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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
19/38

#19 捕まったコーネ

次郎吉はホーキングの爺さんを持っている間にアーベルトのソーサリーファクトを全て作業場に移すと入口に日本語による暗証番号がある防犯のソーサリーファクトを取り付けて作業場に入れるのを自分だけに限定した。


これは生前にアーベルトにお願いされたことだ。


「儂にもし何かあったときは儂のソーサリーファクトを使うも自由。使わぬなら誰にも触れらないように管理してくれ。最悪破壊してもらっても構わん」


「それは自分でやればいいんじゃないのか?」


「儂もそう考えたのじゃが、これらは儂が生きた証だと思うと壊せなくてのぅ」


「それを俺っちに聞かせるなよ。破壊するわけには行かなくなるだろ?」


そんな会話を二人はしていた。なのでこれはこれから出かけるとなると留守の間に騒ぎを聞きつけた悪人がアーベルトのソーサリーファクトを狙ってくる可能性もゼロじゃない。むしろ高いと言っていいだろう。


それならこの世界の人間には簡単に解けない暗証番号と罠を設置しておくのが一番有効な手だと次郎吉は考えた。日本語も時間をかければ恐らく解読は可能だ。しかし専門家でも全く新しい言語をすぐ解読するのは恐らく不可能。よほどの天才ならあるかも知れないがそんな人物が悪人になるケースはかなり低確率だろう。


「これでよし。後は遠征に向けての準備だな。あの時は使うつもりはなかったんだが相手が魔術師ならこっちも手加減するわけにもいかない。悪いがアーベルトの爺さん、あんたのソーサリーファクトを正しく使わせてもらうぜ」


相手がわざわざ魔道車を使ったところをみると遠出することはほぼ確定だ。そう考えた次郎吉は食料や飲み物を確保しつつ、持っていくソーサリーファクトを吟味しているとホーキングの爺さんから連絡がきた。


「もしもし」


『ジロキチか?』


「あぁ。俺っちだよ。わかったかい? ホーキング」


『わかったぞ。ジロキチのバッチはべリアの村の村長の証で間違いない』


べリアの村と聞いて、次郎吉はグレスの町からファクトライドの町に旅した記憶が思い起こされた。荒野の町から移動した先の町の名前がべリアの村だった。べリアの村は小さい農村だった記憶しかない。そもそもあの村に魔道車は見なかったはずだ。


「べリアの村には行ったことあるがあそこの村長はそんな金持ちなのか?」


『村長ならお金はあるだろうが大金は持っていないだろうな。そもそもかなりの老夫婦だったはずだ』


ホーキングの情報が正しいなら怪しむべきは子供か孫になるだろう。ここからは直接現地で情報収集したほうが良さそうだ。


「そうなのか。凄くためになる情報だった。感謝するよ。ホーキング」


『私が出来るのはこの程度のことだよ。武運を祈る』


そういうと通信が切れた。これで目的地は決まった。次郎吉は準備を済ませると早速べリアの村に魔道バスを駆使して向かうのだった。



次郎吉はべリアの村に辿り着くと夜になってから村長の村を探ることにした。家には防犯のソーサリーファクトがなく、通常の二階建ての家だった。田舎の村に防犯のソーサリーファクトがないのはしょうがない。次郎吉はあっさりソーサリーファクト買っていたが本来なら非常に高級な商品でほいほい買えるものじゃないのだ。


次郎吉は屋根裏にから家の様子を伺うと老夫婦の日常的な会話が聞こえてきた。


(これは外れか?)


次郎吉の臭いにもその老夫婦は何も反応しなかったので、この村長たちは次郎吉の中では白となった。ただその日はこれ以外の成果は何もなしとなる。まぁ、そんなほいほい情報が手に入ったら苦労はしない。


翌朝次郎吉は村長の家族構成を聞くと50代の村長の子供が妻と一緒に王都に住んでおり、その息子が村長の家で暮らしている状況らしい。息子の年齢は20代という情報を得た。


「どちらも犯行可能だな……まずは息子のほうから調べるとするか。昨日家にいなかったことも気になるし」


そう決めたのだが、なかなか息子が帰って来ることはなく、動きがあったのは5日後だった。村長の家に息子が帰って来た。高級そうな腕時計やネックレス、ピアスまでつけている派手っぷりだ。


「お帰り。どこに行っていたんだい?」


「うっせーな。お前らには関係ないことだろ。俺様は疲れてんだよ」


そういうと息子は2階に上がり、自室で眠りに付く。


(随分素行が悪いな。そしてこれは当たりか?)


2階に上がってきてくれたおかげで屋根裏に隠れている次郎吉の鼻が反応を示す。血の臭いはしないが悪い金の臭いと女と焦げ臭い独特の臭いがした。この世界の洗剤は現代のように発展はしていない。この焦げ臭さがアーベルトの自殺の際についたものである確証はないが疑惑が発生したと言っていいだろう。


(泥棒がすることじゃないんだが、しょうがない)


次郎吉は家族が寝ている隙に玄関までいくと靴にアーベルトが作製した発信機のソーサリーファクトを取り付けて、その日を終えた。


次の日から次郎吉の息子調査が始まると早速息子が怪しい動きをしてくれた。村から離れると黒い魔道車が道に止まっており、息子はその車の運転を変わるとどこかに行ってしまう。


「道理で魔道車が村の中で見つからないわけだな」


仲間に送り迎えしてもらっているなら問題ないわけだ。次郎吉が発信機を追うと森の中から反応を示していた。


「怪しさ満点だな」


次郎吉が見つからないように道を避けて進んでいくと魔道車が複数止まっている洞窟を見つけた。


「盗賊団か何かか? こいつら」


次郎吉がそういう感想を持ってしまうのもしょうがない状況だ。とにかく次郎吉は気配を隠して夜を待った。すると馬鹿騒ぎする男の声と聞いたことがある女の声が聞こえてきた。


「嘘だよな? おい」


次郎吉は聞き耳を立てると会話が聞こえてきた。


「ぎゃははは! 縛られた女の前で食べる飯はうめーな! おい!」


「お! 腹の虫が鳴ったぞ。ほれ。ご飯食べたいならお願いしてみろよ。お尻、ペンペン」


「触るな! このくず男ども! あんたたちの飯なんているか! 今に見てなさいよ! あたしの仲間があんたたちを皆殺しにするんだから!」


「あはははは! やれるものならやってみろよ! その前にお前は女として終わると思うがな!」


女の声はコーネのものだった。どうやら敵を追いかけて捕まったらしい。これはもう捕まってもしょうがない。何せコーネはアーベルトの事件の時に顔も隠さず連中と追いかけっこしているのだ。顔を覚えられるのは当然と言えた。


「何をやっているんだ……あのバカ娘」


しかも男たちによるとコーネは車のエンブレムを頼りに探りを入れたところ連中に見つかり、捕まってしまったらしい。完全に罠に飛び込んだ形だ。


ため息をつく次郎吉だがアーベルトにコーネのことを頼まれたのをまた思い出す。


「厄介な小娘の世話を任してくれたな……アーベルトの爺さん。普通に恨むぞ」


次郎吉がそういうが次郎吉の脳裏にいつものように笑うアーベルトの爺さんの姿があった。


(そこが可愛いところなんじゃよ)


次郎吉にはアーベルトがそう言っているように聞こえた。それに対して次郎吉は苦笑いを浮かべると次郎吉の目つきが本気モードになる。


次郎吉は周囲の木を見て今の風向きを見ると背負っている麻袋からアーベルトが作製したボールタイプのソーサリーファクトを取り出した。


「俺っちのソーサリーファクトは使わないからな。あんたの娘を助けるためにあんたのソーサリーファクトを使うんだ。本望だろう?」


次郎吉の脳裏に笑顔で頷くアーベルトの姿を移ると次郎吉はほっかむりを装備する。


「さぁ、小悪党ども。鼠小僧がやって来たぞ」


次郎吉は物陰を利用して洞窟との距離を詰めると洞窟の正面にある魔道車に取りついた。そしてソーサリーファクトのスイッチを押して魔道車の下に転がすと次郎吉は後ろに離れる。


すると洞窟の中に甘い香りが漂ってくると全員寝てしまう。次郎吉が使ったのは草属性のソーサリーファクトで臭いを嗅いだ者を眠らすことが出来るソーサリーファクトだ。風向きが洞窟に向けて吹いていたので、外から洞窟の中に臭いが漂うこととなり洞窟の中にいた連中は逃げ場がなかった。


「おし」


次郎吉が鼻を抑えながらソーサリーファクトに近づくとスイッチを切る。その後ソーサリーファクトの臭いが完全になくなる時間が経ってから侵入する。


「くかー」


「くかーじゃねーよ」


敵と一緒にコーネも寝ていた。しかもその服装がやばい。


「なんつー格好で縛られているんだよ……こいつらの趣味か?」


コーネは服装は色は黒で超ミニスカートに最低限布で隠すところは隠して他は網タイツのような生地で覆っている服装だった。長めの靴下とミススカートにオレンジのリボンがあるのはコーネのこだわりだろう。


次郎吉は一瞬でコーネの手錠の鍵をピッキングで外すと次郎吉は木箱に目がいき、確認すると宝石や貴金属がいっぱい入っていた。その木箱の中に次郎吉は男たちが食べていた食料も入れると村長の息子の靴からソーサリーファクトを回収する。


最後に重さを緩和するソーサリーファクトを起動させてコーネと木箱を持つと洞窟の外に出た。


「一応泥棒なんでな。これでお前たちへの落とし前とさせて貰うぜ」


そういうと次郎吉はその場から雷速で姿が消えるのだった。



翌朝、村長の息子が異音が聞こえて目を覚ます。


「んん? なんだ? この音…は?」


息子の目の前に大きな黒い毛の塊がいた。それが動いて息子のほうを見る。それは口に血を付けた熊だった。そりゃあ見張りもいなくて火も消えてご飯があったら肉食の動物たちがやって来るのは必然と言えた。


「く、熊!?」


「グォオオオオオ!」


「ひ!? た、たすけ!?」


彼らがどうなったのか見つかるのはかなり後となる。何せ田舎の森の深くの洞窟で起きた事件だ。なかなか見つかるものじゃない。結局彼らは白骨化した姿で見つかり、動物に食べられたとのちの新聞のニュースに乗ることになるのだった。

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