ep10 5歳の祝福①
5歳になったエクスは祝福を受ける為に教会に行く。
前編となってます。
王国歴78年1月
「エクス〜準備は出来たか?」
ロイはエクスの方を見ながら問いかけた。
「もうちょっと待って。ステータス鏡を見てくる」
ステータス魔法が使えるのはナイショなので、それらしい行動をする。
ステータス鏡を見るのは何時ぶりだろう。
そこにもバグった数値が現れる。
「・・・・・・。」
(今日このバグは治るのだろうか・・・)
笑顔を絶やさぬエクスの目は少し伏し目がちに不安を宿していた。
今日は5歳の誕生月だ。
2年前のアルフ兄さんの祝福の時から今日まで3回しか家から出た事がなかった。
半年に一回ほどのペースだ。
アルフ兄さんによると他の家の子はもっと出掛けてるらしい。
どうやら我が家は家の1階で店をしていて、夫婦で経営。
立地が良く、お手伝いを雇うぐらいには繁盛している。
仕入れから管理、接客までを幅広くこなしており、なかなかのやり手なのだ。
そんな我が家では仕事以外で出かける事は殆ど無かったのが原因なのだろう。
ただ・・・アルフ兄さんによると、
「エクスは話しかけてもブツブツ言いながら何かに集中してるから
お散歩にも行けないの」
と母さんは言ってたらしい。
いや・・・もうチョット強引に言ってもらえたら気付けたと思うのだが・・・
アルフのお下がりの一張羅を着て緊張気味のエクスと
ロイ、マリー、アルフの4人で教会前広場に歩いて向かう。
「エクスももう5歳になったのね」
(もうじゃなくてやっとだよ)
「アルフの時も思ったが、子供は大きくなるのが早いな。」
(大きくなるのが早いんじゃなくて時間が過ぎるのを早く感じてるだけでしょ)
「僕なんかもう7歳だよ」
(いやいや何に対抗心燃やしてるの?!)
「そういえばロイ、寄進持った?」
(信用してあげて)
「ああポケットにちゃんと・・・この話アルフの時もしなかったか?」
(ウンウンおもいっきりデジャブだよ)
「そうだったかしら」
(分かって言ってるよね)
3人の会話に心でツッコミを入れるエクス。
10分ほど歩くと少しづつ親子連れが増え始めた。
キラキラした目で歩く5歳の少年や3歳7歳の女の子達。
どんよりした目で歩く5歳のエクス。
「どうしたエクス、楽しみじゃないのか?」
「い、いや楽しみなんだけど・・・」
「なんだけどどうしたの?」
「まだ着かないの?僕もう疲れたよ」
3人は顔を見合わせた。
そうである、家から出ないニート人間が10分以上歩くのは
未知の領域であり狂気の沙汰だ。
筋肉は萎え(元から付いてない)カモシカのような白く細い足は
産まれたての子鹿のようにプルプルしていた。
3人はエクスを見て爆笑したのだった。
「父さん母さん。あそこ左に曲がると公園が有るから休んでいこうよ。」
とアルフが提案する。
ああ御兄様、砂漠を歩き続けるジプシーにオアシスを教える神のようだ。
少女漫画なら御兄様を見る目は星いっぱいのキラキラになっているでしょう。
手を引き誘うアルフに
「そうね。まだ時間は有るし休んでいきましょう」
と言い、マリーとロイは目配せをするのだった
公園のベンチに腰掛ける。
「「「よっこいしょ」」」
アルフ以外の3人から無意識に発せられる言葉にアルフが反応した。
「3人してよっこいしょっておじいちゃんみたい」
おじいちゃんと言われ愕然とするロイ
おばあちゃんですらない事に愕然とするマリー
この歳で言ってしまった事に愕然とするエクス
おちゃらけて立ったり座ったりしながら
「よっこいしょ」を連呼するアルフ
3人はバツが悪そうに顔を見合わせた。
10分程休み4人は教会へ向かう。
目の前には2年前に見た立派な教会がそびえたっていた。
だいぶ人が集まっており、受付の列ができている。
「ちょっと遅くなったから混んじゃったね」
受付の列を見てロイはつぶやいた。
「もう少し早く出れば良かったかしらね」
顎に手を添え答えるマリー
「いやいや、休まないと無理だったよ」
両手を横に振り、アピールするエクス
「それを踏まえてもう少し早くってことよ」
人差し指を立て横にふるマリー
「エクスは体力を付けないとな」
少し笑った困り顔のロイ
「5歳になったからこれからよね」
軽いフォローを入れるマリー
最後尾に並び、ゆっくり流れる列についていく。
「お〜いアルフ〜」
列の外で子供が集まっていて、その中の一人が声をかけてきた。
どうやらアルフが遊んでる友達の一人のようだ。
その子も身内の付き添いで来たのだろう。
する事も特に無く、少し暇そうだったアルフは
「みんなと遊んできていい?」
と、ニコニコ顔で聞いてきた。
祝福が終われば帰るだけなので、
「いいわよ。あまり遅くならないようにするのよ」
マリーの言葉に
「は〜い。行ってきま〜す。」
と、嬉しそうに走って行った。
しばらくしてようやく受け付けが終わる。
「ここから一人で広場に行って感謝の祈りをするんだ
神父さんの言葉をそのまま続けて言えばいいだけだから。」
「わかった。続けて言えば良いのね。」
「そうよ、終わったら鐘が鳴るから。
そしたら祝福がもらえるわよ」
「うん、行ってくる。」
別に貰えなくても構わないからステータスを直してくれるといいけど・・・
切実に願うエクスだった。
読んで頂きありがとうございます。
エクスのステータスがどうなるか、後編も合わせて読んで頂けると嬉しいです。