を持たないといけない。何か大事な事を見逃してしまう前に。

それが生き抜く事にも繋がっているはずだから・・・。


30分ほどの食事休憩を終わらせ、火を消し出発する。

休む前とは違い周りの雰囲気が鮮明に感じる。

感覚が全方位に鋭く伸びる感じだ。



少しづつ森は表情を変える。

風通しの良い爽やかな森から、淀んだ風が魔素を閉じ込めるような重い森へ。

多分これは、いつか私が考察した魔素溜まりの状況に思える

とすれば・・・次は・・




魔獣の出現だ








読んで頂きありがとうございます。

つなぎ回っぽくなってしまいました。

早くエクスにスローライフさせたい今日このごろ。

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