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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
62/64

#62 プラムとの試作品実験

次郎吉は二週間をかけて手に入れたソーサリーファクトの解析が全て終了する。


「なるほど……そういう仕組みね」


「やはり魔法を消す仕組みは予想通りですか?」


「あぁ。魔法に宿っている魔力を吸収することで魔法を消滅させるっていう考え方は予想通りだった。マナでも同じことが出来るとは思うがマナは空気に含まれているからな。効率が悪い上に魔力をチャージする技術は既に開発されているから魔力を吸収する技術のほうが楽だし、効果的って考えたんだろう」


ここまでは次郎吉が今まで予想した通りの内容。ただ問題は発動している魔法からどうやって魔力のみを吸収するかだ。ここが次郎吉にはわからなかったが今回の解析で魔術式が判明した。


「使用された魔法の属性は闇属性。魔術式には引力を利用したみたいだな。魔術式には闇の障壁に当たった魔法から魔力だけを引力で取り出し、ソーサリーファクトの空の魔力バッテリーに流れ込むように組まれていた」


「魔術でよく似たことは出来るでしょうけど、取り出した魔力をどうするかが問題になりそうです。吸収した魔法を再発動させることはエルフにしか出来ないでしょうし、それをするならそのまま魔法を跳ね返したほうが効率的だと判断するでしょう。人間なら使えない魔力は外に捨てるしかないでしょうけど、それだと魔法自体を外されたほうが効率的に思います」


「まぁ、この手の代物はどちらかというと初見で相手の動揺を誘うタイプの代物だからな。実際に自分の魔術がかき消されたという事実が大切だから魔術に対する防御手段として覚えておいて損はないように思えるぜ?」


「そうですね。確かに防御手段の一つとして覚えておくのは良さそうです」


ここで次郎吉は思いつく。


「障壁で行けるなら結界でも同じ理論で行けそうだな」


障壁とは魔法使いが体に纏うバリアのようなものだ。基本的には薄いが魔術師によっては何枚も障壁を合わせて魔法に対する防御力を高める人がいる。結界との違いは規模だ。結界は空間を対象に貼られる障壁のことで通常の障壁は魔法使いの身体を対象に貼られる。


結界で魔力を吸収するソーサリーファクトを開発するためにはそれなりの大きさの魔力バッテリーを複数用意しないといけないだろうが実現は可能だと次郎吉は考えた。怖いのは管理だ。魔力バッテリーの魔力が一杯の情報で魔力が流れ込むとキャパオーバーを起こして魔力の大爆発を発生されることになる。


最も魔力を日常的に使い続ければあっという間に魔力が尽きてしまうので、町を守る結界に取り入れるなら魔力をどう管理していくかが課題に出てくることが予想された。


ここでプラムが当然の疑問を口にする。


「旦那様はこの技術は既に実用化されていると思いますか?」


「されているだろうな。ぶっちゃけ規模が大きくなっただけだ。他の国の事情は知らないが既に技術として完成させているバルバリス王国は確実に実用化されていると言っていいと思うぜ?」


しかもバルバリス王国は軍事大国だ。いずれ戦争が起きるなら魔法対策のソーサリーファクトは必須。だからこそ魔法無効化の技術が開発されたと言っていい。シルファリッド王国でこの技術が無いなら苦戦するだろうなと次郎吉は予想する。


これを聞いたプラムは魔霧の森のエルフたちを心配したので、次郎吉はこの情報をエルフに流すことを許可した


「よろしいんですか?」


「俺っちの技術じゃないし、バルバリス王国が困っても俺っちには関係が無い話だからな。別にいいぜ? 自分の仲間がまた攻撃されないか心配なんだろ?」


「はい。ありがとうございます! これで対策を考えられます!」


「対策も何も攻略は簡単だぞ? 物理で攻撃すればいいだけの話だからな」


次郎吉があっさりソーサリーファクトの攻略法を告げたことでプラムも次郎吉が言いたいことを理解した。


「なるほど。魔法で生み出したものなら打ち消せますが自然界に存在する物を操って攻撃する魔術の場合は意味がないんですね?」


「そういうことになるだろうな」


例えば大岩を浮かせて相手に投げつけたとする。この場合、魔術は大岩を浮かせる魔術と相手に向かって飛ばす魔術が発生している。この魔術を打ち消したところで飛んできた大岩は魔法で生み出した物じゃないので、消されることはない。しかも飛ばした時点で発生した力も自然界にある物理法則だ。


つまりこの攻撃を止めようとした人は確実に大岩に潰される結果となる。大岩が魔法や魔術で生み出していたなら打ち消せるけどね。


「魔術は創意工夫次第とはよく言ったものですね」


「本当にな。今はまだ広がっていないようだが、いずれ世界に広がると大変な時代になりそうだよな。魔法使いたちが結局物理に頼ることになるのか。それとも魔力バッテリーで吸収しきれない大魔術をぶっ放す時代になるのかわからない」


魔力バッテリーは種類によるが蓄積できる魔力の量には限界がある。それを超えると蓄積していた魔力バッテリーがぶっ壊れて大爆発を起こすことになる。これもまた魔法を吸収するソーサリーファクトの弱点と言えた。


これに対してプラムが意見を述べる。


「恐らく得手不得手があるので、取捨選択することになると思います」


「それはそうか」


大魔術を使えない人は物理に行くことになるし、大魔術を使える人は大魔術のほうに行くという話にはなる。次郎吉とプラムはいずれこの世界はそういう時代を迎えると思うのだった。


「さて、話はこれぐらいにしてこれから試作品の開発を始めるぞ」


「はい! 微力ながらお手伝いさせていただきます!」


全ての魔力を蓄電してくれるプラムの功績は微力どころではないのだが、次郎吉はそこには触れず、次郎吉オリジナルのソーサリーファクトの開発に乗り出した。


そして次郎吉が開発したソーサリーファクトは手袋タイプのソーサリーファクトと長いコートタイプのソーサリーファクト、更に指輪タイプのソーサリーファクトの三種類を用意した。


「よし。正常に動いているな。後は実験あるのみか」


「本当にいいんですか? もちろん手加減はしますけど」


「装備した状態で使用すること前提で組んだからな。誰かがしないといけないとなると俺っちしか適任者がいないんだよ」


何せ次郎吉は魔法が使えず、プラムは魔法が使えるのだ。この役回りは当然と言える。そんなわけで二人は村から遠く離れた丘で実験開始する。プラムが自分の手の上に火球を作り出した。


「来い」


「行きます! えい!」


プラムが火球を投げつけて、次郎吉は魔法を打ち消す手袋を火球に向けて構える。すると魔法が一瞬止まった後、紫の閃光と共に消滅する。結果的にはまるで素手で魔法を消したように見える。


「一応は成功だな」


「お見事でございます! 旦那様!」


次はコートタイプのソーサリーファクトで実験する。こちらでは次郎吉はノーガードで魔法に対して受けて立つ。コート全てに障壁が張られている魔術式だからこそ出来る代物だ。結果は同じで成功した。


最後に指輪タイプのソーサリーファクトを試す。こちらは指輪の宝石の空間に闇の結界を展開して吸収するタイプのソーサリーファクトだ。こちらも無事に成功したが次郎吉としては難問にぶち当たる。


「どうかしましたか? 旦那様?」


「いや。魔力を吸収するのはいいんだが出来れば吸収した魔力を別のソーサリーファクトの発動に魔力を回せることが理想だろ? けどそれは相手がどんな属性の魔法を使うか次第だから上手くはいかないよなって思ってな」


例えば相手が闇の魔法使いだったら闇の魔力を吸収することで魔力を吸収するソーサリーファクトを理論上は無限に使えることになる。どうしてもソーサリーファクトも機械なので経年劣化には耐えられないから無限とまでは行けないけどね。


同じようにコートのソーサリーファクトも透明化するソーサリーファクトの魔力消費を補填出来るならそうしたいと考えたことで作られた。しかしそれをするためには相手が光属性の魔法使いじゃないといけない。ここらへんが非常に難しいところだ。


そして指輪のソーサリーファクトも一つの弱点を改めて浮き彫りする。それは魔力バッテリーの貯蔵量の問題と魔力バッテリーに蓄積できる魔力の属性は一つにつき一属性までという問題だ。


魔力バッテリーの貯蔵量の問題は指輪のような小さいソーサリーファクトだとどうしても魔力バッテリーもかなり小さいものになる。小さい魔法なら打ち消せるがちょっと大きな魔術を使われるとあっという間にキャパオーバーを起こして壊れる上に相手の魔術が魔力を中途半端に吸収されたことでどんな変化が起きるのかわからないところが怖いという結論が出る。


そして魔力バッテリーの属性問題も課題だ。指輪なら全属性を持つことになり、コートなら裏側に全ての属性に対応した魔力バッテリーを搭載すればいい。問題は手袋だ。手袋を重ねるにしても限界はあるし、外に魔力バッテリーを露出させてしまうと種明かしをしているようなものなので不採用。


「結果的にはコートが一番よさそうだな。めちゃくちゃ重くなるだろうがそれでもそれぞれのソーサリーファクトと連結のしやすさを考えると一択な気がするな」


「重さならわたしくの補助魔術でなんとか出来ると思いますので、結構実用的な物になると思います」


「だな。手袋を籠手にするのも悪くはないが武器に見えるからな。ただ手袋も相手を混乱させる意味で作っておいてもいいだろうな。指輪も全種類作るか」


次郎吉の中では試作品の順位は上から順にコート、指輪、手袋となるのだった。


「はい! ところで旦那様? お身体は大丈夫ですか?」


「大丈夫なもんかよ。他の試作品の実験を終えたら風呂入って、今日はさっさと寝るぞ」


指輪の実験で近距離の爆発や魔法の直撃を受けたことで次郎吉は黒焦げ状態になっていた。


「はい! お身体流しますね!」


次郎吉の発言に笑顔で答えるプラムであった。

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