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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
幼年・少年期編
12/38

#12 世界情勢と魔道技師への道

アーベルトに弟子入りした次郎吉はまず自分の部屋を与えられる。アーベルトの家は一階がお店で二階から五階までが住居になっている。二階がキッチンと大広間で個人の部屋は三階からとなっていた。


「三階は儂が使っておるのでな。悪いが四階以上の部屋を使ってくれるかの?」


「へーい」


老人なら階段を昇るのも大変だからしょうがないと思ったがアーベルトは電磁浮遊するソーサリーファクトを使って階段を昇るというより滑るように登っている姿を見てアーベルトに気を使うことはやめることにした。


そんなわけで次郎吉は四階の部屋を選択した。理由を泥棒しているので一番上の階が安全に見えて危ないことを知っているからだ。


「大切なものがあるならそれを持って地下に来なさい」


そういわれて次郎吉は自分がずっと背負っている大金が入った麻袋を持って、地下にいくと作業場の奥に大きな鋼鉄の扉があった。アーベルトの爺さんが球体のソーサリーファクトを入れると仕掛けが発動し、扉が開く。


「この中に入れておくといい」


「これは……まさか金庫なのか?」


「金庫のソーサリーファクトの理論を使った秘密の部屋と言ったところじゃな。各国の王族が採用しているほどの最先端の防犯技術じゃ」


「これもアーベルトの爺さんが作ったのか?」


そうなると次郎吉からすれば敵となるがアーベルトは首を横に振った。


「いいや。儂と同じ五魔道技師の一人が作ったものじゃよ。他国の人間じゃが儂と仲良くての。貴族の生まれなのにいたずら小僧に育った面白い男じゃよ。今では防犯のソーサリーファクトばかり発明しているつまらん男になってしまったがな」


この世界では犯罪が多いし、防犯のソーサリーファクトは売れるだろう。ましてや金持ちの貴族たちや政治家には売れること間違いない。


「へぇ~。そんな男がいるんだな?」


「ふぉっふぉっふぉ。楽しそうな顔をしておるな? ジロキチ。そうか……ジロキチはその男と少し雰囲気が似ておるな」


「だろうな」


普通の泥棒ならそんな厄介な技術者は消しておこうとか考えるかもしれないが次郎吉はそんなことはもちろんしない。泥棒という犯罪は何も警察や家の人間と泥棒との対決だけではない。防犯グッズを使っている人間と泥棒との対決でもあるのだ。


故に次郎吉は泥棒という犯罪で発生する全ての勝負を楽しむ。技術者を消して勝負から逃げるのは次郎吉が考えている泥棒のあるべき姿ではない。


(現時点だと俺っちはその男に手も足も出ないだろうな。この金庫も今の俺っちじゃ解錠不可能だ。だが必ず俺っちはあんたの発明品を超えさせてもらうぜ? そうじゃないと商売あがったりなんでな)


次郎吉は心の中でまだ見ぬ好敵手に宣戦布告をするのだった。


自分の金を金庫の部屋に預けた次郎吉は早速アーベルトに自作したソーサリーファクトを見て貰うことになった。そして自分が想定した用途を泥棒のことを伏せた上で説明するとアーベルトは納得を示した。


「雷属性を用いた障害物への衝突回避のために曲線での高速移動を可能したソーサリーファクトか……確かに電磁力を用いるのは正解じゃろうな。で、安全装置がその衝撃緩和のソーサリーファクトというわけか。しかしこれだけでは相当体にダメージを受けると思うが? よく無事じゃったな」


「溜池に落ちたんだよ。それでもめちゃくちゃ痛かったけどな」


「ふぉっふぉっふぉ! それはそうじゃろうな!」


アーベルトは実に楽しそうに笑う。近年ではそういう無茶をする若者はまずいないからだ。それだけソーサリーファクト自体がもう完成された技術であることを証明している。


「笑ってないで俺っちのソーサリーファクトはアーベルトの爺さんから見てどうなんだよ」


「評価をするなら独創性は50点、効率性0点、安全性0点じゃな」


「酷い評価だな」


「確かにそうじゃが独学でしかも魔法を使えない者が作ったのならそうなるほうが自然なんじゃよ。実際に儂らがソーサリーファクトを開発しているときなど大爆発することは想定して開発しておったからな」


次郎吉はまだ本から開発の基本を学べたから全然よかったが全くのゼロから開発するならそういうリスクは当然あるだろう。


「では、まずジロキチの靴のソーサリーファクトを完成させるところから始めるとするか。その前にジロキチにはソーサリーファクトを作る上で必要な機材の操作方法と基本的な知識も教えんとな」


「うげー……」


こうして次郎吉のソーサリーファクト制作の基本をアーベルトから教わることになった。しかし当たり前のことだが一日でそれらの技術をマスターすることは不可能だ。結果として基本的な技術を覚えるだけで数か月を使ってしまうことになった。


その間に次郎吉はアーベルトからこの世界の様々な知識を得ることになった。スーパーでの買い物や料理法、世界地図、この国の歴史、現在の世界情勢、この世界の数学や物理学など教えてもらった。


スーパーでの買い物はまず何が食べ物でどんな味がするのかここで次郎吉は学ぶことになった。普通なら親が料理を作ってくれることで色々学んでいくものだが次郎吉にはそれが無かった。ただ自分の鼻で美味しそうかどうか判断していただけにスーパーでの買い物は思いのほか、次郎吉にはいい経験となる。


更に料理はアーベルトが食費などを出してくれることを考えたうえでただお世話になるだけだと釣り合いが取れていないと考えて次郎吉が下手なりに担当した。最初は失敗を繰り返してアーベルトにいじられもしたが数か月も料理していると流石に人並みに料理出来るようになり、料理に使うソーサリーファクトの操作も次郎吉は完璧にマスターするのだった。


次が世界地図。まず次郎吉たちがいるシルファリッド王国は大陸にある大き目な国で位置的には左上に位置している。国としては上と左側は海で下の国境は山脈となっており、右側は次郎吉が通って来たように比較的平らな土地となっている。


王都が中央にあり、これはどこの国でも共通らしい。次郎吉たちがいるファクトライドの町は王都から見て下側にある町で下にあるオジム山脈でソーサリーファクトを作る上で必要な金属が豊富に採掘できることから鍛冶とソーサリーファクトの町としてこの町は発展したそうだ。


次がこの国の歴史について次郎吉はアーベルトに教えてもらった。まずこの世界は何度も大きな戦争を経験している。そりゃあ、魔法なんて力があったらそうなるのも必然だ。しかし以外にも国土の変化はそこまで起きていないそうらしい。


その理由がまず普通の魔法使いが戦争に出るとすぐ魔力切れを起こしてしまう点にある。これは単純に魔力コアの貯蔵量には限界があるためだ。残念ながら魔力の放出量は訓練で鍛えることが出来るが魔力コアのサイズは生まれ持った才能で決まる。


才能に恵まれた魔法使いでも戦争ともなると大技一発で戦闘終了することがほとんどらしい。しかも相手の国の魔法使いも対抗してくるから勝負がなかなか決まらないのだ。


次郎吉の脳内ではお互いの国が大砲を打ち合って、空中でぶつかってばかりいたら地上にいる兵士は無傷になるという映像が流れた。


しかも魔法使いは魔力を限界まで使用すると意識を失ったり、倒れて動けなくなるなどの問題点を抱えていた。戦場でそんなことになったら完全にお荷物だ。魔法使いたちを運ぶために運搬役まで配置するほどだったらしい。


一応歴史の中には化け物クラスの魔法使いもいたらしいがそんな彼らは暗殺であっさりやられてしまうのが歴史の流れになっている。


この暗殺が他国による暗殺なのか自国による暗殺なのかわからないところが恐ろしいところでやはり強い力を持つ存在は国から危険視されることはあるそうだ。自分たちを殺せる力を持つ人間がいたらそりゃあ排除に動くのも無理はない。


そんな真っ黒い歴史だがこの国でも60年前に右にある人間の国バルバリス王国と戦争したそうだ。バルバリス王国からの侵略戦争でこの時期はどこの国も戦争していた流れがあるらしい。その戦争を止めたのがソーサリーファクトの登場だった。


各国が戦争している最中に一般兵士が次々謎の道具を使って魔法を放ったことで各国が大混乱して戦争が終結する流れになったのだ。そりゃあ、いきなりパワーバランスがぶっ壊れる謎の兵器が登場したら、大やけどで済まなくなるだろうから一旦終戦の流れになるのも理解出来た。


「なるほど。アーベルトの爺さんたちがソーサリーファクトを作るきっかけになったのがその戦争だったわけか」


「結果的にそうなってしまっただけじゃな。元々魔法使いと一般市民との間にいざこざがあったのじゃよ。魔法使いは自分たちは神に選ばれた人間であると錯覚し、一般市民は魔法という力を持った存在を危険視した。それを解消するためには一般市民にも魔法の恩恵を与えるのが最も効果的じゃった」


これは現代でいうところの銃社会の構図と似ている。自分たちとは違う人種に恐怖を持ったことで銃で武装し、銃を武装されたからこっちも銃で武装する。お互いに銃を持ったなら争いは止まる。しかしいざ火がつく殺し合いの連鎖が止まらなくなるけど、この世界ではまだそこは経験していないらしい。


「なるほどね。そこに戦争時代の流れが来て、戦争を止める手段として活用したわけだ」


「そういうことじゃな。結果としてはこれがきっかけで一気にソーサリーファクトの存在が世界中に知れ渡り、世界中がソーサリーファクトの開発に熱狂する時代が訪れている流れとなっておる」


ということはソーサリーファクトを用いた本格的な戦争はまだこの世界は経験していないということだ。色んなソーサリーファクトが世界中で作られている現状ではなかなか戦争の決断にはいかないだろう。どんな兵器が飛び出すかわからないで戦争する国は早々いない。


これなら次郎吉は自分が生きている間は戦争に巻き込まれて済むかも知れないと考えた。実際に現在の世界情勢をみるとまだ戦争の傷が各国とも癒えておらず失った魔法使いの補充は簡単に出来るものじゃない。ソーサリーファクトを作る魔道技師の育成もまだまだこれからだろう。


とはいえ準備が整ったら、戦争は発生すると次郎吉は予測する。何せずっと戦争してきている歴史があるのだ。今更引くことはどの国も出来ないだろう。いつか来るであろう戦争を想像して絶対に参加したくないと思った次郎吉である。


最後は次郎吉が大っ嫌いな勉強の時間だ。ソーサリーファクトを作る上で数学と物理学は覚えておかないといけない。そうは言っても難しい数式や計算式を扱うわけじゃない。電磁力でプラスとマイナスは引かれ合い、同じ磁力だと反発するという現代でいうところの小学生が学ぶ理論だ。


最低限の現象を知っておかないとソーサリーファクトのアイデアが生まれることはない。次郎吉の場合は偶然本に載っていたから完成させることが出来たが本に載っていない完全オリジナルのソーサリーファクトを作るのなら避けては通れない道らしい。


そんな数か月を過ごした次郎吉だが機材の操作方法と基本的な知識を得てもまだまだ次郎吉がソーサリーファクトの技術者。この世界では魔道技師になるためには覚えないといけないことがたくさんあった。その一つが魔法陣の存在だ。


「魔法陣は通常の魔法を応用するために必要な手順じゃ。ちょうどジロキチのソーサリーファクトにも使われておるから例に使うと通常の雷属性では電磁力を使うことは出来ん。雷は磁石ではないからのぅ。しかし魔法陣を使えば雷を電磁力に変更することが出来るのじゃ」


「あぁ……なんか本でそんなこと書いてあったな。なんか魔法のルールを決めるとか魔法を改変するとか魔術がどうのこうのとか色々説明されていた気がする。そんなことを言われてもさっぱりで市販で売っている物を買うしかなかったんだが」


「それはそうなるじゃろうな。因みに魔術とは魔法陣を使って発動する魔法のことじゃよ。しかしジロキチ。お前さんにはこの魔法陣を書けるようになってもらうぞ。何せソーサリーファクトを応用するうえで避けては通れん道じゃからな」


「……拒否権は?」


「ないわい」


魔法陣を書くのは現実で言うところのプログラミングに近い。一応魔法陣もある程度は既に開発させているので、基本は既に存在している魔法陣を使用すれば問題はない。だが魔法やソーサリーファクトを複雑化していくとなると自作するしかなくなるというのが現状だ。


逆に言うと魔道技師の腕前が一番はっきり出るのがこの魔法陣となる。何せソーサリーファクトの規模、魔力の省エネ化、ソーサリーファクトの発動速度など全てに影響が出るらしい。


次郎吉は残念ながら学者タイプではない。どちらかというと論より証拠、勉強より遊ぶという行動タイプだ。魔法陣を覚える上で致命傷だが、アーベルトは電磁力を使う発想力を高く評価した。どれだけ計算が上手くても自分がどんな計算をしたいのかわからないとスタートラインにすら立てないからだ。


そういう意味では次郎吉は既にスタートラインに立っていると言えた。そんなわけで次郎吉の魔法陣勉強会がしばらく続くことになるのだった。

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