表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
58/65

#58 次郎吉の狙いとゴンドーラ刑務所

翌朝、次郎吉はコーネに結果を報告するとコーネが驚く。


「あんなに仕事嫌がっていたのに受けることにしたの!? しかも侯爵の全財産を放棄した!? え? ジロキチって馬鹿なの?」


「俺っちは大馬鹿だよ。今更気が付いたのか? 頭がかなりおかしくないと犯罪なんて出来ないんだぜ?」


次郎吉が言う通り真人間なら当然犯罪などに手を染めることはしないだろう。普通に働いて普通にお金を稼げば普通の人生で終えることが出来る。それが真人間が選ぶ人生だ。


「それはそうかも知れないけど、次郎吉が欲した報酬ってどういうこと?」


「俺っちが欲したのはまず一つ目は怪盗キャリコが利用していた情報源だな。つまり侯爵が持つ各貴族の情報が欲しいんだよ。『アルバ』からでも手に入る情報ではあるが手に入る情報源は多いほど動きやすし、国視点の情報と貴族視点の情報には違いがあるだろうからな。より精度が良く確実な情報を得ることは犯罪の成功率を高めるし、楽しめる。特に相手を自分の掌の上で転がしている感じは極上の味だからな」


「うわー。すっごい悪い顔しているよ? ジロキチ」


情報の正確性と情報を得る速さは泥棒にかなり重要な要素となる。特に情報収集は犯罪において一番時間がかかる作業となっているため、それを補填出来るならかなりの価値があると次郎吉は判断した。


「それで二つ目は?」


「怪盗キャリコも俺っちと同じでソーサリーファクトの使い手でな。ただ貴族の娘である彼女が魔道技師になる道を選ぶとは思えない。そうなると当然その裏には凄腕の魔道技師がいるってことになるよな? その人物は犯罪に加担していると分かったうえで何年も怪盗キャリコを支えてきた人物だ。俺っちはその人物と会ってみたいだよ」


この二つが次郎吉が現状の余裕が全くない状況で仕事を受けた理由だ。どちらの理由もこのチャンスを逃せば手に入る機会が圧倒的に少ない報酬となっており、その報酬は次郎吉の犯罪者としての未来に大きな力になるものとなっている。


次郎吉の言葉にコーネはその魔道技師とジロキチを出会わせていいのか?という危機感を感じたがそれはコーネがまだ悪に染まりきっていない証拠だ。


そしてあっさり怪盗キャリコのことを知っている次郎吉の発言をスルーしてしまったのはコーネのミスと言える。ただコーネからすると裏社会で次郎吉とキャリコが繋がっていてもよく似た犯罪、よく似たターゲットを狙っているため不思議ではないと考えた。しかし元から繋がっていたなら次郎吉が要求した報酬内容に違和感を持つべきだった。


『まだまだ悪に染まるのは遠そうだな』


コーネは確実に密偵としての仕事はこなして実績も増えてきている。しかし次郎吉の認識ではまだまだ真の犯罪者には程遠い印象を持つのだった。


「ジロキチの狙いは分かったよ。じゃあ、改めて聞くけど、今回の仕事受けるってことでいいんだね?」


「あぁ。場所が場所なだけに捕まるリスクが非常に高い。一応ビオラの姐さんに報告しておいてくれ。それと俺っちがもし捕まったら、俺っちは『アルバ』のことは話すことはないし、『アルバ』は俺っちのことを切り捨ているように改めて伝えてくれ」


これはつまり次郎吉は捕まっても助けに行く選択を取るなとビオラに念を押した形だ。今回の仕事は次郎吉が個人的に受けた仕事であることも関係しているが次郎吉自身が自分のミスは自分でケリを付ける主義なのが影響している。


「……了解。ビオラさんにはそう報告しておくね」


「頼む」


コーネからしたら次郎吉の考えには納得がいっていない。コーネからすると血は繋がっていないがこの世に残された唯一の家族と言えるのが次郎吉だ。だから本音は次郎吉が捕まっても助けたいと考えている。しかしそれはかなり無謀であることをコーネは理解しており、自分の今の仕事は次郎吉の意志をビオラに伝えることだと分かっているので、自分の本音を隠した。


ただ顔には寂しさと悲しさが浮かんでしまっていたので、次郎吉はコーネの気持ちを察したが指摘することは無かった。


その日の夜。次郎吉はファリース侯爵の執事と町の外で合流する。


「待ち合わせの時間よりも少し早いですね」


「それはそっちにも言えることだろ?」


「確かにそれではシルファリッド王国が誇る最大最強のゴンドーラ刑務所についてお話しましょうか」


「頼む」


ゴンドーラ刑務所はシルファリッド王国で逮捕された犯罪者が大体逮捕されるとぶち込まれる刑務所となっている。広さは45万平方メートル。およそ東京ドーム9個から10個の広さとなっている。収容人数は5000人というシルファリッド王国が誇る最大最強の刑務所だ。


場所は次郎吉とハゲッツがよく戦うパステリスの町の近郊に存在している。この場所が選ばれた理由はたくさんある。まず王都シルファードから近い。刑務所で何かあった場合、王都シルファードから援軍が早く到着するのは刑務所からすると非常にありがたいことだ。


そして国家反逆クラスの大犯罪者は城の広場で公開処刑される決まりとなっている。つまり犯罪者を王都シルファードに連れていなければならないので、王都シルファードに近いほうが便利なのだ。


これらに加えて場所が平地であるところも選ばれた理由となっている。平地ということは見張りからすると非常にありがたい。刑務所が想定するのはもちろん脱獄だ。犯罪者が逃げ出した際に平地だと遮蔽物がないことで脱獄囚を発見しやすく逃走ルートを目視で追える。


その上、この世界だと刑務所にいる看守たちはみんな魔法使いだ。そして看守たちは脱獄囚を捕まえるために魔法での追跡と脱獄囚に対して魔法の攻撃が許されている。その際に平地だと攻撃しても被害は最小で済むし、遮蔽物がないので魔法から身を守る手段がなく追跡も簡単だ。


最後に場所。パステリスの町は政治家や貴族が多く住んでいることで犯罪者に狙われやすい。当然逮捕者が一杯出るので、刑務所は近いほうがいい。更にパステリスの町から逃走する犯罪者の逃走ルートの遮断にも活躍している。


見張りがいる刑務所方面に逃げ出すと当然見つかるリスクが高くなる。王都シルファードに逃げ出すのもわざわざ強いソリスがいる場所に向かっていくようなものだ。そうなると逃走ルートはかなり絞ることが可能となる。


ソリスからすると逃走ルート先の町で網を入ることになるのが定番の流れだ。顔バレしていたら、ほぼアウト。声バレで捕まることも多々あるのが現状だ。


次郎吉の場合はそういうことをされるのを理解しているからパステリスの町でわざと潜伏してソリスの警戒網を上手くすり抜けている。最もこれは次郎吉の本当の姿がソリスにバレていないことが非常に大きいからこそ出来る芸当ではある。


更にゴンドーラ刑務所の座学をファリース侯爵の執事から次郎吉は聞く。


「通常の処刑も刑務所でしているのは知らなかったな」


「なんでも王都で行うわけにはいかないということです」


「考えてみると納得する理由だな」


一般人からすると死は気持ちがいいものじゃない。刑務所という町から離れた場所で行うのは当然と言える。更に公開処刑は国に対して歯向かうとこうなるぞという脅しの要素が非常に強い。それを毎日して国民に飽きられると脅しが通用しなくなるリスクがある。人間は慣れると飽きてしまう生き物だからね。


「刑務所がソリスの管轄となると俺っちの今回の相手は全員魔法使いでソーサリーファクトを全員装備していると考えていいんだな? そこに更に処刑に慣れている処刑人までいると」


「そういうことになりますな。しかも見つかるのが早いと王都シルファードから援軍が駆け付けます。ソリスが動くだけならマシですが国所属の騎士たちまで参加するとなると大変なことになりますな」


「まず見つからないことが前提になるわけだ。見つかってからは本当にスピード勝負になるな」


「その通りでございます。私は魔道車の運転が出来ますので、逃走の手助けは可能です。しかし王都からの援軍が到着したらほぼ負けと思ってくださいませ」


時間制限は現実より更に短い。何せ魔法使いたちの駆け付ける速度は現実より遥かに速いからね。ただし逃げ出す速度も速いのが次郎吉だ。平地なら一気に雷速で距離を稼げるので、勝機が全くないわけじゃないと次郎吉は結論づける。


「これが刑務所の地図でございます」


「広いな。どこに怪盗キャリコがいるか分かっているのか?」


「今は取り調べの最中なので王都にあるソリスの本部にいるはずです。それが済み次第刑務所に送られるはずです。分かるとするならそのタイミングですが刑務所の中の情報は私では得ることは出来ないですね」


「ちょっと待て。それならソリスの本部から脱獄させたほうが……無理か」


次郎吉は刑務所よりソリスの本部のほうが簡単だと一瞬思ったが刑務所より無理という結論になった。それにファリース侯爵の執事も同意する。


「それについては私も考えましたが同じ結論に至りました。ソリスの本部にいるソリスはそこまで甘い相手ではありませんし、例え成功しても王都シルファード自体が牢獄です。逃げ出すことは非常に難しい。何より刑務所より遥かに時間制限が短いのも問題です」


結局国所属の騎士が来たら終わりというのは変わらない。ソリスの本部で事件が発生したらほぼ間違いなく国所属の騎士が動く。王都の構造を考えても怪盗キャリコの脱獄を狙うならゴンドーラ刑務所のほうが圧倒的に成功率が高いという結論になるのだ。


「だよな……時間の猶予はどれくらいある?」


「貴族や政治家を相手にしてきたので、公開処刑はほぼ確実。早めの処刑を求める声も恐らく多く出るので、1、2か月ぐらいの時間だと思います」


「それまでに準備を整えるしかないな。現状の俺っちの装備だと勝率が低すぎる」


次郎吉はここでファリース侯爵の執事から通信のソーサリーファクトを受け取り、解散する。それまで次郎吉はソーサリーファクトの開発と改良、ファリース侯爵の執事はゴンドーラ刑務所の情報収集から作戦立案をすることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ