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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
34/38

#34 ウィンバース宰相の狙い

次郎吉とハゲッツの初対戦してから数日後、次郎吉たちの家に一匹の(ふくろう)が来た。


「なんだ? この鳥?」


「エルフの使い魔です」


「使い魔? 初めて聞く名前だな」


「人間でいうと旦那様が作った鼠の姿をした盗聴のソーサリーファクトが一番近いと思います」


プラムの説明によると使い魔とは魔術で作られた魔力生命体のことらしい。生命体と言っても生きているわけじゃない。今回の梟の場合だと魔力を梟の形にして質量を与えることで梟を再現した代物だ。


ただこの梟に対して洗脳の魔術で命令を付与することで生命体のように動かすことが可能となる。洗脳の魔術は本来脳に対して強制的に別の命令を実行させる魔術なのだが、使い魔で使われている技術は脳がない相手にも命令を出来るように魔術の改良がされている。


これを使うことで遠く離れたプラムのところに手紙を届けさせるという伝書鳩のようなことが出来るように成功しているわけだ。


「ご苦労様でした」


そういうとプラムは魔法陣を展開させて、梟は消えていった。これでプラムの元に無事に手紙が届けられたことを魔術を使用した者が気付けるらしい。


「たいした魔術だな。これで結構人間の動きを探っていたりするのか?」


「していますね。使い魔に視界を共有する魔術を使えば人間の生活を見ることが出来ますし、同じように聴覚を共有すれば音も拾えます。その代わりに術者はその場から動けなくなってしまうんですけどね」


かなり精密なコントロールが要求される魔術なのだろう。次郎吉も話を聞いているだけで大変さを理解できたほどだ。


しかしこれは人間が全てしているからそうなるだけだ。ソーサリーファクトと組み合わせれば色々出来そうな気がした次郎吉であった。


届けられた手紙を次郎吉が確認すると王族宛ての手紙であることを確認し、ビオラに連絡をするとビオラが直接次郎吉たちの家に来ることとなった。流石に重要度が高すぎる手紙と判断したようだ。無事にビオラが家にやってきてビオラに手紙を預けた。そして数日後、王族に手紙が届けられて、また数日が経過してからビオラから通信のソーサリーファクトを使って連絡がきた。ここで手紙の内容が次郎吉たちにも共有されることになった。


「ダークエルフの薬のレシピが悪い人間に渡った可能性が高いか……プラム、ダークエルフの薬って人間でも作れるものなのか?」


「どんな薬を作りたいかによります。簡単なものなら誰でも作れますし、今栽培している薬草のようにダークエルフが生み出した魔術でしか作れない薬草もあります。危惧されるような危険極まりない薬は人間の力のみで作るのは不可能じゃないかと」


ぶっちゃけ人間の世界に既に毒薬や睡眠薬などの薬は既に存在している。ダークエルフに罪を擦り付けたいなら話は分かるが戦争の火種をわざわざ作るかちょっと疑問。それよりもダークエルフにしか作れない特殊な薬を欲していると考えたほうがしっくりくる。


「鼠小僧はどう考えているのかしら?」


「俺っちが宰相なら狙うのはこいつだな」


次郎吉が新聞を広げてとある記事を見つけて投げた。ビオラが見るとそこには次郎吉より年下のバルバリス王国の王女の姿が載っていた。


「プラムの話によるとダークエルフの薬の中には精神を殺して操り人形にすることが出来る薬があるらしい。そしてバルバリス王国では彼女の両親は先の戦争の責任を取る形で死刑されている。その結果、一度王座を譲った王様が再度王様をしている状況だ。高齢でいつ命を落としてもおかしくない」


「そうなると王位継承権は唯一の血筋として残っているのは王女行くことになるか」


「王族の血筋の排除を狙うより操り人形を使って、国を思うがままに動かしたほうが宰相としては色々良いことがあるだろう。少なくとも国民受けはするだろうからな。最悪何か起きたときは王女に責任を押し付ければいいわけだし」


「確かに政治のトップである宰相なら狙いそうなことね……この意見大切にさせて貰うわね」


そういうとビオラが消える。それから次郎吉はソーサリーファクトの開発と泥棒を繰り返すことになる。その過程でハゲッツと何度も対決した。そんなある日の夜。二人が建物の上で視線を交えていると外野が騒ぐ。


「何やっているんですか! ハゲッツチーフ! そんな奴、早く捕まえちゃってくださいよ!」


「「うるせーよ! 男の勝負に口出しするな! ぼーやはママのところにでも行ってろ!」」


「え、えええええ!? 子供にぼーや扱いされたーーー!?」


ハゲッツの部下がショックを受けている中、ハゲッツは次郎吉に話しかけた。


「やっぱりお前とは意見が合いそうだな。それにようやく話したか」


「おたくの部下のせいだろ? チーフならちゃんと教育したらどうだ?」


「耳が痛い話だが、そういうのが向いている人間に見えるか?」


「見えねーな」


二人が構えを取る。


「俺の名前はハゲッツ。お前さんの名前は?」


「鼠小僧」


「ま、偽名を言うわな。それにしても鼠小僧か。今のお前にはぴったりな名前かも知れねーな!」


ハゲッツが距離を詰めて、拳を放つが次郎吉は飛んで躱し、手の甲からスライムのロープを別の建物に向かって放ち、建物に粘着する。


「そいつはどうも」


次郎吉が手を引くと次郎吉はスライムのロープが粘着した建物に引き寄せられる。スライムには伸びる性質と元に戻ろうとする性質がある。これはその両方を利用した水属性のソーサリーファクトだ。しかしこれだと速度はない。次郎吉がいるのは空中だ。


「お前は本当にびっくり箱だな! だが、それだと逃げ場がないぞ!」


ハゲッツがいつものよりに高速で空を移動して次郎吉に拳を放つと直撃し、次郎吉は建物を貫通して地面に落下すると地面が砕けて、土煙が発生する。


「手ごたえあり。これで終わりか?」


「決まったー! みんな! あそこだ! 泥棒を取り押さえろ!」


しかしその場所には次郎吉の姿が無かった。


「え? そんなバカな……建物も地面も壊れている。あれは幻じゃなく間違いなく本物だったはず……は? え? どうやって動いたんだ?」


普通なら死んでいる一撃だ。良くて全身骨折、動ける状態なはずがない。しかし現実は非常でそこには次郎吉の姿がなくソリスの人たちは混乱状態だ。しかしそんな中、ハゲッツは笑う。


「ははははは! マジかよ! あぁ! そうだよな! これで終わりにさせてくれないよな! 鼠小僧!」


「ハゲッツチーフ。あいつが何をしたかわかりましたか?」


「いいや。全くわからん。俺の拳は確実に鼠小僧を捉えていた。その状況証拠も残っている。ただこの状況をみると全てのダメージを受けたにも関わらず鼠小僧はピンピン動けることになるな」


「そんなバカな!? そんなの人間やめてますよ!」


しかしハゲッツの言う通り、状況をみるとそう判断せざるおえないソリスであった。一方逃げ切った次郎吉が言う。


「お~。おっかね~。拳。痛みを肩代わりするソーサリーファクトが無かったら死んでたぞ」


次郎吉の腰に取り付けられていた人形型のソーサリーファクトが五つも壊れている。ハゲッツのパンチで一つ、建物の貫通で三つ、地面の激突で一つ使った。


これはプラムの闇属性の呪いの魔術を応用したものだ。本来は自分が受けた痛みを呪った相手に返す魔術で死ぬ痛みを相手に返せば相手が死ぬ場合もある非常に強力な魔術である。それを自分が受けた痛みをソーサリーファクトが受けるように改良した。


「実験するとはいえ、あんな拳には二度と食らいたくはねーな」


この泥棒の事件がきっかけとなり、この世界で初めて鼠小僧という名前が世間に知られるようになる。そのニュースとなった新聞を次郎吉は家に帰ってから見る。


『貴族を狙う悪しき泥棒、不死身の鼠小僧現る』


「誰が不死身だ!」


普通の人間なら死ぬ攻撃を使ってきたソリスに怒り心頭になる次郎吉であった。それから数年経過して何度もハゲッツと相まみえることになる。その結果、ハゲッツは貴族の不正を発見することが多くなり、鼠小僧よりハゲッツのほうが人気者となっていく。


「またしてもお手柄でしたね! ハゲッツチーフ!」


「何がお手柄だ! 鼠小僧め。わざと貴族の部屋を荒らしやがって……あんなことをされたらソリスとしては調べざるおえん」


「わざとですか?」


「間違いなくな。あいつの犯行は基本的に証拠を残さない完全犯罪を狙うタイプだ。それが悪質な違法行為をしている奴に限って何故か証拠を残してやがる。まるで俺たちにこの貴族を調べろと指示しているようにな」


泥棒に利用されて英雄になってもハゲッツは何も嬉しくはない。それを次郎吉は分かって仕掛けているのもハゲッツは分かっている。だから気に食わないのだ。


「どうしてそんなことをしているんでしょうか?」


「わからん。貴族に何か恨みがあるのか。正義の味方ごっこをしているのか。ソリスという組織に不満があるのか。考え出すとキリがない。ただ何か目的があって動いているのは間違いないだろう。それが分かればあいつを追い詰めれるんだがな」


ここで部下がハゲッツに進言する。


「ハゲッツチーフ。ソーサリーファクトを使ってください。ハゲッツチーフがソーサリーファクトを作ったら、あんな奴、すぐ逮捕出来るはずです」


ハゲッツは次郎吉との対決ではソーサリーファクトを使っていない。あくまで魔術師のソリスとして戦っていた。これに対してハゲッツは答える。


「そいつは甘い考えだな。ソーサリーファクトを使っただけで捕まえられるような相手ならあいつはとっくに捕まっているはずだぜ?」


「し、しかし! 確実に楽になるはずです!」


「確かに俺の負担は減るだろうな。たがその代わりにあいつを捕まえる難易度は跳ね上がるぞ? あいつは間違いなく一流の魔道技師だ。そんな奴を相手に既存のソーサリーファクトを使って勝負になると思うか? 俺は思わねーな」


これがソリスたちが次郎吉を相手に手こずっている理由だ。ソリスが使うソーサリーファクトが全部次郎吉にバレているから対処される。それを理解しているからハゲッツは魔術にこだわっていた。


「俺があいつを捕まえるためには魔術で勝つしかない。これは絶対に譲らん。今後ソーサリーファクトのことは俺に言うな。わかったか?」


「は、はい!」


ハゲッツは部下に釘を刺して次郎吉との対戦を楽しみにすることにした。

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