#52 ファリース侯爵家襲撃事件
新聞で怪盗キャリコの正体が暴露されたことでファリース侯爵家では大変な事態となる。まず報道関係者や住民がファリース侯爵家に集まって来たのだ。
「あの新聞の記事は本当のことですか?」
「娘さんと面会させてください!」
「俺はお前のことが好きだぞー! キャリコー!」
「税金泥棒たちを凝らしてくれてありがとー!」
外の光景はさながら王様が演説している時のような光景だ。それを自室に引きこもって、怪盗キャリコことキャティス・ファリースは頭を抱えていた。
「どういうことよ……なんであたしの正体がバレたの? そんなへましてないはずよ」
キャティス・ファリースは大混乱状態だ。そんな中一番の被害者と言える父親は朝の新聞を最初に見ると冷静な対応をする。まず娘に新聞をみせてから娘に指示を出す。
「いいか? お前はまず部屋から一切出るな。窓から外を見るのも禁止だ。今のお前の顔が新聞に載るのはまずいからな」
「わ、わかったわ……」
「あなたはどうするの?」
キャティス・ファリースの母が夫に質問すると夫は答える。
「私は今回の一件を説明するために城に向かわなければならない。そこで政治家や貴族の者たちに今回のことを説明しなければならないからな」
「お、お父さん! あたし!」
キャティス・ファリースの父は娘の頭を撫でる。
「心配するな。あの時はお前を守ってやれなかったが今回はちゃんと守って見せるさ」
そういうとキャティス・ファリースは城へと向かった。
お城に到着すると当然貴族や政治家からの罵詈雑言の嵐だ。それに対してはっきりと答える。
「皆さん、お気持ちは分かりますがその件で一番驚いているのは私ですよ。実の娘がいきなり犯罪者にされたのです。怒りがこみあげてきましたよ。親として当然だと思いませんか?」
「いや、それはそうだが」
「まず今回の記事を書いた新聞記者とソリスに事実確認をさせてください。家を出る前に娘に聞きましたが本人は全く身に覚えがないと言ってました。ならば私としては娘の言葉を信じるのみです。私の取る行動に何か問題点や不審なことはありますか?」
ファリース侯爵がそういうと政治家や貴族たちは追及の手を止めた。流石侯爵の地位まで上がった人物だ。本当に怒りに満ちた顔と視線で怪盗キャリコの被害にあった貴族と政治家を黙らせてしまった。
その後、王様たちに今回の一件の説明をして、自分の娘の無罪を証明すると発言したことで王様からは今回の一件を託される。その結果、王様の指示で証明する者として王族直属の騎士団長がファリース侯爵に同行する。
これは今回の騒動で暗殺などを警戒してのことだ。ゼルガード伯爵が暗殺されたことで新しい伯爵が選ばれたのがつい最近の出来事なので、同じように侯爵が暗殺したら自分が侯爵に上がれるかもしれないと考える貴族たちを王族が警戒した形だ。
王様がそこまで気に賭けるほどファリース侯爵は有能な人材と言える。そんなわけでファリース侯爵は今回の一件の捜査を開始する。まず新聞記者に話を聞こうとしたが相手も簡単には聞かせてくれる相手ではなかった。
「話はわかりました。しかしこちらとしてもタダで今回の一件の話をするわけにはいきません」
「何が欲しい? 金か?」
「いいえ。あなたの娘に直接今回の一件の話を取材させて欲しいのですよ」
「断る!」
ファリース侯爵の様子を見た新聞記者は笑みを浮かべて指摘する。
「おや? どうして断るのですか? それにそんな怒鳴らないでくださいよ。そんな様子ではまるで我々の記事が事実など認めているような物ですよ?」
これに対してファリース侯爵の返す。
「……無罪の娘が一瞬で犯罪者扱いされた親の気持ちがお前たちにわかるか? わかるはずないだろうな。わかる人間が先ほどのような言葉が出るはずがない。話はこれで終わりだ。お前たちの記事が偽物だった場合、覚悟しておくんだな」
「覚悟するのはそちらだと思いますがね」
こうしてファリース侯爵と新聞記者との話し合いは終わる。その後、ソリスの本部に向かい、今回の一件の話を聞いたがソリスも今回の記事に関与しているわけじゃないことが判明した。つまり新聞記者が独自で証拠を集めた結果、あの記事を書いたことになる。
ソリスとしても怪盗キャリコの情報を見逃すことは出来ないので、新聞記者に捜査協力の要請を出して、今回の一件の捜査をする旨とキャティス・ファリースにも捜査協力の申し出が出される。これに対してファリース侯爵は捜査協力することを約束した。流石にここでソリスの捜査を拒むことは出来るはずがないことぐらいはファリース侯爵は分かっていた。
しかし今回の事件はファリース侯爵も新聞会社もソリスも誰も想像つかない結果に終わる。事件はその日の夜に起きた。寝たくても寝れない状態となったキャティス・ファリースは自室で布団に包まっていた。そんなとき、何かがたくさん割れる音がする。
「何? ひ!?」
キャティス・ファリースは布団から顔を出すと自分の部屋が燃え出していた。投げ込まれたのは火炎瓶だ。火炎瓶で出火した炎は絨毯やカーテンに引火して瞬く間に部屋が炎に包まれていく。
「噓でしょ!? は!? お父さん! お母さん!」
キャティス・ファリースは部屋から出て、両親の安否を心配した。しかしここで父の声が聞こえてきた。
「逃げ出せ! キャティス!」
「お嬢様! 失礼いたします!」
「爺や!? ちょっと何しているの!? 離して!」
ファリース侯爵の執事はキャティス・ファリースを抱っこするとソーサリーファクトを起動させて窓から大きく飛び出した。ここでキャティス・ファリースは外から自分の家全体が炎に包まれている光景を見にする。
「そんな……もしかしてあたしのせいで」
「そんなことは決してありません!」
「いいや? お前のせいだよ。怪盗キャリコ」
ファリース侯爵の執事の背後に突然何者かが現れるとファリース侯爵の執事を蹴り、地面に叩きつけた。この時の落下の痛みでファリース侯爵の執事の手が緩んでしまった。その結果、また別の何者かにファリース侯爵の執事は蹴り飛ばされるとキャティス・ファリースを落として吹っ飛ばされてしまう。
「ぐっ……お嬢様!?」
「痛い!? 離して!?」
謎の男はキャティス・ファリースの髪の毛を手で掴んで拘束する。
「悪いがそいつは出来ねーな。こっちも仕事なんでな」
「お嬢様を離せ! ぬ!?」
ファリース侯爵の執事がキャティス・ファリースを取り返そうと走り出したが謎の集団が行く手を阻む。
「へへ。お前の相手は俺たちがしてやるよ」
「多勢に無勢だがお前たちが今までやって来たことのつけだ。覚悟するんだな」
「誰の差し金だ?」
「そんなこと話すわけないだろ?」
ファリース侯爵の執事は謎の集団と対決することになり、その間にキャティス・ファリースは誘拐されてしまうのだった。




