#47 ゼルガード伯爵事件の顛末
今回のこの事件はゼルガード伯爵暗殺事件として新聞に載ることとなった。ゼルガード伯爵暗殺事件には暗殺者犯罪グループの存在が示唆されていた。流石に事件の規模が大きすぎたのだ。これで名前こそ知られていないが『アルバ』の存在を世界が知ったことになった。
当然、今回の一件は貴族たちにとんでもない影響を与えることになる。その被害を被るのは次郎吉のような泥棒などをしている犯罪者だ。次郎吉は当事者であり、警戒させても泥棒して見せると逆に燃えるタイプだからいいが他の犯罪者たちにとってはいい迷惑となった。
一方ゼルガード伯爵がビャク王国の奴隷商人と商売していたことも報道されたことで国が今回の事件に関与する事態となる。国からソリスに命令が届き、ハゲッツチーフを中心にした調査チームが奴隷島に行き、関係者の逮捕と奴隷たちを保護することになった。
なおゼルガード伯爵の暗殺した犯人は謎となった。ソリスとしては足跡やその後の国からの情報で獣人が犯人であることは確信していたが獣人の情報をシルファリッド王国のソリスが持っているはずがなかった。
この世界のソリスはお互いに協力関係にはない。それぞれの国がソリスという警察機関を独自に運用している形だ。なので他国の犯罪者の情報を他国が知る術がない。これを利用しているのが次郎吉であり、犯罪者だ。
自分の足が付けが他国に逃げればソリスに打つ手がない。ただし例外として他国に捕まれば取引で受け渡しがされることはある。しかし今回の事件でそれが行われることはない。ガルザが犯人だという確かな証拠がないからだ。
ソリスの調査は奴隷商人の会社にも入ったが獣人一人一人の名前が書かれていなかった。奴隷商人にとって名前はどうでもいい情報だからだ。結果としてガルザがシルファリッド王国にいたという証拠が一切なかった。これではソリスとしてはどうしようもない。
話は戻り、奴隷島の調査をすることになったハゲッツチーフは謎の凄腕の魔道技師が今回の事件に関わっていることを知る。
「鼠小僧がここにいたのか? それとも別人か?」
「ハゲッツチーフはどう考えていますか?」
「可能性は高い。あいつのような魔道技師がほいほいいるわけないからな。ただあいつが群れるタイプかと聞かれると群れるタイプじゃないと俺は思う」
ハゲッツチーフは次郎吉のことをよく理解していた。だがここでハゲッツチーフは激しく頭を掻く。
「わっかんねーな。そもそも俺がここに来るように要請させたのは偶然なのか?」
「え? それってどういうことですか?」
「あーあー。お前が気にすることじぇねーよ。今のは俺の独り言だ。忘れろ忘れろ」
ハゲッツチーフは部下を庇う。下手に国に首を突っ込むと余計なことにはならないとハゲッツチーフは知っている。因みに今回の一件でハゲッツチーフは指名したのはラピーシア王女だ。最も彼女は王様たちに意見を言っただけだがハゲッツチーフなら任せられた仕事はきちんとこなすと王様たちも信頼した上で判断した。
もちろんこの判断に『アルバ』からの報告が関与しているのは言うまでもない。そしてその報告には次郎吉も加わっている。次郎吉はハゲッツチーフなら後始末を全部任せられると信頼した上で指名した。何度も戦った故に変な信頼関係がお互いの間で生まれていた。
最も次郎吉はハゲッツチーフを遠くに飛ばしたので、逆サイドで泥棒する気満々であることを追記しておく。そこらへんは抜かりがない次郎吉である。次郎吉のこの動きを後で知ったハゲッツチーフが色々考えさせられることになったのは言うまでもない。
そんなハゲッツチーフだが保護した奴隷たちを出身地に返したりと大忙しだったがスカリフォーの町
に新しい伯爵が到着したことで忙しさから解放させる。奴隷島に関してはゼルガード伯爵が見つけたことで所有権を持っていたことで新しい伯爵が国が関与した上で管理することとなった。
つまり奴隷島で得た鉱石を国が関与することで島を所有している者だけがぼろ儲けすることは出来なくなった。逆に国は関与出来るので、国にはかなりの鉱石とお金が流れることになる。これが良いのか悪いのかは賛否両論だ。国や政治家が悪用しないことを『アルバ』は祈る限りである。
因みに次郎吉からすると今回の一件でソーサリーファクトの素材の値段が落ちたことでプラスになった。これは鉱石の値段が下がったことが影響している。
そんな次郎吉も問題を抱えた。まず獣人たちの取り扱いだ。島にいたエルフと獣人たちは無事に大型船を襲撃して奪うことに成功したことで事件が終わった後、スカリフォーの町で『アルバ』のメンバーと合流した。
そこで協議が行われて、各自が故郷に帰ることを望んだことでエルフと獣人たちの故郷に返す役割は『アルバ』が担当することになった。最もそれをするのは各国にパイプがあるビオラと魔道車や馬車が乗れるグソウさんたちの仕事だ。
ここで『アルバ』としては非常に大きな習慣を得ることになる。ガルザが組織に入りたいと志願したのだ。
「変に人間に関わったせいで護衛やらが得意になっちまってな。あんたたちには返せないほどの恩が出来たことだし、組織に入れてくれると助かる」
「あたしとしては願ったり叶ったりの申し出だけど、どうしようかしら?」
ビオラが次郎吉を見ると次郎吉が答える。
「上手く使えるかどうかか? 一応プラムが使っているソーサリーファクトを渡せば人間の姿で活動可能だぜ? 使い方を教えて、魔力の残量を気にしないといけないがな」
「そこらへんはあたしたちにも出来るから問題ないわね。後はあたしの采配次第か……それなら採用しようかしら。今回の一件で組織の戦力不足は露呈したし」
ビオラの言葉に『アルバ』のメンバーは苦しそうだ。こちら側にもかなり被害が出たし、ガルザがいたからこちらの作戦が通用したがもしガルザが不在だったら、ガルザの援護がなく『アルバ』は恐らく自力の差で負けていた。それをビオラは認識しているから戦力増強を望んだ。
そんなわけでガルザが組織の仲間入りすることが決定。更に今回、助けた獣人たち限定だが、『アルバ』と友好を結ぶことになった。これで『アルバ』がピンチになると獣人たちの助けを得られるようになった。
これは大きなことだが残念ながらエルフたちはそこまで協力的にはなれないという決断をする。ただ何か助けが必要な時は今回の恩は返すという約束はしてもらえた。エルフたちからすると力で恩は返したくないって印象を受けた。これはしょうがないことだろう。
彼女たちの出身地はエルクレッド王国というバルバリス王国の右にある国でシルファリッド王国とは国境が全く面していない国が出身地らしい。この国にはエルフ最大の村があるくらい自然豊かな国なのだそうだ。プラムの生まれ故郷もこの村らしい。距離が遠く離れているから助けることなどは難しいものだ。
さて、事件が終わった次郎吉はひとまずガルザや巫女様たちを家で預かることになった。エメリたちが次郎吉に懐いているのも原因の一つだが、次郎吉が住んでいるハニットの村はビャク王国に近い上に次郎吉とプラムは『アルバ』の中でも最高戦力とガルザが認めたことで巫女様の安全を考えて次郎吉たちが一時的に保護することになった。
「絶対違うと思うんだけどな」
「ふふ。そうですね」
次郎吉は納得いかず、プラムは自分の主人が認めて嬉しそうに笑っている。
一方問題のゲオリオはしばらく安静が余儀なくさせた。脳へのダメージに加えて体の筋肉はボロボロな上に複雑骨折を複数ある状態だ。この状態で大魔術を使ったゲオリオに医者は引いていた。ゲオリオからすると魔力コアが無事だったからこそ魔術を使えた。魔法や魔術を使うのに手足は必要ないとゲオリオが証明した形だ。
そんなゲオリオは回復後、暫く仕事を控えて鍛錬に励むそうだ。今回のそもそもの原因となったガルザとの負けをゲオリオ自身が一番重く捉えていた。『アルバ』のメンバーを殺し、クインを危険に晒して、一番大切な王女にまで被害がおよびそうだったことを考えるととんでもない反省と後悔から最終的に今よりも更に強くなろうと考えるのは当然と言えた。
クインは怪我が完治後、現役復帰することになる。ゲオリオ抜きでの単独任務だが初めてではないので、問題はない。因みに依頼料はちゃんと次郎吉に支払っている。このあたり彼女は真面目だ。
そんなわけで『アルバ』のメンバーはそれぞれ日常に帰ったのだった。




