9話 魔王の鎧
メリッサは、両手に光の玉を作り出し、次々と魔王に向かって投げ付けて行く。メリッサの素早く無駄のないフォーム、見慣れた光景に執事は
執事「まさか、日頃の癇癪がこんな所で役に立つとは・・」
と感心していた・・・
光の玉は次々と命中し膝を付く魔王、更に光の玉が襲い掛かる・・
魔王「・・・クッ・・」
魔王は、眩しい光の中で身動き出来ず、自分の力が消えて行くのを感じていた・・・その様子に執事は
執事「魔王の力は勇者の光で力を失ってしまうのです!力はもう沸き上がって来ませんよ!鎧を脱いで魔王の力を返すのです。今ならまだ、あなたを赦す事が出来ます。」
魔王「・・・・」
魔王は素直に諦め、敗けを認めたのか鎧を脱ぎ出す・・・兜を脱いだ魔王に執事とメリッサが驚きの顔を見せた。魔王の正体は、まだ12、3歳の子供だったのだ!
メリッサ「まだ子供じゃないの!あなた、なぜ魔王になろと思ったの?」
魔王「敵討ちだ!」
執事「敵討ち?」
魔王「お前達は、ギンガスの兄ちゃんを殺したろ!兄ちゃんは貧しかった俺によく食い物を恵んでくれてた・・・魔王になって、兄ちゃんを追放した魔界とお前達に復讐したかったんだ!」
メリッサ「復讐だって・・」
メリッサは横目で執事の顔を見た・・・執事は、溜め息を付き
執事「ギンガスは、悪さばかりして魔界から追放され、人間界でも悪事を働いていた。そして、魔物とって最も守るべき規律、上の階級の者に従わなかったから私が裁いたんだ。」
魔王「兄ちゃんは、貧しい子供には優しかった!俺達のヒーローだったんだぞ!」
執事「ヒーローでも悪事を働けば裁かれる!子供でも善悪をしっかりと見極め悪い事はしない事です。」
執事が、そう言って見逃してやると走って逃げて行く・・・背中を見送るメリッサ
メリッサ「あんな子供が魔王になるなんて・・」
床に置かれた魔王の鎧を感慨深く見詰める執事・・・かつて、この鎧を装着して暴れ回った頃の事を思い出していた・・・
メリッサ「この鎧を着れば魔王の力を得る事が出来るの?」
執事「そうです。この鎧には、歴代魔王の力が宿っていて、その力を使う事が出来るのです。」
メリッサ「私が着ても力が使える?」
執事「さぁ・・試して見なければ分かりませんな・・」
今もなお勇者の光を放ち、好奇心に目を輝かせるメリッサは鎧を見詰め・・
メリッサ「試して見てもいいかしら?」
執事「・・・止めた方が宜しいかと・・鎧の中は、メチャクチャ臭いですぞ・・」
メリッサ「そ・そうなの・・」
メリッサは、一歩下がって距離を取った・・・
執事「ハハハッ冗談ですよ、お嬢様!魔王の力は恐ろしく強力なのです。意識をも変えてしまいますので気軽な気持ちで試して、取り返しの付かない事態を招いたら大変な事になります。」
メリッサ「そうね・・・子供の魔王でも勝てなかったものね・・・」
メリッサの言葉が執事にグサッと突き刺さると、思い出した様に、ちぎれた腕が痛み出した。
執事「アイタタタタァ~ッ!」
メリッサ「だ・大丈夫・・」
執事「大丈夫に見えますか・・・」
痛そうに膝を付いた執事だったが、こうして魔界に平和が戻り、人間界も落ち着きを取り戻す・・・