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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
27/38

#27 新たな拠点ハニットの村

次郎吉はしばらくビオラが経営する旅館や宿屋で隠れて生活することになった。これは『アルバ』の密偵からソリスの動きに報告が来たためだ。


「国と関りがある組織だからソリスの動きは筒抜けなわけだな」


「全て思い通りに行くはずはないけどね。現場判断の動きとかはどうしてもないわ」


「それはそうだろうな」


ソリスがわざわざ国からの指示を待っていたら、犯罪者は逃げ放題になってしまう。だから基本的にはソリスの判断はソリスのトップや現場で指示するチーフに委ねられる。そこには流石に介入出来ないようだが、ソリスの内部情報が流れているところを見ると国以外にも内通者が入り込んでいるんだろう。


情報によるとエルバーン子爵の一件は貴族たちからソリスに対して強い不安を残す結果になった。結果だけ見るなら泥棒と殺人の両方を許してしまった形だ。事前にハゲッツなどのソリスが捜査で訪れていたのも不安材料となり、貴族たちからさっさと犯人を捕まえろと指示が出ているらしい。


「貴族様たちは命令して、上手くいかなったら怒りをぶつけるだけでいいから楽だよな」


「あたしもそう思うわ。それで真面目に会社運営している社長まで同列にされちゃうんだからたまった物じゃないわよ」


経営者には経営者なりの苦労があるんだなと次郎吉は思った。しかしぶっちゃけ貴族の命令はソリスからするとどうでもいいことだ。ソリスからすると素人は口出しするなという話で終わるからね。


ただ今回ソリス側で問題となったのが神父の一件だ。神父の一件を新聞で知った市民の怒りが爆発した。何せソリスが犯罪集団と汚職関係にあったのだから市民から叩かれるのは当然だと言える。この信頼を回復させるためにソリスも必死になっているわけだ。


「あなたは引っ越し先が決まるまでどうするのかしら? 怪盗さんや他の泥棒さんは動いているようだけど」


他所(よそ)他所(よそ)さ。俺っちはわざわざソリスに功績をあげるような真似はしたくないんでな。引っ越し先が決まった後は新しいソーサリーファクトの作製で時間潰しだな。プラムは何かするか?」


「そうですね……お力になれるかわかりませんが薬の生成をしてみようかと思います。旦那様のお役に立てそうな薬がいくつかありますので、興味を持ってくださる自信ありです」


プラムの次郎吉の呼び方は私生活では旦那様で固定された。ご主人様も捨てがたいが上下関係が旦那様よりある気がした次郎吉には合わなかったのが原因だ。


「そいつは楽しみだな」


次郎吉はソリスの現状がいつまでも続くわけがないことを知っている。何せそれが出来るなら最初からやれって話になるからだ。それが今まで出来ていないのは練度やソリスの人数などに問題を抱えており、永続的な警戒態勢の継続は不可能であることを意味している。


逆にソリスと勝負がしたい怪盗は今は楽しめる状況になっている。何せソリスは功績を欲しがっている状況なので死に物狂いで自分を捕まえようとしてくる。怪盗にとっては最高の舞台だろう。だから今、怪盗は活発に動いているわけだ。


しかし熱は長く続かないと次郎吉は良そうしている。怪盗や何も知らない泥棒が逮捕されるとソリスは功績を得たので、市民の信頼は回復するし、時間が経過するだけで市民の怒りの熱は消えていくものだ。そうなるとソリスの熱も冷める。次郎吉はその時を狙えばいいだけの話となっている。


「有意義な時間の使い方よね」


「人生の時間は限られているからな。暇な時間を楽しむのも乙な物だが、俺っちは楽しい時間を過ごしたいのさ」


「子供が言う言葉じゃないわよ……というかあなたやっぱり大人でしょ?」


ビオラが次郎吉の核心を聞くと次郎吉は答える。


「さぁな? 大人が子供になる魔術なんてあるものなのか?」


「あたしは聞いたことがないけど、あなたのことを見ているとあるとしか思えないのよ。プラムちゃんはどう思うかしら?」


「わたしくの考えだと呪いの魔術に人間を動物の姿に変える魔術などがありますので、その類の魔術だと思っていました。ただ今のところ旦那様が元の姿に戻ったところを見たことがありません。旦那様が使っているソーサリーファクトというものなら永続的に効果を発動できるのかもしれないと思ってましたが」


「それは無理よ。ジロキチがこっそり魔力バッテリーを交換していたなら話は別だけど」


プラムはそれを否定する。それだけここ数日プラムは次郎吉のお世話をしてきたのだ。それを聞いた次郎吉はプラムがトイレにまでついてきたのを思い出してげっそりする。本当に容赦なかった。ただ男としてシャワー室での体拭きや一緒に寝ることは嬉しくないわけがない。


更にビオラから薬の話も出たがダークエルフの薬には子供から大人になる薬はないらしい。老けさせる薬はあるらしいがそれは成長してからでないと効果がない。それだけ子供を成長させるというのは理論的に難しいって話になるのだろう。


「本当に謎だけど、話すつもりがないことは分かったわ。あたしとしてもあなたが子供になってしまった理由はどうでもいいもの。それよりも一度どこかで王都シルファードに来て欲しいわ」


「俺っちはいつでもいいがプラムは無理だな。魔術の維持が出来ん」


どれだけ優れた魔術師でも一人で長時間の魔術使用は不可能だ。それはダークエルフでも例外はなかった。魔力コアで魔力を生み出している以上、魔力は有限だ。


「そうね。それに王都の警備は他の町と比べると別格よ。王都で魔術を使っているところがバレたら即アウトでしょうね」


「そんなところに泥棒の俺っちを行かせるのかよ」


普通なら行きたくはない。しかし次郎吉はまだソリスに顔バレしていない。それなら普通に王都に入れるはずだとビオラは言った。むしろいつ顔バレするかわからない状況だと王都に入れるタイミングは今しかないというのがビオラの本音だ。


結果として次郎吉の引っ越しが終わってから数日後に予定が決められた。そんなわけで次郎吉の引っ越し作業が急ピッチで進められた。その間、次郎吉はアーベルトのお店を守ることにした。流石に放置は出来なかったのだ。


そして遂に次郎吉たちの新しい拠点が出来たので、アーベルトのお店はビオラに売り渡す形で管理を任せると引っ越しを始めることになった。最終的にはコーネが大人になった時に管理を任せる予定らしい。次郎吉もそれのほうがアーベルトが喜ぶと思ったので、了承した。


次郎吉とプラムの家はシルファリッド王国の左側には海が広がっており、その海とカリアの村との中間地点、ファクトライドの町から見ると上側、シルファリッド王国の下側にあるオジム山脈が見える小さな農村であるハニットの村が選ばれた。


オジム山脈からファクトライドの町に鉱石を運ぶ交通路の一つの村で魔道技師として生活するには結構いい立地となっている。難点があるとするなら場所が高地であり、基本的に気温は寒い。それに加えて周辺に森が無いので、冬場は結構厳しいらしい。


特産品はオジム山脈から流れてくる綺麗な天然水を用いた高原野菜と家畜としてニタニタというこの世界特有の動物が有名だ。


ニタニタを一言で言うなら羊の性質を持つ犬だ。毛の性質は羊とほぼ同じで羊の毛より少し軽い特徴があり、毛が伸びる速度も羊の二倍で食べ物は草となっている。ただし羊と違って乳は使えないし、肉としても食べることは出来ない。完全に衣服目的で育てられる家畜だ。


そんな動物が家畜として優秀なのかといかれると意外と優秀。まずこのニタニタは軽く温かい服を作るのに適しており、絨毯やカーテン、毛布などに使われる高級素材らしい。高級な理由がニタニタは非常にデリケートな動物で空気が綺麗で上質な草以外食べれないという特徴がある。


この条件に合う地域が非常に少ないことから高級素材となっており、ハニットの村の経済を支えている。そんな場所に引っ越してきた次郎吉たちは村人に挨拶回りをする。もちろんプラムは人間の姿に化けている。


普通のあいさつ回りをしている最中に若い男女が暮らしている家の引き戸が壊れているのを次郎吉は見つけると子供モードで声を掛けた。


「そこのドア、壊れてるんじゃない?」


「あぁ……ずっと前に壊れたんだよ。でもうちには直すお金が無くてね」


若い夫が苦笑い気味に言う。予想通りの返答に次郎吉は返答する。


「俺っちがただで直そうか? お兄さん。家建てるときに余った木材貰っているから修理できるよ?」


「え……君が?」


若い夫が不安げな様子を見せる。そりゃあ子供がいきなりドアを直せると言っても信じることは難しいだろう。するとプラムがフォローしてくれる。


「坊ちゃん様は素晴らしい腕前を持っているので大丈夫ですよ」


次郎吉の外向けの呼び名は現状だと坊ちゃん様になった。どうしても様は付けたいと譲らなかったプラムに次郎吉が負けた形だ。


「けどよ……もしもっと壊れたりしたら」


「そしたら俺っちが弁償するから大丈夫だよ」


これを聞いた若い夫は子供に弁償されてもと若干引き気味だったがプラムが笑顔で頷いているのを見て、次郎吉に任せることにした。すると次郎吉はすぐに修復して見せた。


「ざっとこんなものかな? どう? 兄さん。使い心地は?」


「お? おぉ……ちゃんとスムーズに動く! いや、大したもんだな。父親が大工だったりしたのか?」


「まぁ、そんなところかな?」


実際は生前で仕事にしていたので、直せる技術と知恵はちゃんと持っていた次郎吉である。


「そりゃあ、たいしたもんだ」


「ねぇねぇ。僕? もしかして雨漏りとか直せるのかしら?」


次郎吉の腕前を見ていた若い奥さんが聞いてきた。


「見てみないとわからないけど、直せる素材があったら、直せるかな?」


「本当! 実は友達の家が雨漏りに困っていたのよ。出来れば直してくれないかしら?」


「任せてよ!」


次郎吉とプラムは村の修理とソーサリーファクトの修理をすることで次郎吉とプラムは村に馴染むことに成功した。普通なら大工ぐらいは村に一人いるものだが、いいのか悪いのかこの村には大工も魔道技師もいなかった。


次郎吉はこれらをタダでしていたのだが流石の村人たちもお返しは何かしないといけないということで新鮮な野菜や服をくれた。


「いい村ですね」


「あぁ……その裏でダークエルフの魔術を使ったソーサリーファクトやダークエルフが育てている魔法の薬草が作られていることに我ながら恐怖するぜ。くぅ~美味い!」


次郎吉はプラムが作ってくれたシチューを飲みながら言う。プラムは野菜関係のご飯を作るのが上手だった。残念ながら肉や魚料理は作ったことがないらしいので、そこは次郎吉が担当している。


そしてダークエルフが育てている魔法の薬草というのがダークエルフの薬の素材で草属性の魔術で特殊に配合された現実には存在しない植物を家の地下で育てていた。ある意味次郎吉たちの家の地下は『アルバ』のどの秘密の拠点よりも恐ろしい拠点になっていると言えるのかもしれない。


「ありがとうございます。お口にあってよかったです」


次郎吉たちはしばらく村での平和な生活を優先することになったのがその前に次郎吉には王都に行く用事がある。生活が軌道に乗ったことでこのタイミングで次郎吉は初めてシルファリッド王国の王都シルファードに向かうことになるのだった。

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