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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
44/64

#44 ゼルガード伯爵邸襲撃とガルザの解放

プラムたちが奴隷商人の会社を襲撃する同時刻、『アルバ』のメンバーもゼルガード伯爵邸に襲撃を開始する。作戦開始の狼煙となったのが睡眠効果がある手投げ爆弾だ。『アルバ』のメンバーから次々ゼルガード伯爵邸に投げ込まれた結果、あっという間にゼルガード伯爵邸は煙に包まれ、更に結界を発動させて逃げ場を封じた。


「て、敵襲!」


「ゼルガード様をお守りしろー!」


そう叫んだ護衛たちだが、全員煙を吸ってしまったことで眠りに落ちた。ガスマスクを取り付けた『アルバ』のメンバーが次々屋敷に侵入すると屋敷の中で無事だった護衛たちと戦闘が発生する。


ここで『アルバ』にとって予想外のことが起きた。ゼルガード伯爵邸にいた護衛たちが予想外に強かったのだ。


「なんだ!? このメイド!? 強すぎる」


「わたしくはゼルガード様に仕えるメイド長です。これぐらい当然のことですわ」


ゼルガードのメイド長は暗器使(あんきつか)いで体から次々暗殺武器を取り出して『アルバ』のメンバーを次々倒していく。更に雇われている護衛も剣のソーサリーファクトを使用して『アルバ』のメンバーとぶつかり、押している。


伯爵の地位にもなると雇う人間も一流になるものだが、これだけの戦力を保有しているゼルガードにビオラは称賛せざるを得ない。


「奇襲で数を減らしてこの状況……こちらの動きはある程度予想して準備していたってことなんでしょうけど、それにしても過剰戦力ね。一切隙を見せるつもりはないってわけ? 流石伯爵の地位まで行った人間は格が違うわね」


ビオラはゼルガードのことは調査しており、ラピーシア王女からも彼のことを聞いていた。


「ゼルガード伯爵は非常に堅実(けんじつ)聡明(そうめい)な方です。当時治安が荒れていたスカリフォーの町を任せられるとすぐに町の治安を回復させて、安全な港町にすることでスカリフォーの町を発展させることに成功しました。わたしくの個人的な意見としましては不正をするような方とは思えない人です。相手にする時は注意してください。かなりの強敵だと思います」


ビオラは初手でラピーシア王女の言うことは正しかったと理解させられた。しかし情報を得たからこそ突破口がある。


「終わりか……がは!? 何!?」


「他愛ない……ぐ!? き、貴様!? どうして生きている!?」


「この程度か? ぬ!? どういうことだ? ッ!?」


「……一人だけ見すぎ」


ゼルガード伯爵邸にいる強者たちに一度は倒させた『アルバ』のメンバーが油断した敵に不意打ちして撃破する。次郎吉の痛みを肩代わりするソーサリーファクトによる初見殺しが炸裂した形だ。更にクインは透明のソーサリーファクトを使用して至近距離から鏃を雷速で飛ばして暗殺する。


この手に持った物を雷速で飛ばすソーサリーファクトは次郎吉が作製した物じゃない。武器製作専門の魔道技師が作製したものでクインはこれの愛好家だったりする。


これらが通用したということは次郎吉のソーサリーファクトの情報を得ることにゼルガードは失敗していることを意味している。


これが堅実で聡明な人間の突破口。常識から外れた奇想天外なことには弱い。ぶっちゃけ言うとそんなことはどんな人間も弱いといえば弱いのだが、目の前で起きたことを理解しようと考えてしまうのが頭が良い人の弱点となりえる。


実際に報告を受けているビオラはゼルガードが屋敷にいる人間を引かせて守りを固める動きを取ったことを知る。これは初見殺しを見事に対処したメイド長からゼルガードに報告が行われた結果だと思われた。


「今回の一件であたしとゲオリオはジロキチに頭が上がらなくなっちゃうわね……そんなことするタイプじゃないのが救いかしら? 今がチャンスよ。全員地下に向かって」


『全員でですか!?』


「全員でよ。一階に残していても倒させるだけだわ。それならまだ戦力を集めて真っ向勝負したほうがまだ勝機がある。切り札もあることだしね」


『わかりました。地下に向かいます』


次郎吉は組織とかに積極的に関与するタイプじゃない。勝手にやってくれ。こっちはこっちで勝手にやらせてもらうタイプだ。なので今回の事件でビオラと次郎吉の関係が変わることはない。


そして『アルバ』のメンバーが地下に続く道がある部屋に入ると待ち伏せを受けるがこれをメンバー全員で対処して地下に降りる。すると真っ暗な大広間の部屋に到着し、灯りが付くとガルザと四人の用心棒がいた。


「待ってたぜ? 予想通り仲間を助けに来たな」


「クイン? あいつか?」


『アルバ』のメンバーの一人がゲオリオを倒した獣人かどうかクインに確認を取る。


「……間違いない。あの時の獣人」


「俺のことを知っているってことはお前さんがあの時逃がした暗殺者だな? 悪いが死んでもらうぜ? 俺のことを知っている奴らを生かしておくわけにはいかないんでな!」


ガルザがそういうと地面を蹴って、大剣を抜いてクインに襲い掛かる。それに対してクインは玉型のソーサリーファクトを手に持ち、前に差し出す。


ガルザがクインを狙って来るのはビオラは予想していた。何せ獣人の存在を確実に知っているのはクインだけだからだ。だからまずクインを最初に消しに来るのは相手からすると当然の判断と言える。だからこそこちらの切り札をビオラはクインに託したのだ。


「……今!」


『おとー! やめてー!』


玉型のソーサリーファクトから最愛の娘の声が聞こえて、クインに迫っていた大剣が止まる。


「その声!? エメリか!?」


『そうだよ! 私だよ! この人たちに助けてもらったの! だからもうそんな人間の味方なんてしないで!』


「……詰めが甘いな。娘を助けたぐらいじゃ俺を止めることはできねーんだよ!」


再びガルザは大剣を振りかぶったが別人の声がソーサリーファクトから聞こえてくる。


『やはりわたしくの責任でもあったのですね。ガルザ様』


「巫女様!?」


ゲオリオを圧倒したガルザが巫女の声を聞いて、驚きの顔を浮かべた。そして巫女がガルザに告げる。


『わたしくとエメリは今、あなたと敵対している組織に保護してもらっています。他の獣人も島で暴れている頃でしょう。あなたを縛る物はもうありません。諸悪の根源を断つことに協力してくれますね?』


「もちろん。仰せのままに」


ガルザはそういうと振り返り、殺気に満ちた顔を四人の用心棒に向ける。


「お前!? 裏切る気か!?」


「ゼルガード様に立てついて無事でいられると思っているのか?」


「そいつはこっちの台詞だな。俺たちをこんな目に合わせておいて生きていられると思ってないよな? お前ら!」


『やっちゃえー! おとー!』


ガルザが娘の応援を背にして用心棒たちに襲い掛かる。勝負は一瞬だ。用心棒たちも魔法で応戦したがガルザの突撃を止めることは出来ず、接近戦となり、ソーサリーファクトでガルザと戦ったが人間が接近戦で獣人に勝てるわけがなかった。


「まず一匹! 次はてめぇだ! そんな甘っちょろい攻撃が俺に通用するとはおもってねーよな? おら! 次! 最後! お前は俺たち獣人を侮辱したよな? 特別に握りつぶしてやるよ」


「や、やめ……が!? ……あ、ああああーーー!? やめろ! この化け物!」


「よくわかってるじゃねーか。お前らはその化け物を敵に回したんだよ!」


最後の一人がガルザの大きな手で顔を潰されて倒された。それを見た『アルバ』のメンバーは戦慄したと同時にゲオリオが負けたという事実を受け入れる。


「つ、つえー……」


「これが獣人の強さ……」


「ゲオリオさんはこんなのを相手にして、仲間一人逃がしたのか……」


ここでガルザはクインのところにやって来ると頭を掻きながらクインに聞く。


「あいつが俺よりおっかない奴がいると言っていたから少し期待をしていたがまさか本当にやってのけるとはな……お前がやったのか?」


「……違う。あなたの大切な人たちを救い出した人は疲れて倒れてる。わたしはただ彼に仕事の依頼をしただけ。あなたをなんとかしないとこちらに勝ち目はないから」


「なるほどね。お前たちの狙いは仲間の救出だな? ついてきな。案内してやるよ。ただしあいつと戦うことになることだけは覚悟してくれ」


ガルザの言葉に『アルバ』のメンバーは驚愕する。それはつまりゲオリオが敵の手に落ちたことを意味していたからだ。そんな中、クインは覚悟を決めた顔をガルザに向けて言葉を返す。


「……覚悟は出来てる。ゲオリオはわたしが助け出す!」


「いい答えだ。嬢ちゃん」


そう強く返すクインをガルザが褒めて、『アルバ』のメンバーは奥の部屋に向かうのだった。

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