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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
64/65

#64 新たなハッキング

ゴンドーラ刑務所は突然の何者かの攻撃を受けたことでパニック状態となる。それも無理はない。囚人が脱獄を狙ったことは過去に何度もあったが流石に外部の人間が刑務所に攻撃を仕掛けるという事例は今までに起きたことが無かった。


「何事だ! 先ほどの爆発音はなんだ?」


「所長! ご報告いたします! 先ほど魔道車に乗る何者かから攻撃を受けました」


「やはり外部からの攻撃か……被害は?」


「結界が攻撃を防いでくれたおかげで被害はありません。現在見張りを含めた看守数人が攻撃を行った魔道車を追跡しています」


ゴンドーラ刑務所の中央管理室で報告を受けたゴンドーラ刑務所の所長の判断は早かった。


「今すぐ看守たちを戻せ。そして残っている看守たちは刑務所内を巡回させろ。寝ている看守たちも全員叩き起こせ。全員が刑務所に集まった時点で全員の身元確認を行う」


「へ? わ、わかりました!」


「でも、よろしいのですか? 攻撃した人間をみすみす逃がすことになりますが」


「敵の狙いは陽動だ。本当の狙いがこのゴンドーラ刑務所であることは攻撃した時点で明確。ならそいつを潰すことが最優先事項になると思わないか?」


所長はファリース侯爵の執事と次郎吉の作戦を完全に見切っている。しかしそんな所長に部下が発言する。


「所長の言うことは分かります。でも、ここはゴンドーラ刑務所ですよ? 侵入など出来るはずがありません。実際に各防犯のソーサリーファクトは正常に作動しています」


「誤作動を起こした形跡はなかったか?」


「それはありません。攻撃を受ける前からソーサリーファクトの画面を視線から外したことはありませんでした」


「そうか……だが、相手もゴンドーラ刑務所が鉄壁であることは知っているはずだ。それでも陽動を仕掛けてきたということは相手も何かしらの自信か狙いがあって仕掛けてきたと考えるのが普通。ならば万が一のことを考えて動かないと足元を掬われるのは我々になるぞ」


流石刑務所のトップを任せれる男だ。得体の知れない敵に対して最大の警戒をしつつ油断も隙も見せるつもりはないらしい。


「防犯のソーサリーファクトの映像から目を離すなよ? 怪しい看守や人間がいればすぐに報告しろ。それから結界のソーサリーファクトのデータを総チェックせよ。怪しいデータがあればすぐに俺に報告しろ。後、ソリスの本部と国に現状の連絡と応援を寄越すように連絡を入れろ」


「「「「は!」」」」


所長の的確な指示を受けて、部下たちが動き出す。しかしこれを聞いた副所長が物申す。


「ちょ、ちょっとお待ちください! 所長! 国にまで応援を頼むのですか? 流石に過剰ですよ。ここにどれだけの戦力がいると思っているんですか」


「だからなんだ? お前は侵入者に対して慈悲を与えるつもりか? そんなものは今すぐ捨てろ。我々はこの国で捕まえた犯罪者を牢屋に閉じ込めることで市民の平和な生活を守る責務がある。故にそれを守るために全ての犯罪に対して徹底的に潰す必要があるのだ。わかったか?」


「は、はい! わかりました!」


これでゴンドーラ刑務所から王都にいるソリスの本部と国の騎士たちに対して出動命令が下される。これは次郎吉とファリース侯爵の執事が予想よりかなり速い要請出動だった。


ソリスは比較的要請しやすい関係だが、国の騎士団に救援要請を行うというのは実は結構ハードルが高い。何せ彼らの本来の仕事は王族と国民の命を守ることだ。ソリスたちとは仕事の範疇が明らかに違う。だからこそ本来は自分たちの仕事は自分たちが行うというのが普通。


しかし今回、刑務所に対して兵器のソーサリーファクトが使用されたことを加味にして通常のソリスの装備だと対応不可能な可能性が浮上したことで騎士団への救援要請が通った。ソリスもまた国民だからね。ソリスに命の危険があるなら騎士団には出動する義務がある。


そんなわけでゴンドーラ刑務所側の対応としてはほぼ満点の動きが出来ている状況だ。しかし今回に限って言えば相手が悪かった。


(……よし。今回の獲物発見)


次郎吉は既にゴンドーラ刑務所内に侵入しており、怪盗キャリコが捕まっている牢屋の場所を指輪タイプの召喚獣のソーサリーファクトと同じく指輪タイプの対象を透明化するソーサリーファクトを駆使して見つけていた。


次郎吉がゴンドーラ刑務所内に侵入したタイミングは看守たちがファリース侯爵の執事が運転する魔道車を見つけたタイミングだ。あの時、看守たちの視線が魔道車に注目したせいで新調したほっかむりのソーサリーファクトで透明となり、歩いて刑務所に接近した次郎吉に気付けなかった。


そして攻撃が行われた先に防犯のソーサリーファクトが発動したことで次郎吉は新調したハッキングのソーサリーファクトを使用して、ゴンドーラ刑務所内に誰にも気付かれることなく侵入した。


ゴンドーラ刑務所の結界のソーサリーファクトは最新のソーサリーファクトで次郎吉の以前までのソーサリーファクトなら対応出来ていた。実際に所長がソーサリーファクトのデータを調べるように指示したのはハッキングを警戒しているからこそ出る言葉と言える。


しかしデータを総チェックしても次郎吉が防犯のソーサリーファクトに登録された情報は出てこなかった。それなのに次郎吉は見事に防犯のソーサリーファクトを堂々と入口から入ることですり抜けた。これが次郎吉の新しいハッキングのソーサリーファクトの実力だ。


まず最新の防犯のソーサリーファクトは登録者以外の者が結界に直接触れただけで警報がなるようになっている。これで結界に手で触れることはおろかソーサリーファクトで触れても警報がなる仕組みだ。


ただこの商品の謳い文句には抜け道があることに次郎吉は気付いていた。防犯のソーサリーファクトは警報対象を正確に設定しないといけない欠点がある。これに漏れがあると対象設定以外の物を使われた場合、反応することが出来ないのだ。


それを理解した次郎吉が今回利用した技術はずばり魔力ラインの技術である。ハッキングのソーサリーファクトから魔力ラインを防犯のソーサリーファクトに接続させることでハッキングを可能にした。


魔力ラインというのは人でもなく、ソーサリーファクトにも該当しない。魔力ラインは魔力が流れる管という物だ。故に直接接続しても警報対象から外れているので、防犯のソーサリーファクトが発動することが無かった。


しかしこのハッキングは今までのハッキングより遥かに難易度が高い。魔力ラインの操作はもちろんのこと魔力ラインを上手く相手のソーサリーファクトに接続する技術に加えて遠距離でハッキングの操作をしないといけない。


そんなことは普通の魔法使いではまず不可能な芸当だ。凄腕の魔導師や魔道技師でようやく可能な芸当となっており、ソーサリーファクトの知識が無いなら凄腕の魔導師でさえ扱うことが不可能なソーサリーファクトとなっている。


流石に世界で初めての技術を事前に予測して防犯のソーサリーファクトのシステムに組み込むことは出来なかった。しかし不可能ではない。防犯のソーサリーファクトの作製者がその可能性に気付けていれば防犯は可能だった。つまり今回の犯罪のソーサリーファクトと防犯のソーサリーファクト対決は次郎吉の勝ちと言える。


更に次郎吉のデータがないにも関わらず防犯のソーサリファクトをすり抜けた理由だが、これは次郎吉がデータの改善という手法に切り替えたのが原因だ。具体的に次郎吉が何をしたかというと既に登録されている人のデータを次郎吉のデータにすり替えるというとんでもない裏技をやってのけてしまった。


具体的にソーサリーファクトの中でどういう判断がされているか見るとわかりやすいだろう。顔や姿は刑務所の中にいる人だが、顔や姿のデータが次郎吉のデータになっているという状態だ。


ソーサリーファクトは機械なので顔や姿を見た目で判断するのではなく登録されている人のデータで判断する。つまり顔や姿の見た目は違うが情報が一致しているので、その人は登録されている人物だと言うことになってしまうのだ。


(聞いたことがある名前があるな。こいつの情報を書き換えるか)


この改変の際に次郎吉は自分と怪盗キャリコの二人分の情報を改変した。これは脱獄する際に恐らくハッキングしている時間がないからだ。事前にファリース侯爵の執事から教えてもらっていた怪盗キャリコの情報を防犯のソーサリーファクトに登録させて怪盗キャリコも次郎吉同様に防犯のソーサリーファクトをすり抜けれるようにした。


しかもこの改変は中央管理室でおかしな情報を調べてもまずすぐに見つけることは不可能となっている。何せ刑務所で働いている人数は看守から防犯のソーサリーファクトを管理している魔道技師、果ては清掃員なども含めて1000人以上。その中からデータだけが改善された人間を二人見つけることは不可能だ。


顔写真が変わっているなら非常に見つけやすい。しかし顔写真を次郎吉は変えていないので、不正データを見つけるためには一人一人のデータを正しいデータを比べて調べていくしかない。


この事実を知ることになる防犯のソーサリーファクトを担当する魔道技師は絶望することになるだろう。考えただけで頭が痛くなる仕事だ。そこらへんも次郎吉はよく理解して嫌がらせをしているのだから本当にたちが悪い犯罪者だと言えるだろう。

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