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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
56/68

#56 ビオラの余計な一言

翌日ラピーシア王女との面談を終えたビオラはファリース侯爵の執事と再びビオラのお店で面談する。


「お話は伺いました。まず最初に伺いたいのですがあなたはあたしたちの仕事についてどこまで把握していますか?」


「……深くは知りません。しかしあなたたちの組織に鼠小僧と呼ばれる泥棒が所属していることは掴んでいます」


「情報源をお聞きしても?」


「私個人が調べた情報です。その情報の元については話できません。ただ怪盗キャリコと鼠小僧が標的にしている相手は貴族や政治家です。当然彼らも被害者のままで終わることはありえません。ソリスとは別で動いている者はたくさんいるのですよ」


ファリース侯爵の執事はキャリコの依頼で鼠小僧の動向を探っていた。それと同時にファリース侯爵も自分の娘がお熱の相手が気になり、ソリスを通じて鼠小僧の犯行と思われる情報を手に入れていたのだ。


ファリース侯爵とファリース侯爵の執事は鼠小僧の行動範囲の広さと犯罪のタイミングに違和感を感じて鼠小僧が現在は何らかの犯罪組織に所属している可能性が高いと考えた。次郎吉も犯罪のタイミングには気を付けていた。リスクを承知でソリスの警戒に引っかかるような犯罪もしていたのは組織との繋がりを否定する行動だった。


しかし犯罪回数の多さに対して要所のタイミングの良さが悪目立ちしてしまった。これは捕まるリスクを限りなく無くすための行動だったのでしょうがないところはある。


そうなると今度は犯罪組織について調べるようになる。ここでなんと王様からファリース侯爵に情報のリークが行われた。自分の娘が犯罪組織を作って、国を変えようとしている事実を聞いたファリース侯爵は面を喰らったがファリース侯爵もキャリコの情報を王様に伝えてお互い娘には苦労するなという会談を行った。


この会談で鼠小僧の情報がファリース侯爵に伝わり、ファリース侯爵は一番信頼している執事にだけこの情報を伝えていた。父親としては娘に情報を渡して、組織に入るように誘導する手もあったが自分の娘が簡単に犯罪組織に入ろうとするとは思えなかった。


それは今まで怪盗キャリコとして執事のフォローを受けながらもずっと戦い続けてきたからこそここで自分の信念を曲げてまで組織に入るとは思えなかったのだ。そしてこの意見に執事も同意したことでキャリコには秘密にすることになった。


そして事件発生から翌日、暗殺者からなんとか生き残った執事はずっと探していたキャリコのことを探していた。彼からすると唯一残ったファリース侯爵の意志を継ぐ者だ。必死に探したが残念ながら見つけることは出来ずに終わる。


そんな彼だがキャリコの無事と自白の情報を新聞で知ることになる。こうなってしまうと多くの貴族と政治家に盾付いたキャリコは公開処刑はほぼ確定。彼女を助け出すためには刑務所から脱獄させるしかないという結論に至った。


しかしそれを自分が出来るとは執事は考えなかった。それは偶然それが出来るかも知れない存在に心当たりがあり、偶然彼の情報を知っていたのが大きい。結果として執事はビオラの情報をラピーシア王女の王女の専属騎士団の団長であるルルから聞いて、現在に至る。


それを知らないビオラが返事をする。


「確かに調べる貴族や政治家はたくさんいるでしょうね。それでも情報はかなり気を付けてきたのですけど……まぁ、いいです。ではあたしたちの組織についてお話いたしますけど、基本はあなたたちがしてきたことと似ています。国では裁けない者たちを犯罪を犯してまで裁くのがあたしたちの組織です。お金で動く普通の犯罪組織や同じ犯罪をしている同業者を助ける慈善組織ではありません」


ビオラもまた怪盗キャリコの記事に対してあなたちのことを知っていると牽制しつつ、はっきりと執事の依頼に対してノーを突き付けた。


「……ダメですか。私を初め、キャティス・ファリースがあなたたちの仲間になればかなり心強いと思いますが? 既に侯爵の地位は失墜しましたがそれでも貴族の繋がりはまだあります」


「それについても知っておりますわ。ファリース侯爵の失墜を決める際には不当な物という意見も結構いたようですから。確かにあなたたちが仲間に加わってくれるなら実力も貴族の情報でも色々助かるとは思います。しかしあなたの依頼はあたしたちの組織の行動理念に触れていない以上、あたしたちが仕事を受けることはありません」


ビオラには『アルバ』という組織を維持管理していく重要な任務がある。ここで組織の理念を曲げてしまうと『アルバ』という組織がどういう組織か迷走することになる。そうなると今度は所属してくれたメンバーが組織に不信感を抱いて離脱者が大量に出る流れを会社の経営者としてビオラは知っていた。だからビオラは『アルバ』を守るためにファリース侯爵の執事の依頼は蹴るしかなかった。


「……そうですか。わかりました。では、失礼します」


ファリース侯爵の執事は席を立ち、お店から出ようする。仕事を断れた以上、自力でキャリコを救い出す決意がファリース侯爵の執事から感じられた。そんな彼にビオラは余計な一言を付け加える。


「組織としては動けませんが個人で仕事を受けてくれる物好きがいるかも知れませんね」


ビオラの言葉にファリース侯爵の執事が振り返るとビオラの笑顔が見えて、ファリース侯爵の執事は彼女が何を言いたいのか理解して礼を返して、お店を出るのだった。


その一部始終を見ていたコーネが言う。


「ビオラさん……この話、ジロキチが知ったら怒りますよ?」


「でしょうね。でもラピーシア王女のお願いでもあるししょうがないわ。だからコーネはこの話をジロキチに聞かせたらダメよ? いいわね?」


「はひ!」


ビオラに釘を刺されたコーネは情けない返事をするのだった。

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