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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
動乱編
93/93

#93 プリム王女救出準備

翌朝、次郎吉たちは朝食をご馳走になり、昨夜話した作戦の詳細を詰めていく。とはいえ泥棒の手順はほぼ決まっている。まず砦に侵入。これは昨日話した通り、地下からの侵入を目指す。ただその上で陽動が必要という結論となり、この陽動役にキャリコが立候補した。


次は探索。プリマ王女の正確な監禁場所を見つけないといけない。要塞なので牢屋はいくつもあるが重要人物でしかも牢屋に王女を入れるのは考えられないというのがリガンド公爵の意見だ。まぁ、実際に無礼極まりない行為ではある。


更に次郎吉視点でも同じ結論を出した。これは実際に王女救出を考えた場合、牢屋は真っ先に調べる場所だ。そこをお宝を隠すとは泥棒目線でも思えないかったのだ。


となると牢屋ではなくどこかの部屋に監禁されていると思うのが普通。しかも守りやすい場所だ。ここで次郎吉は重要なことを聞く。


「この要塞の指揮官のことは知っているのか?」


「残念ながらロイゼン司令官とは直接的な面識はない。良くない噂は耳にするがね」


「例えばどんな噂なんだ?」


「戦略は残虐性が高く、かなり欲深く自分優先の司令官らしい」


これを聞いた次郎吉は要塞の地図を指差す。


「この要塞で一番守りに適しているのが要塞の真ん中にあるこの金庫室。この金庫室の更に奥に部屋があるからここが一番硬い場所だ」


「お宝を隠す場所としては当然の選択よね。ただこの部屋に王女を隠すのかしら?」


「可能性は高いが王女の世話を考えると非常に面倒臭い場所ではあるな。しかも残虐性が高い性格の悪い奴ならまずここにはお宝を隠さない」


監禁するということは王女のお世話をして生かさないと監禁は成立しない。要塞にある超大型の金庫室をご飯を上げる度に開いて渡さないといけないとなると非常に手間がかかる。それだけセキュリティが頑丈な証拠だが、その分セキュリティを通るために手間暇がかかるのが欠点となる。


しかも次郎吉が真っ先に指摘したようにここもお宝を狙うなら真っ先に狙う場所だ。その上、司令官が正確が悪いなら正攻法や安全策はまず取らない。


「じゃあ、鼠小僧はどこにお宝があると思っているのかしら?」


「ここだ」


次郎吉が指差したところは作戦指示を出す指令室の前の部屋だった。


「ちょ、ちょっと待ってよ。こんなところに王女様を監禁しているっていうの!?」


「侵入者が現れた場合、自分の近くにいて、かつ狙われ辛い場所と考えるとここが最適じゃないか? 指令室にいることも考えたが王女に指令室の中の情報を渡すとは思えないからな。ここが結構相手の性格も考えた上で最適解だと俺っちは思っている」


自分の性格の悪さを理解しているならわざわざ王女にそんな自分の姿を見せるような真似はしないだろう。自分優先なら尚更だ。


「確かに話を聞いた感じだと自分の近くに置いておきたいと考えるタイプではありそうですな」


「普通の部屋だが窓はない。こうしてみると不自然にも見えて来るな」


「それが罠なら向こうの読み勝ちだな。ここが外れとなると司令官の部屋の中か司令官の部屋の近くのこの部屋とかになる」


「自分の部屋に幼い王女を監禁していたら私はこいつをなんとしても死刑に処すぞ」


リガンド公爵の目がガチになり、メイドのその意見に深く頷いたのは言うまでもない。


次は救出。王女に手錠や足枷、首輪のソーサリーファクトがあったならこれを解除して王女を自由する。これは次郎吉ならお茶の子さいさいだ。


最後に脱出。これは雷速のソーサリーファクトで空から手っ取り早く逃げ出したらいい。バルバリス王国の兵器がどんなものかは知らないが雷速で逃げ出したら奴を正確に狙うのはほぼ不可能だ。


兵器というからにはまず相手に狙いを定めなければいけない。この狙いを定める工程を雷速で動いている物体に狙いを定めるという行為が人間では不可能なのだ。兵器が雷速を超えた速度で動いて人力ではなく機械で正確に標的を捉えて引き金を引く工程が必要となる。


そんなものは現代にもないし、この世界でも実現していない。まず光速を完全制御出来ないとこの技術は成立しないからね。


これが今回の仕事の大まかな流れとなる。次郎吉が見つかるなどトラブルはどうしても発生する可能性はあるがこの流れは基本的に変わることはない。


これを聞いたリガンド公爵たちはプリマ王女を盗んだ後の詳細な動きを決めた。これで要塞から逃げ出した後の逃走ルートが確定した。


更に成功率を高めるためにリガンド公爵が王都で騒ぎを起こしてくれることとなった。これで王都にいるウィンバース宰相と王都にいるウィンバース宰相の軍隊を動かせないようにするわけだ。それをしてくれるとプリム王女を盗み出すのも楽になると同時にその後の逃走も楽になる。


ただそんなことをすると当然ウィンバース宰相の怒りを買うことになるだろう。そのことに対して次郎吉が聞くとリガンド公爵ははっきりと言う。


「元々あいつらとは敵対しておるのだ。今更怒りを買おうともプリマ王女を国外に脱出させることのほうが重要。何せ彼女が正当な王位継承者だからな。彼女がいなくなればウィンバースの発言力に強制力は消滅する。逆に彼女を意のままに操られれば私たちは従うしかない。それだけ王の力は絶大なのだ」


ウィンバース宰相がプリマ王女の両親を処刑し、プリマ王女だけを残した理由がこれだ。因みにプリマ王女が死亡すると次の王位継承権はリガンド公爵となり、リガンド公爵の家族が王位を継承していくこととなる。


そこを次郎吉は指摘したがこれに対してもリガンド公爵の答えははっきりしていた。


「老い先短い身で今更王の地位など何の興味もない。私の息子たちが王位に興味があるというなら父として協力するのもやぶさかではないが私の息子たちも王族になるのは反対でね。王族になるより自由に生きたいことを望んでいる。しかし私も私の息子たちも全ての国民に恩がある。私たちが普通に生活しているのは彼らのお陰だからね。その彼らの命が危ないなら立ち上がらなければならない。それが公爵の役割だと私は思っているのだよ」


王族も政治家も国民からの徴収で生活している。そういう意味で全ての国民に恩があると言えるのだろう。そして今、その恩を返せる出来事が発生し、今こそ命を賭けて動かないといけないという公爵の覚悟を次郎吉は知り、その言葉を信じることにした。


王族になるより自由に生きたい。この言葉に公爵家全員の本音が乗っていると次郎吉は感じた。王族になりたくないならプリマ王女の味方をするしかないって感じだ。幼い王女からすると残酷な話にはあるがその王女がウィンバース宰相と戦うというなら公爵家全員が味方をしてくれるだろう。


次郎吉はこの話を聞いて改めてリガンド公爵は今回の一件に関しては味方と判断し、次郎吉たちは準備を進める。ここで次郎吉は昨日手に入れたバルバリス王国の監視のソーサリーファクトについて改めてじっくり調べることにした。


「なるほど。構造的には魔道車と似ているな。複数のソーサリーファクトを組み合わせて作製した空中から監視するソーサリーファクトか。風属性の飛行魔法を使ったソーサリーファクトと光属性の撮影魔法、を利用したソーサリーファクト、熱探知のソーサリーファクトを組わせてこそのソーサリーファクトだな。バルバリス王国がフェルに固執したわけがわかるぜ」


次郎吉に言わせると技術的には魔道車のパクりと言っていい代物だ。それと同時に同じようなソーサリーファクトが大量生産されている可能性が出てきた。幸い次郎吉が開発したソーサリーファクトを破壊するソーサリーファクトに対して対策はされていないようなので初見ならこちらが有利だと判断する。


「待てよ? 大量生産? くくく。なるほど。それならお前たちの自慢のソーサリーファクトを逆に利用させて貰うとするか。そこのメイド。ソーサリーファクトを作れる施設を知っているか? 後、俺っちが今から言うものを追加で揃えてくれ」


「分かりました。補給物資の追加と施設の手配をしてきます」


「頼む。流石公爵のメイドになると一人一人が優秀だな」


リガンド公爵の補給がその日の昼に届いた。流石公爵だ。動きが圧倒的に速すぎる。お陰で次郎吉はその日の内にソーサリーファクトの施設で作業し、翌日の夜には地面を掘るためのソーサリーファクトを持って早速行動を開始する。


というのも結構な距離から掘る上に湖のすぐ真下を通る水の重さでトンネルが崩れてしまう。そうならないために深さも大切なのだ。結果的に事前の準備はしないと時間が足りないというのが現状となっている。


そんなわけで次郎吉は単身夜に出歩き準備を進めることにした。流石に目的場所まで距離があり、透明のソーサリーファクトで姿を隠しながら動くことになるので、結構な時間をかかる結果となった。しかしこれは必要な準備時間だ。


次郎吉が目的の場所に辿り着く手前で空を飛び回る監視のソーサリーファクトを目視で確認する。そして次郎吉は見事にカメラの動きを完全に読み切り、監視を潜り抜けて見せた。


先に監視のソーサリーファクトの配置が分かったら相手がどう監視しているのが大体予想が出来る。ここら辺は次郎吉の泥棒としての技術だ。それと同時に相手の動きを次郎吉は理解する。


(ソーサリーファクトで見張りが出来るなら人間の監視は最小限にするよな。相手からしたら攻めてきても向かい打てばいいだけの話だし、厄介な事になった)


侵入される前に撃退出来るならそれが一番いいが侵入されたとしても侵入者を捕まえてプリマ王女を盗まれなければいいというのが相手の立場だ。一方で次郎吉たちは侵入してプリマ王女を盗み出すしかない。今回の動きで侵入も困難だが侵入した後も敵がわんさかいることがほぼ確定したと言っていい状況だと次郎吉は理解した。


それでも次郎吉が泥棒を諦めることはない。次郎吉は湖の反対側にある大きな木が多い雑木林で目当ての物を見つけた。それは大きな樹洞(じゅどう)がある巨木だ。本来なら動物の冬眠や雨宿りに利用される代物だが今回はトンネルの入り口にさせて貰う。


樹洞ならわざわざ中を覗き込まない限り見つけるのはかなり難しいと判断した。そしてここからはバルバリス王国の最新の採掘のソーサリーファクトの実力が発揮される。


(掘る太さと距離を入力し、掘る向きはソーサリーファクトの設置向きで決定する)


次郎吉が説明通りに入力し、ソーサリーファクトを地面に対して斜めに置くとソーサリーファクトのスイッチを押す。するとその方向に設定した大きさの穴が完成する。


次郎吉は用意したロープをセッティングするとロープを持ったまま傾斜を滑り落ちると砂に着地した。流石に土や石、鉱石などを消滅させるようなソーサリーファクトは存在しない。土を掘るなら掘った際に残るはずの土は必ず残るのだ。ただ掘った穴に掘った物が残るなら掘ったことになるはずがない。


ではどうするのか?この最新のソーサリーファクトは木の根も土も石も鉱石も全て砂に変えることで一瞬のトンネルを作ることを可能にしたソーサリーファクトだった。砂は土や石、鉱石より圧倒的に小さい。なので地面の範囲内を全て砂に変換するとそこには空洞が出来上がるのだ。


(大した技術力だ。発想も俺っちでは考えつかない。少なくともシルファリッド王国はソーサリファクトの技術では間違いなくバルバリス王国に負けているな。というか普通に泥棒に使えそうなソーサリーファクトだから報酬として貰っちまうか)


ちゃっかりソーサリーファクトを狙う次郎吉である。その後、次郎吉は砂を電磁誘導を利用して一気に樹洞まで引き上げて見せた。ここら辺は次郎吉の発想力が勝っていることを次郎吉は知らない。


最新の採掘のソーサリーファクトの実力と侵入路を決めれたところで次郎吉は用意した置き土産を置いて引き上げる。


これでおおよその侵入するための時間も把握出来た。後はしっかり全ての準備を整えた上で仕掛けるのみだ。リガンド公爵の屋敷に帰った次郎吉はそのことを伝えると正式な作戦実行日と次郎吉がここで決定する。犯行の日は今から一週間後の真夜中だ。

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