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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
45/64

#45 ゼルガード伯爵とゲオリオ救出作戦

ガルザの案内で地下通路を進んでいくと一つの扉に辿り着いた。


「……ここだ。開けるぞ?」


「……うん」


ガルザが扉を開けると真っ暗の部屋に灯りがつく。そこの部屋はソーサリーファクトの研究施設だった。そしてクインたちがいる広間を結界越しに見つめている人影がいた。


「ゼルガード!」


ガルザは地面を蹴って、跳躍して襲い掛かったが結界に阻まれた。そんなガルザを黒の眼帯をした髭もじゃの四十代と思われる貴族が見つめながら言葉を返す。


「君たちの会話は全て聞かせて貰ったよ。よくあの島からガルザの人質を救い出したものだ。しかしこのままでは私の名誉と商売に傷がついてしまうのでな。悪いが君たちにはここで消えてもらう」


ゼルガードがそういうと地面のゲートが開いて、頭と体に謎のソーサリーファクトを装備したゲオリオが現れた。それと同時に唯一の出入り口も防壁が地面から現れて封鎖させる。


「仲間同士、思う存分殺し合うがいい」


「……」


ソーサリーファクトが起動するとゲオリオが無言で『アルバ』のメンバーの一人の首を問答無用で跳ねる。そして次の攻撃の目標がクインに向く。これに対してクインはゲオリオの頭部に装着されたソーサリーファクト目掛けて雷速の鏃を放つ。


しかしゲオリオはそれに反応して躱すとそのまま距離を詰めてクインを斬り裂こうとしたがガルザがゲオリオに襲い掛かり、それを感じ取ったゲオリオは距離を取る。


「悪いが俺にはあいつを止める方法はまるでわからん」


「……たぶん頭の装置が怪しい」


「正解だ。しかし壊すのはオススメ出来ない。下手に壊せば彼の脳が死ぬことになるぞ?」


ゼルガードの言うことは正しい。ゲオリオの脳に対してソーサリーファクトの効果が発動しているなら下手にソーサリーファクトを破壊すればゲオリオの脳にダメージが直接行くことになる。そうなれば最悪脳死だ。


つまり今のゲオリオはゼルガードにとって敵を倒す(ほこ)であり、人質でもある。


「くそったれが! いいぜ? もう一回、体をボロボロにして動きを止めてやるよ!」


ガルザがそういうとゲオリオと接近戦をする。するとゲオリオはガルザの攻撃を全て躱してガルザの腹に蹴りを入れるとガルザが悶絶して吹っ飛ばされる。


「な……なんだ? こいつの反応とこの力……俺と戦った時にはこんなものはなかったぞ?」


「な……おい。ちょっと待てよ。ゲオリオさんの足……」


「お、折れている……」


ガルザを蹴ったゲオリオの足は不自然に曲がっていた。しかしゲオリオは一切叫ぶことはなかった。更に背中のソーサリーファクトが発動して足が元に戻る。ここでゼルガードが自慢するかのように話しかける。


「身体強化の薬とソーサリーファクトで強引に筋力を上げた人間の力はどうかね? ガルザ? 中々に効くだろ? 最もその強化に生身の肉体が付いていけないのが問題点だが、操り人形なら問題ない」


「本来ならとんでもない激痛がゲオリオさんを襲っているはず……それを脳を操って痛みをなかったことにしているのか」


「完全に非人道的なソーサリーファクト……こんなものを開発していいと思っているのか!」


「この国の法なら触れているな。しかし私が見ているのはもっと先の未来だ。私は遠からず戦争が起きると予想していてね。これはそのための実験なのだよ。戦争ではどれだけ多くの敵を倒して、どれだけ多くの味方を救うかが重要になる。残念なことに犠牲無しで戦争に勝てるほど現実は甘くない。ならば多少の犠牲で国民を守る判断は悪いと君たちは思うかね?」


つまりゼルガードは一般人や弱い魔法使いを今のゲオリオのように使うことで戦争に最小限の犠牲で勝とうとしているわけだ。もちろんここでの犠牲は一般人や弱い魔法使いたちだろう。


「そんなこと! 悪いに決まっているだろうが! 命をなんだと思っているんだよ!」


ガルザがそういうとゲオリオとぶつかり合う。するとガルザが押される。ただしその度にゲオリオの身体がボロボロになり、そして回復する。


「優秀な人間や命なら私は大切に思っている。しかし優秀でない人間は優秀な人間に使われる駒に過ぎないと思わないか?」


ゼルガードの思考は悪い商売人の思考に似ている。伯爵という地位が彼を変えてしまったのかよくわからないが彼の言葉を聞いたクインの脳内にゲオリオとの出会いと今までのことがフラッシュバックする。


クインは戦争孤児だ。戦争といってもどちらかというと内乱に属する。市民と貴族がぶつかり合ったことで家と家族を失ったのがクインの過去である。当時国軍に所属していたゲオリオは内乱の鎮圧で現場に行き、クインを見つけて助けることにしたのだ。


それからゲオリオは王女の命で暗殺者となり、クインを暗殺者に育てて、パートナーとして一緒に行動することになる。


「……駒じゃない。ゲオリオもわたしも駒なんかじゃない!」


クインがゼルガードに向かって雷速の鏃を放ったがゲオリオが盾になり、ゲオリオの身体を貫通した。


「ゲオリオ!?」


「君の彼も駒だよ。社会や組織に属するということはそういうだ。中々に見物な光景だが、私はそろそろ失礼させて貰うよ。これから私には島に向かった船を沈没させる仕事があるものでね」


「『『っ!?』』」


ゼルガードは奴隷島が敵の手に落ちたことを知ったことで船を奪還して奴隷たちが逃げてくると考えたことでその船を攻撃して証拠隠滅を図ろうとしているらしい。これを聞いたガルザたちは自分たちの仲間が海で溺れる姿が脳に過ぎる。泳げたとしても船から見たらただの的だ。


「腐れ外道が! おい! お前ら! なんとか出来ねーのか?」


『……戦力をここに集めすぎたわ。この町の港を支配している彼を止める術はあたしたちにはない』


「くそ!」


ガルザが苛立ちながら強化ゲオリオと戦う。すると鎌鼬も以前より強力になっており、ガルザの身体から血が流れていく。このままだと出血大量でガルザのほうが負けてしまう。


その光栄を映像で見ている魔道技師がいた。


「いいぞ! いいぞ! 私の実験は正しかった! やはり私は天才だ! 私こそが一番の魔道技師を名乗るのに相応しい!」


「いいや。俺っちのソーサリーファクトの解析に失敗した時点でお前は雑魚確定だよ」


「は? ぎゃ!?」


魔道技師に疲れて寝ていたはずの次郎吉が背後から首元に電気ショックを与えて倒れる。


「俺っちのソーサリーファクトに手を出したお前を俺っちは許すわけにはいかないんだよ。それに……」


次郎吉がゲオリオを操っていたソーサリーファクトを操作する。


「クインからの依頼内容は『ゲオリオを助けることに力を貸す』だったからな。最後まで受けた仕事はまっとうしないと俺っちの信用問題になるんだよ」


次郎吉がソーサリーファクトの解除スイッチを押すとゲオリオに装備されていた装置が解除される。それを見たガルザとクインたちは驚く。


「装置が外れた!?」


「ゲオリオ!」


「どういうことだ? なぜ装置が外れた?」


クインは倒れるゲオリオに抱き着いて支える中、彼らの疑問に次郎吉が放送のソーサリーファクトのスイッチを入れて教える。


『俺っちがゲオリオの装置を解除した。これで今回の俺っちの仕事は完了とさせて貰うぜ?』


「ジ……ううん。ありがとう。『鼠小僧』」


「お前たちの仲間がこいつを操っていた奴を倒したのか? おいおい……どうなっているんだ? そいつ。部屋の場所を知っていたとしても相当部屋の守りが硬かったはずだが? それを突破したのか」


ガルザの言うように次郎吉がソーサリーファクトの制御室に辿り着くためにはいくつもある防犯ドアのセキュリティを突破しないといけない。更に護衛の魔法使いたちもいる上に防犯のソーサリーファクトも設置されていてかなり強固な守りだった。


しかし次郎吉はそれを突破した。まず次郎吉にとってラッキーだったのだが研究室が地下に作られていることで地下通路という狭い道を通らなければいけないことで護衛たちは仲良く睡眠ガスの餌食になった。ただ彼らも馬鹿じゃない。ちゃんとガス対策のソーサリーファクトを用意していた。


それを想定していた次郎吉はガスで視界が奪われている状態を利用として敵に接近して敵のソーサリーファクトを盗むことで敵全員を眠らせることに成功した。


そして防犯ドアのセキュリティはハッキングとピッキングで次郎吉は突破してセンサーライトも全て身のこなしとセンサーライトを無効化するソーサリーファクトを使用して最後は空調確保のために作られた天井の裏側に設置された配管を通り、水圧カッターのソーサリーファクトで研究室に侵入してチェックメイト。


これをビオラや『アルバ』のメンバーが全く知らせることなくやってしまうのが次郎吉という大泥棒であった。しかしそんな次郎吉にも予想外のことが起きた。研究所内で次々爆発が発生したのだ。


「な、なんだ!?」


「爆発!? 鼠小僧! どうなっている!?」


『あちゃー……敵さん、相当お怒りだな。俺っちが魔道車全部ぶっ壊したのが効いたっぽい』


次郎吉は研究所に侵入する前にゼルガードの魔道車に搭載されている制御のソーサリーファクトを盗み出したことでゼルガードが魔道車に乗ると制御不能となり、ゼルガードは事故ってしまう。


因みに研究所で姿を見せていたゼルガードは幻で本来は屋敷の自室から研究所の様子を見ており、話しが終わったゼルガードはそのまま屋敷の車庫に向かった形だ。


「やってくれたな……敵の中にも切れ者がいるらしい」


「ゼルガード様、いかがしますか?」


「遊びは終わりにしよう」


ゼルガードが研究所のスイッチを押したことで研究所が爆発する。


「これであいつらは全員生き埋め。生き残ったとしても私が先に国に報告すれば全ての責任をあいつらに押し付けて終わりだ」


ゼルガードは船を攻撃する気などなく、『アルバ』に船を護衛させることで時間稼ぎをしてその隙に自分は王城に行き、今回のことを報告して全ての責任を『アルバ』に押し付けれる計画だった。伯爵の地位ことを考えるとこういうのは先に報告したもの勝ちになる。ゼルガードはそこをちゃんと理解していたのだ。


ゼルガードは市民に事情を話して魔道車を借りて、王都に向かう。一方次郎吉たちは生き埋めの危機だ。


『目の前の結界を解除した。こっちに来い』


次郎吉の指示で『アルバ』のメンバーが次郎吉に合流する。するとクインの目が魔道技師を見る。


「……鼠小僧。こいつは?」


「ソーサリーファクトでゲオリオを操っていた奴だよ。お前の怒りも分かるが殺し屋にその役目は譲ってやりな」


「……そうだね。そうする」


「誰かこいつを運んでくれ。急いで逃げるぞ」


ここで天井が崩れる。それを見た『アルバ』のメンバーやクインが風の魔法などを駆使して生き埋めだけは阻止するがここの天井は普通の建物の天井ではない。地下施設なので大量の土砂だ。その重さに普通の風の魔法使いだけでは耐えらない。


「……む、無理」


クインが諦めそうになった時だった。クインの頭に誰かの手が置かれる。それはクインにとってはもう懐かしく感じるものであり、この場面で一番欲している手だった。


「生きることを諦めるなと教えたよな? クイン?」


「……うん! ゲオリオ!」


『アルバ』の大ピンチに頼れる殺し屋の登場だった。

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