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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
51/66

#51 サヤの村の復興①

翌朝次郎吉はヤイバとグソウと共に村の周囲の確認をする。次郎吉が昨日の夜に話した通り、村への入口は全部天然の洞窟を通らなければいけないことを認識しつつ次郎吉は話す。


「ここの洞窟は思った以上に広いな。敵が攻めてきた時はここを塞がないと詰みそうだ。後は空だな。結界のソーサリーファクトで守りを固めるのは当然として何かしらの迎撃手段は必要か? いや獣人の身体能力を考えたら、必要なしか? この辺りは聞いてみないと無理だな」


「なんか生き生きしているな。次郎吉」


「ジロキチは基本的にいたずら好きだからな。こういう人間を敵に回すと厄介なものなんだぜ? 何せ平気な顔をしてえげつないことをやって来るからな」


酷い言い草だと次郎吉は思うが実際に防衛を考えるとえげつない罠を考えざる負えないのが現状だ。しかし直接それらに手を加えるのは次郎吉であってはならない。獣人の村は獣人が守るべきであり、罠の設置は泥棒のすることじゃない。それが人の命に係わることなら尚更だ。


そんなわけで次郎吉はヤイバに自分のアイデアを託して、あくまでヤイバの指示の下で村の防衛作戦を組み上げることにする。そのアイデアを聞いたヤイバは感想を言う。


「お前……よくそんなえげつないことを思いつくよな?」


「人間の歴史は戦いの歴史だからな。俺っちのアイデアなんてただの真似事さ。それでも獣人がいきなり罠を使い出したら、人間は困惑するとは思うぜ?」


「それはそうだろうな。俺たちからすると敵に突っ込んで蹂躙することしか考えてなかったからな」


「それで勝てるんだから凄いよな。でも獣人の数にも限界はある。お前も村のまとめ役で次の世代のことを考えるなら犠牲をなるべく出さない戦闘を意識しないといけないぜ?」


次郎吉の言葉にヤイバは素直に頷いた。ヤイバの目には次郎吉が無き父親のように見えていた。ヤイバの父親も次郎吉同様に獣人の未来を憂いており、次の世代の子供を生かすことに必死だったのだ。残念ながら打つ手はなかったがヤイバには父の意志を次郎吉が代わりに伝えてくれた気がした。


次郎吉たちがその日の昼を迎えると続々奴隷にされて離れていた村人たちがアルバのメンバーに連れられて、集まって来た。


サヤとヤイバはみんなの前でこの村の復興を宣言し、ヤイバは守りを強化することをみんなに伝えて、この村を安全に生活できる場所にしようと言うと村人たちはお互いに顔を見合わせると一人が賛同の声を上げると続々と賛同の声が上がっていく。


これで改めてサヤたちの村は復興の道を行くことが決定した。そうなるとまずは家の解体と家の建て直しから始めることになる。


ここで次郎吉たちアルバのメンバーは一旦自分たちの仕事に戻ることを決定する。次郎吉たちがサヤたちの復興を支援するにしても資材が無い。獣人たちの家は木造で丸太を繋ぎ合わせて作るシンプルな家だった。人間のように加工する技術がないからそうなるのは当然と言える。


ただその肝心の木も刈りつくして近くにはないそうだ。かなりの数の家があるから周囲の木が無くなるのも無理はない。村人の中には一人で家を持っている者も多いのが家が多い原因だ。しかし人間と同じように一人でいたい者や一人の空間を大切にしたい者がいるので、こればっかりはしょうがないところではある。


そんな贅沢を言っていられるような状況でもないんだが、アルバの協力が得られるなら話は別だ。個人の要望を叶えることは村人が定住を選んでくれることに繋がる。住み心地が悪いなら他の住み心地がいい場所を選ぶのは当然だ。


しかしそうなると別の問題も浮上してくる。それについて次郎吉は家に帰る前にサヤとガルザ、ヤイバに質問する。


「他の獣人も村を持ったりしているんだよな?」


「はい。基本的には小さな村が多いんですけど、いくつか大きな村がありまして人間と戦っているらしいです」


「そうなるよな……なんて言えばいいのか……気を付けてくれ。色々とな」


「あ~。言いたいことわかったぜ。確かにここが住み心地がよくなると一緒に住みたい獣人は増えるだろうからな。それはつまり逆もあり得るってことだろ?」


次郎吉が頷くとサヤとヤイバは深刻な顔をする。


「それってつまり」


「他の獣人がここを奪いに来るってことか?」


「あくまで可能性の話だ。同じ獣人同士で争っている場合じゃない気がするからな。ただこの村の代表者であるお前たちには話しておいたほうがいいと思った」


「いい話にほいほい乗ってばかりいると村を奪われるって話だな。ゆくゆくは自分たちを信じてくれた人まで裏切る結果になる。そうならないために気を引き締めて他人には厳しい目を向けないといけないっていう次郎吉からの忠告だよ」


良い顔ばかりしていたら、悪いことを考えている人間に足元をすくわれてしまうのが世の常であることを次郎吉は知っていた。正義が必ず勝つというのは幻想だ。悪事をして裁かれることなく人生を終える人間なんて世の中にはたくさんいる。それが現実だ。


「わかった。じゃあ、そういう奴らの対処は俺がする。サヤは何かあったら、俺にすぐ相談してくれ」


「わかりました」


ヤイバはいいお兄ちゃんだ。妹の代わりに汚れ役をすることにした。少々一人で抱え込みな気がするがガルザも話を聞いていたからヤイバの背負いすぎにはガルザが対処してくれるだろうと次郎吉は考えて、一旦自宅に帰ることになった。


そんなわけでアルバはまず木の運搬からまず進めないといけない。次郎吉もまた作らないといけないソーサリーファクトが増えた上に自分の第二拠点をサヤたちの村に作るならソーサリーファクトの作業場をサヤたちの村で作らないといけないので、その為の資金調達と作業場に必要な道具の調達をしないといけないというやることがたくさんある状態だ。


そんなわけで次郎吉は家に帰ると休憩してからシルファリッド王国の右側にある町に狙いを絞り、貴族や政治家の情報集めをして次々と泥棒を成功させる。


ソリスの警戒が強まると次郎吉はハニットの村に帰り、稼いだお金をまさかのスカリフォーの町のソーサリーファクトのお店で買い物し、作業場に必要なものを揃える。


これはソリスとの駆け引きだ。ハゲッツが近くにいる町で鼠小僧がわざわざその町で泥棒で得たお金を使うのか?という疑問に対して、次郎吉は買い物しますと返したわけだ。


大胆不敵だが、捜査のかく乱するためにはこういう駆け引きも重要。ただ見つかったら、本末転倒である。次郎吉の場合はハゲッツは奴隷島にいるはずだからスカリフォーの町で出会うはずがないという自信があったからこそ今回の行動を選択した。


ソリスの捜査で鼠小僧の正体は凄腕の魔道技師であることはバレている。その状態で魔道技師として行動するとソリスの目にはどうしても引っかかってしまう。だからこそ自分は鼠小僧じゃないですよアピールが必要なわけだ。


そのアピールが逆に怪しまれる危険もあるが普通に買い物しても怪しまれる現状だとアピールできる時にアピールするのが犯罪者としては正解の行動となる。


こうして着実に第二拠点の準備を進める次郎吉だったがここでまた新たな事件が世間を騒がせる。新聞の記事にはこう書かれていた。


『怪盗キャリコの正体判明! ファリース侯爵の娘キャティス・ファリース!?』


この記事が出たことで次郎吉はまた一つ大きな事件に巻き込まれることになるのだった。

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