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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
63/64

#63 怪盗キャリコ脱獄作戦、開始

次郎吉が確実に準備を進めて行っている間にも時間も同じように進んで行き、遂に怪盗キャリコがゴンドーラ刑務所に送られた。その情報は残念ながらファリース侯爵の執事も次郎吉も新聞でしか知ることが出来なかった。


「ゴンドーラ刑務所に入れられる前に盗めるならそれが一番良かったんだがな」


「相手も簡単にはいかないということですね」


「そういうことだ。これで当初の予定通りになることが決定した。プラム」


「分かっています。わたしくのことはご安心ください。全て予定通り実行して見せます」


次郎吉はプラムを抱き寄せて、頭を撫でる。


「お前は本当に最高の女だよ」


「ありがとうございます。ですがその言葉は全てが上手くいってから言ってください。不安になってしまいます」


「確かにそうかもな。でもな? 不安に思うなよ。俺っちがミスすると思っていますのか? お前と一緒に作ったこれらがあるのに?」


次郎吉が視線の先には机の上に完成したソーサリーファクトがあった。次郎吉の言葉を聞いたプラムは次郎吉の返す。


「確かに不安を感じるのは旦那様に失礼でしたね。ただそれでも旦那様の無事を祈るのはメイドの仕事だとご理解してくださいませ」


「ふむ。仕事ならしょうがないか。なら俺っちはプラムの仕事が失敗に終わらないように頑張らないとな」


「はい」


そんな会話をして次郎吉たちは更に来たるべき作戦実行日に向けて準備を進めて、ファリース侯爵の執事と作戦実行日と怪盗キャリコ脱獄作戦の詳細を詰めて、その作戦に向けての準備を加速させていく。そして全ての準備を終えて作戦実行日を迎える。


「それじゃあ、行って来る」


「はい。行ってらっしゃいませ」


「あぁ。さぁ、刑務所の看守と犯罪者たちよ。新しく生まれ変わった鼠小僧がやって来るぞ」


次郎吉は新しくなったほっかむりを装備して家を出る。家を出た次郎吉は待合場所のパステリスの町の酒場までグソウさんに送ってもらい、ファリース侯爵の執事と合流する。


「お待ちしてました。準備はよろしいですか?」


「あぁ。やれることは全部やれた。後は泥棒を成功させるだけだ」


「流石でございますね。ではいきますか」


「あぁ」


次郎吉とファリース侯爵の執事は店を出て、ファリース侯爵の執事の魔道車に乗ると次郎吉は目を輝かせる。


「これは……凄い! 凄いな! ははは! この乗り物は魔道車なんて名前の括りでいいのか? とんでもないぞ!」


「流石お目が高いですね。一目でこの魔道車の特別性に気が付くとは。今回の相手は魔法使いであり、ソーサリーファクト使いでもありますからね。それなりの魔道車をご用意させてもらいました」


「作戦を聞いたときは不安に思ったのが確かにこれなら問題なく作戦実行出来そうだな。最もソーサリーファクトがどれだけ優秀でも使い手次第だが」


「お任せください。私の実力、とくとご覧あれ」


こうしてこの世界では史上初めての刑務所に泥棒が盗みに入ると言う前代未聞の大事件の幕がいよいよ上がる。



ーーーゴンドーラ刑務所、時刻は深夜1時ーーー


「ふぅ……今日は寒いな」


「もうすぐ冬だからな。見張り番としては辛い時期だ」


「時期的にはついているよな。俺たち。時間は最悪だけどよ」


「昼間のほうが気が楽だよな。夜は何が起きるかわからな……ん? なんだ? あれ? 魔道車の光か?」


ゴンドーラ刑務所の見張りが最初に補足したのは一台の魔道車だった。


「この時間に魔道車? 大方、王都の貴族か政治家が不倫でもして夜中帰りしているところなんじゃないか?」


「あり得るところが笑えねーよ。でもさ。あの魔道車、真っすぐこっちに向けってきてないか?」


「……妙だな。所長や副所長は今日外に出ていたっけ?」


見張りの彼らからするとこの時間帯の魔道車が刑務所に来る理由は刑務所の関係者が外に出ており、夜に帰って来るケースしかありえない。逆に言うとケースがありえたため対応の遅れが発生した。


ファリース侯爵の執事が通常の魔道車にはない入力パネルを片手で高速入力すると魔道車に搭載されたソーサリーファクトが発動する。


ゴンドーラ刑務所に向けて電磁誘導のソーサリーファクトが発動し、その電磁誘導に反応したソーサリーファクトが結界を展開する。その結果、結界の複数の場所にマイナスの磁力場を作り出された。


そしてファリース侯爵の執事がトリガーを押すと魔道車のトランクがスライドして中に入っていた物を真上に複数射出する。するとその物体はプラスの磁力を宿していることでマイナスの磁力場に引き寄せられる。


結果、射出した物体はマイナスの電磁場に引き寄せられると結界にくっつく形となる。それを見たファリース侯爵の執事は仕上げのスイッチを押すと射出した爆弾が次々起爆した。


(本当に運転しながら兵器のソーサリーファクトを使いこなすとはな。流石ずっと王都のソリスたちを相手にしてきただけはある)


次郎吉はファリース侯爵の執事の実力に脱帽する。彼がどれだけ凄いことをしているかと現代で例えるとするなら戦車を運転しながら手動で目標地点をロックオンして引き金を引いているという超絶技巧だ。


戦車は本来、運転手と火器管制をする人に役割分担して操縦する。これは運転しながら目標をロックオンすることが非常に難しいからそういう仕組みになっている。


ゲームで戦車を操縦したことがある人なら一人で可能だと思ってしまうから知れないが現実では車の運転しながら360度見渡して正確に目標にロックオン出来るか考えて欲しい。運転している視界が360度回転している中、真っ直ぐ進むだけならまだしも可能かも知れないが曲がったり、真っ直ぐ進んだり、後ろに下がらなければならないとなると運転だけでもかなりの難易度だと分かるだろう。


それに加えて敵を発見した正確に目標をロックオンしなければならないとなると滅茶苦茶だ。だがファリース侯爵の執事はこれを運転しながらやってのけた。ソーサリーファクトの楽にはなっているがそれでも電磁場の発生場所の設定は手動入力だ。真っ直ぐ運転している状態だから普通と比べると難易度的には低いのかも知れないがそれでも動いている車と目標地点の距離を計算して正確にロックオンするというのは超絶技巧と言っていいだろう。次郎吉が評価するのも無理はないと言える。

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