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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
17/38

#17 仲直りの仲介と悲劇

次郎吉はコーネが走り去っていった方向に向かうとその先にある公園でブランコに乗っているコーネを見つけた。


「はぁ……なんであたしってばあんなこと言っちゃうかな……おじいちゃんが傷つくの知っているくせに……本当に自分のことが嫌いになる……はぁ」


「油断しているとパンツ見えるぞ」


「へ? うそ!? きゃ!? へぶ!?」


落ち込んでいるコーネの目の前にいきなり次郎吉が現れるとコーネはスカートを慌てて抑える。その結果ブランコのコントロールを失い、後ろ向きに回転しながら地面に落下した。


「あんた誰」


「あ」


「いた!?」


いきなり起き上がったコーネの背後から再びブランコが直撃して再び倒れこむ。次郎吉も気付いていたが間に合うはずがなかった。


「面白い人だな……あんた」


次郎吉はそういいながら動いているブランコを止めてあげる。そこでコーネはようやく無事に起き上がれることが出来た。因みに後ろ向きに倒れた際に次郎吉からはパンツ丸見えだった。


「誰のせいでこうなったと思っているの!」


「俺っちのせいに決まっているだろ。分かりきっていることをいちいち聞くなよ。時間の無駄だ」


「な、ななな! 何! この子供! 可愛げが全くないんですけど!」


「俺っちの名前は次郎吉。あんたと同じでアーベルトの爺さんに養子にしてもらった極悪人の子供だよ」


この自己紹介は普通にないと次郎吉でも思うがコーネのことを考えるとこの自己紹介がいいと次郎吉は判断した。そしてその効果は早速出る。


「ジロキチ? おじいちゃんの養子? 極悪人? ちょ、ちょっと待って! 情報が多すぎるんですけど!?」


「あんたにとって重要なのは養子のところだろ? さっきあんたとアーベルトの爺さんの関係とか色々本人から聞いてきたよ。あんたとアーベルトの爺さんとの会話も最後のほうだけ聞こえてた」


「う……おじいちゃんからあたしのこと聞いたんだ……嫌っていたでしょ? あたしのこと」


「いいや。自分が全部悪いって言ってたぞ。まるでブランコ乗りながら落ち込んでいるあんたのようにな。血が繋がっていなくても子は親に似る者なのかね?」


次郎吉がそういうとコーネはなんとも複雑そうな顔をする。アーベルトが自分のことで苦しめているのが辛い気持ちとアーベルトも同じ気持ちを持っていたことに嬉しくなる気持ちがごちゃ混ぜ状態になっている。ここで次郎吉は本題を話す。


「俺っちはアーベルトの爺さんに多大な恩がある。今日はその返済のためにあんたとアーベルトの爺さんとの仲介役をすることにした。どうせまた会いに行っても同じことの繰り返しになるだろ? 爺さんから話も聞いてきたし、あんたの話を俺っちに聞かせてくれないか? アーベルトの爺さんにソーサリーファクトの依頼をしたいんだったな?」


「へ? う、うん。そうよ。でもおじいちゃんが何に使うソーサリーファクトか教えないと売ってくれなくて」


「それはそうだろう。ただあんたはアーベルトの爺さんを誤解しているようだからそこだけ修正しておくぞ。アーベルトの爺さんは悪いことにソーサリーファクトを使用するのを嫌っているわけじゃない。人を殺してしまったり、使用者を不幸にするソーサリーファクトを嫌っているんだ」


「へ? う、うそ!? そうなの!?」


やはり一番重要な情報を仕入れていなかったらしい。次郎吉はコーネが本当に悪者として動いているのか心配になったのは言うまでもない。


「そうだぜ? 実際に俺っちが爺さんと一緒に作ったソーサリーファクトで悪さをしているからな」


次郎吉が自分の靴を見せてそういうとコーネは改めて次郎吉を見つめる。


「あんたは一体何者なの?」


「俺っちは泥棒の天才だよ。あんたはその感じだと密偵か何かか?」


密偵とは依頼主から密命を受けて密かに情報収集を行う者だ。江戸時代で言うなら忍者となる。英語で言うとスパイに該当している。情報収集なら人を殺すことは基本的にない。見つかったときに逃げ出す際に応戦することはあるだろう。それらを考えて次郎吉はコーネの仕事は簡単な密偵だと推理した。


「っ!?」


コーネは自分の仕事を当てられて、とっさに腰に隠していたナイフを構えた。しかし次郎吉は全く怯まない。


「やめとけ。後悔することになるぜ?」


「うるさい! はぁあああああ!」


コーネが次郎吉に襲い掛かると次郎吉とコーネは交差する。


「女じゃ俺っちには勝てねーよ」


「何を! へ?」


コーネが振り返るとそこには自分の下着を持っている次郎吉の姿があった。次郎吉は下着泥棒の変態紳士のソーサリーファクトの複製をちゃっかりしていた。次郎吉は女好きなので基本的に女に手を出すのは嫌う。しかしこの下着泥棒のソーサリーファクトは女を傷付けずに無効化もしくは弱みを握れる素晴らしいソーサリーファクトだと次郎吉は評価した。


「あんた……それ……あたしの……いつ盗って……か、返しなさい!」


「泥棒が盗ったものをただで返すと思っているのか? 返して欲しかったらアーベルトの爺さんと仲直りすることと俺っちのことを誰にも話さないのが条件だ」


「ぐ……は!?」


現在の時刻は昼間です。遠くにだが人影がちらほら見えます。


「ほれ。急がないとお前さんの下着が見ず知らずの男の晩のおかずにされるぞ」


「わ! わかったわよ! わかったから早く返して!」


次郎吉、完全勝利である。一方で下着を盗まれたぐらいで泥棒の要求に屈しているのは悪者として大問題だ。しかし思春期真っ只中の女であることを考えるとこうなってしまうのは当たり前かも知れない。


(悪者としてはダメだが年ごとの女としては合格か……)


それが次郎吉のコーネに対する評価だった。


それからお互いに自分の仕事について触れずにアーベルトの爺さんの話をした。こうしたほうが仲直りしやすいと次郎吉は考えたからだ。そして二人はアーベルトの爺さんがいるお店に向かうとそこには黒い魔道車が複数台止まっていた。


「あれ? お客さんかしら?」


「……妙だな。あんな客は俺っちが住んでいる間来たことないが」


するとお店から男たちが急いで出てくると魔道車に乗り込もうとする。次郎吉はその内の一人がアーベルトの杖を持っていることに気が付き走り出した。次の瞬間だった。


ドゴォオオオオオ!!


アーベルトの爺さんのお店が大爆発する。


「「は?」」


次郎吉とコーネは茫然と立ち尽くしてしまったがその間にも次々犯人たちが車に乗ってしまう。そして次郎吉とコーネはそれぞれ動く。


「待ちなさいよ! あんたたち!」


コーネは風のソーサリーファクトを発動させて魔道車に迫るが魔道車も動き出してしまった。一方次郎吉は犯人たちの姿と魔道車を決して忘れないように記憶する。そして急いで燃えているお店の中に入る。


「アーベルトの爺さん! 無事……」


次郎吉の目の前にお店のカウンターが吹き飛んで血が飛びつっている光景が映る。それを見てしまった次郎吉は嫌でもアーベルトの死を認識してしまう。そして怒りで拳を握ると叫ぶ。


「くそったれーーーーー!」


それはアーベルトを救えなかった後悔から来る叫びかアーベルトを殺した犯人たちに対する怒りの咆哮かわからないがここで火事対策のソーサリーファクトが発動し、スプリンクラーのようにお店の中に雨が降る。それはまるで次郎吉とコーネの気持ちを表しているようだった。

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