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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
31/38

#31 魔霧の森

次郎吉とプラムはグソウが所有している馬車に乗せてもらって商人として国境を通過するとバルバリス王国に入るとバルバリス王国と魔霧の森に近いパトフの町で別れることにした。


パトフの町は国境に近い町なので交通の要所として発展したが周囲を王都シルファードのように壁で囲まれている。これは過去の戦争の名残であり、バルバリス王国が武力国家であるが故にこのような町になった。簡単に言うとこの町を守るために城壁を作って敵国に突破されないようにしたわけだ。


次郎吉たちは一日目は宿屋に泊まり、二日目に露店で商品を売ると二日目の夜に行動を起こした。夜になると透明化するソーサリーファクトを使用して、ビオラさんが経営する雑貨屋さんのドアをノックする。


「鼠小僧」


次郎吉が小声でそういうとドアが開くと『アルバ』の構成員である若い女性が現れる。


「お待ちしておりました。どうぞ。中へ」


次郎吉たちが家の中に入るとソーサリーファクトを解除する。それを見た『アルバ』の構成員は言う。


「見事なソーサリーファクトですね。本当に見えません」


「そいつはどーも。監視は完全に撒いたからよろしく頼むぜ?」


当たり前の話かもしれないが次郎吉たちは町に到着した瞬間、監視されていた。商売目的といっても密偵を疑うのは国としては当然の判断と言える。ただ相手が悪かった。泥棒は見られることに特に敏感だ。何せ見られていたら、泥棒は基本的には出来ないからね。


故に監視が交代で変わる夜の一瞬の隙を次郎吉は見逃さなかった。いくら透明化のソーサリーファクトを使用してもドアの開け閉めなどを見られていたら終わり。誰もいないのにドアが開いて閉まる謎の現象が見られると警戒される。


「お任せください」


朝になると次郎吉たちは構成員の馬車に乗って、町を簡単に出る。流石に現地人だと警戒は薄いようだ。そして魔霧の森の近くの村を通過して森の近くで次郎吉たちは移動中に降りる。


「ここまでは順調でしょうか?」


「恐らくな。ここからはプラムが頼みだ。頼むぞ?」


「お任せください。旦那様は大人の姿になるソーサリーファクトを使用してください」


「分かっているよ」


次郎吉がソーサリーファクトを使用すると次郎吉が勝手に設定した大人のイケメンに変身する。


「どうだ?」


「旦那様の面影が全くありませんが成功はしています」


「それでいいんだよ。面影あったら正体バレるだろ?」


「それはそうですが、それなら大人になるソーサリーファクトという呼び名はやめたほうがいいと思います。がっかりしてしまいます」


プラムとしては大人になった次郎吉を見てみたいので、それが完全に別人になると文句の一つぐらい言いたくはなるだろう。


「そいつは今後の楽しみに取っておくんだな」


「そうですね……そうします。では、わたしくの後についてきてください」


プラムの案内で霧が発生している森に入る。ここが魔霧の森。この霧は自然発生させているのではなく、エルフの魔術で方向感覚を狂わせる効果があるらしい。


「プラムの話だとそれを人間側が突破したって話になるが」


「その通りです。どうやってかはわかりませんが恐らく魔法を無効化するソーサリーファクトのせいだとわたくしは思ってます」


「そこまで万能なのか疑問だがとりあえずそれはいいか」


魔霧の森の魔術はこの森全体を覆っている。これはかなり大掛かりな魔術だ。それを複数のソーサリーファクトで無効化しても魔術のほうが大きすぎて無効化には失敗する。


複数ではなくかなり多くのソーサリーファクトを用意したならわかるが次郎吉の計算ではそれを用意するためには国家レベルの支援が必要じゃないかと結論づけた。


するとここで森のあちこちから足音が聞こえてきた。するとプラムが大声で訴える。


「わたくしはダークエルフのプラム! 悪い人間に捕まり、こちらにおられる良い人間に助けていただき帰ってきました!」


プラムがそういうと駆け寄って来る足音が聞こえてくる。そんな中、次郎吉の耳には後ずさる音が聞こえる。


(なぜプラムの名前と声を聞いて引いた?)


次郎吉が怪しんでいると霧の中から弓や杖で武装した男女混合のエルフたちが姿を見せた。


「プラム?」


「本当にプラムか?」


「はい。わたしくは本物のプラムです」


プラムはそういうと魔法陣を展開する。その魔法陣を見たエルフたちは彼女が本物だと理解すると何人も駆け寄って来た。


「本物のプラムだ! 馬鹿! 死んだと思っていたのよ!」


「よく無事に帰って来たな。おーい! プラムだ! プラムが帰って来たぞ! 急いで村の連中に知らせに行くんだ!」


「もちろんよ!」


次郎吉はプラムが差別を受けていたのではないかと心配していたがこの様子では大丈夫そうだと判断する。そしてプラムが次郎吉のことを改めて伝えると次郎吉が幻の姿を使っていることに理解を示したうえで村に案内された。


エルフの村はかなり太く高い木を使ったツリーハウスの村で木自体も家にしているほどの太さがある。そしてツリーハウス同士は木の橋で家同士を繋げる道になっているようだ。


「これは凄いな」


「人間だと見慣れない光景でしょうね。そもそも人間の世界にはここまで大きな木は生息していないらしいし」


「随分人間の世界に詳しいんだな?」


「それはそうよ。だって、人間と生活しているエルフもいるだもん」


次郎吉がこれに驚くが逆にプラムが次郎吉との関係でそこまで抵抗がない理由が分かった気がした。詳しく話を聞くとプラムと同じで人間と出会って惚れるケースは過去に何度もあり、現在でも今のプラムのように姿を人間と偽って人間と生活しているエルフが数は少ないがいるそうだ。


(エルフのこととか聞かないほうがいいと思って聞かなかったが案外大丈夫だったんだな)


次郎吉がそんなことを思っているとプラムに年老いた高級な服装をしているエルフの集団がやって来た。


「プラムや……よく無事に帰ってきてくれた」


「この人間のお人のおかげです。長老様、長老会の皆様」


「うむ……」


エルフの社会は長老がトップでその下に長老会がある構図だ。長老会は日本でいうところの国会に相当する組織でこの村の政治などを話し合って決めている。もちろん選ばれるのはエルフたちから人気や実力を総合的に評価された人のみなのでこの村にいるエルフたちからは尊敬される組織と言える。


長老と呼ばれた老人のエルフがプラムに魔法陣を展開すると長老はプラムの記憶を共有し、プラムに何が起きたのか理解する。


「大変じゃったのぅ。皆の者、この人間は大丈夫じゃ。プラムの命の恩人をもてなす準備をせよ。そこで此度の要件とあの事件についてこちらから話せることを話そう」


こうして次郎吉の歓迎会が開かれることになるのだった。

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