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デートル  作者: 長門
1/1

〜魂の苦悩〜

かあ

2300年…目まぐるしい科学技術の発展とともに世界のパワーバランスは大きく変わった。


ロボット産業の発展…


ナノマシンの開発…



人造細胞による延命技術…


これらの技術は過剰発展を防ぐ為、国際法でことごとく制限され、生命分野に関してはかなり厳しい制限がかかっていた。


特にこれらの技術の発端となった日本は国際的に強い発言力を持つようになり、

国内では権力構造の破綻が起こった。


そんな中EU加盟国が全て王政復古により国家転覆し…アルバギスタ(地獄の門)と呼ばれる事件が起きた。




彼等は自らを


アニュエス(神に選ばれし者)…


と名乗った。勿論、国際連合、特にアメリカはそれを認めやしなかった。



しかし、その半年後…あっという間にアフリカまでをアルティメタルという凡庸二足歩行型戦闘兵器を用いて支配下に置いた。そして先日にはアメリカと開戦。




アルティメタルの開発に後れを取ったアメリカは苦戦を強いられる。国連はこれに対し断固戦う事を提示し国連軍を組織するが、ユーラシア大陸の大半をしめる中華連合はアニュエス、米国ともども応答せず中立をはかり、ロシアはアニュエスと停戦協定中…


我が日本は国際法により戦争への介入は禁止されており、技術の漏洩を防ぐ意味でも中立を誇示している。


しかして実質上、アメリカとアニュエスとの全面戦争となった。




だから、私は今まで準備していたんだ。そう…




革命という復讐の準備を…




「未練は無い…」




魔王は一軒の家を見て呟くと一人夜の暗闇に消えていった。












気がつくと息が上っていた…


平和で幸せな日常が崩れた日…己の見識の甘さを痛感した。


そして、こう思った。俺はたった一人の愛する者さえ守りぬけないのか…と。


周りには瓦礫とかしたビルが見え、まだ銃声も聞こえる…


これが、社会だというのか…


なんの罪も無い子供達が屈強な男達に取り押さえられ、無惨にも殺される…そんな社会が認められる訳が無い。


だが、今の俺には何も出来やしなかった。


自分の事だけを考えた…


生きる為に…だが頭では分かっていてもこの弱った体では反応できない…


無情にも銃弾は俺の体を突き抜けた…



せめて、皆と会いたかったな…


薄れ行く意識の中俺は皆を思い描いた…






レゾンデートル






俺の名前は長門 龍紀たつき16歳、ただの東極高校に通う高二、身長は165と小柄、後他人と違って特殊な能力を持ってる。


食卓はいつも賑やかで円満。そんな一般家庭に生まれた俺は温かく幸せな庶民生活を堪能していた。



今から丁度一か月前の事になる、俺は思いもしなかった人物と再開を果たす。


ピンポーン


「はいは〜い。」


萠は玄関へ向かう。



長門萠めぐむ…俺の母。年の割りには若々しい容貌を保っている。少し?天然で困った人だが、料理が上手。




夏休みの日曜の朝だというのに一体どこの誰かしら?萠はそう思いながら玄関の戸を開けた。

ガチャリ…


扉の向こうには…


美少女がいた…


一瞬萠は見とれる。


白い肌。


黒くて艶のある真直ぐに伸びた髪。優しそうな目…おしとやかで控え目な性格…


一言で表すなら大和撫子。


「か…可愛い…」


萠は気付かぬうちにそう言っていた。


「えっ…あっありがとうございます。あの、私、四鳳院しほういん ともえって 言います。今日は長門さんにお話しがあって参りました。」


戸惑いながらも丁寧に挨拶する巴はニッコリ笑っていた。


「いらっしゃい巴ちゃん。私は萠っていいます。よろしくね。」


ウインクする。萠は対抗しようとしたのか10年前の自分を再現しようとした。


「何、年甲斐もなく、恥かしい事してんの母さん…」


俺は母の様子を見て笑いながらやってきた。


「ショッキング〜息子が私に厳しい〜」


すると萠は頭に両手をつけてそう言いながら家を出ていった。



巴はおろおろする


「あ…あの、大丈夫ですか…」


「気にしないで、いつもの事だから。」


俺はハハハと笑って少女に言った。


「俺は龍紀、君は?」


俺の名前を聞いて少女はどういうわけか眼に涙を浮かべた。そして…


「たっちゃん…やっと会えた…」



柔い肌の感触…仄かに香る、睡蓮の香。控え目な話し言葉



突如フラッシュバックが起こった。夕日に照らされて茜色に染まる坂が浮かび上がる。


「たっちゃん私たっちゃんの事……だ…」


少女は口ごもる。


もし断られたらどうしよう。もう会えなくなっちゃうのかな?そんな不安を少女は覚えていた。


「あのさ、俺…大好きなんだ。」


少女の好意に気付いた少年は意地悪そうに言った。


敢えて対象者を言わずに少女の背中をおしたのだった。


「わ…私も。たっちゃんが大好き!」


そこで、少年が意地悪そうにこう言った。



「あれ?俺そんなこと言ったっけ?」


「えっ…」


少女の表情が曇った。


「たっちゃんは…私の事…好きじゃないの?」


「う〜ん。今はそういうのは分かんないや。それに…」


「それに?…」


「俺、今日引っ越しちゃうから、それで今俺が好きって言っちゃったら…どうなる?巴も悲しいし、俺も悲しいよ。」


少年は少女の眼を見つめた。


「でも、でも……あうあぅ…」


少女は今にも泣き出しそうになっていた。


「でも、このまま別れるなんてやだよな。だから…はいっ」


少年は赤いリボンを少女に差し出した。


「これは…?」


「プレゼント。っていうより目印だよ。」


「目印?」


少年は少女の飲み込みの悪さに、もどかしさを感じた。

「もう、あ〜…えっとね、それつけてて欲しいんだ。そしたら巴ちゃんだって分かるじゃん。」




「なるほど〜。じゃあ…大きくなって再開したら返事してもらえるの。」


少女の表情に明かりがともる。


「ああ。巴ちゃんがいい女になっていたらな。約束だ…」



巴…あの時の女の子か…


そこでフラッシュバックが終了する。


まさかな…本当に会えるなんてな…


「巴…」


「たっちゃん…」


見つめあう…


ポカ!!


不意に拳骨が飛んで来た。


「朝から玄関で何してるんすか?えっ?


龍紀君?」

コイツが親父、頼光らいこうだ…空気読めよ。俺は取りあえず巴を離す。


「おっ、これはこれは…また随分と可愛い子じゃないか。あんまし女遊びばっかしてると嫌われるぞ。」


「うっせぇよ…ばーか。」


「何照れてんだよ気持ち悪いな。あっ…自己紹介まだだったな。俺は、このぼんくら息子のダンディな父、頼光って言うんだ。よろしくな、お嬢さん。」


こいつもまたウインクする。


「自重しろ…」


「うっせぇ。ばーか。」


真似された。



「で、巴…何の話だっけ?」



「あの……私をお嫁に貰って下さい…」



…………………………


「すまん…最近耳がおかしくなったかもしれん。もう一度言ってくれ。」


「私をお嫁に貰って下さい…」




「「ええぇえっ!!」」



パニクる親子であった。



「…」


「………」


頼光と龍紀は黙していた。


時をさかのぼるとこういう事になる。


えっと…それじゃあ、おうちまで来てもらえますか?」


お嫁さんにしてください発言が終わった後の事だった… 親父は面倒くさいとはんだんしたのか背を向けて二階に上ろうとしたのを俺は引き止める。


「何逃げてんだよ。」


「えっと…お父さんは、行ったほうがいいのかな?やっぱり…」


「はい。父は貴方に会いたがっていますので。」


俺は親父に目配せしてこう言った。


(取りあえず、腹決めてあんたも来いや。)


(バーカ、こういうのはな、若い二人が決める事なんだよ!)



「どうも、失礼します。」



二人が揉める最中に巨漢が家に入ってくる。


「お前は…忠将?(ただまさ)忠将だよな!!。」


親父はその男を見るなりビックリしたような口調で言った。知り合いらしい。


「久しぶりだな。頼光…ほう、そっちがお前の息子か?」


「長門 龍紀と申します。」


親父ではなくおれが対応する。 そして…巴が忠将を見て口を開く。


「お父様。」


「「えぇっ!!!」」

俺と親父は巴がその厳つい男の娘である事に驚いた。


「まぁ、立ち話もなんだ…上がってけよ。」


頼光は忠将と巴をリビングに案内すると話をきりだした。


「でだ…忠将、うちの馬鹿息子にこんな可愛い娘を…」


「やらんっ!!」


忠将は頼光の言葉を繋ぐ。


「えと、じゃあ、そのなんだ巴ちゃんの意思なのか?」


「はいっ。」


ニコニコと笑って巴は答える。


「言い出したら聞かなくてな、よっぽど昔の約束が大事らしい…」


忠将は溜め息を吐く。


「所でその荷物は?」

旅行ケースをさして龍紀は言う。


「遺憾ながら、私の仕事上の関係でな。昔の同僚のよしみで巴を一年預かって貰いたい。」


「まぁ、娘が一人増えたみたいで嬉しいわ」

お茶を運んで来た萠が言う。


「…分かった。巴ちゃん一年間よろしくなっ。」


「どもどもです。」


「忠将、ちょいと話がある。表へ出ないか?」


「ああ。」



頼光は忠将を連れていった


「こう話すのも久しぶりだな…すっかりマイホームパパだな。」


忠将は煙草に火をつけて言う。


「まぁな。まだ仕事続けてんのか?」


「ああ。」


「そうか…」


頼光の表情が少し曇る。


「お前は何で辞めたんだ?」


「あいつ(萠)と決めたんだ。もう危ない事はしないってな。それに俺には国を守るとかそんなたいそれた事は出来ない。だから俺は俺の目に映る人の幸せを守りたいと思う。」


頼光は胸を張って言った。


「五年前のテロを防ぎ尚且つ真相を掴みかけたお前がよく言うな。」


「何とでも言え。」


「それとお前に凶報だ…最近、政界やアンダーグラウンド(裏社会)の大物の子供を誘拐する事件が多発している。」


それを聞くや溜め息を吐いて頼光は言う。


「初耳だな…」


「ああ、とても公に出来る様な事じゃ無いからな。」


「警察、特高は何をしていたんだ?」


「もちろん犯人を血眼になって探したし待ち伏せ、SPによる護衛全てやれるだけの事はやった。だが犯人は姿どころか尻尾嫌、痕跡すら残さぬ完全犯罪を必ず成し遂げる。そして犯行前に奴は必ず黒い手紙を送る。


おいでよ坊や…面白い遊びをしよう…


魔王より…ってな。


頼光は目を鋭くする。


「魔王とは随分と自信家の愉快犯だ…分かった。何かまたそれについて分かったら連絡してくれ。」



「…何にせよ巴をよろしく頼む。」


「任せとけ。お前も娘さんを悲しませるような事するなよ。防衛相殿…出世、祝えなくて悪かったな…今度は飲みに行こうぜ。」


決まり悪そうに言う頼光に忠将は苦笑いで答える。


「ああ。期待しているぞ…伝説の英雄さんよ。」


忠将は黒のリムジンに乗って帰って行った。…



忠将は車内で思った。


いずれにせよこの国は大きく変わる。

いや、5年前のような事件は起こり兼ねないな……


只でさえ、我が国は二極化している。アニュエス追随派とアニュエス反抗派。


今のところ私の属する反抗派は旗色が悪い。



このまま行くと最悪の場合、日本は消滅し…


アニュエスの植民地となる。


これだけは何としても避けなければならない。



5年前の決着と…


皇国、日本を守る為に。

アニュエスは我が国に同盟を申し出ているが…それはただ我が国の技術を使い、…絶対的な強さによる世界の統一化を成し遂げる為に…




残念ながら、今のところ我々にアルティメタルを超える兵器は完成していない。




だが我が国に向こうから同盟という譲歩を出してきたのはアルティメタルを超える技術が我が国にあるという目論見があるに違いない。




我が国はこれまで崇高な理念を求めて社会を形成してきた。2288年第三次非核大戦がお隣りさん(中国)を中心に勃発。日本は憲法九条又は国際法を突き付けて世界大戦へは参加しなかった。結果中国を中心とした反乱軍はアメリカやヨーロッパ諸国の国連軍に叩きのめされ人口が以前の半分になるほどの戦死者が出た。


その一方で日本は特需景気による急速な経済成長が起こり一躍世界のトップにつくと技術革命と呼ばれる発展を遂げた。それが幸か不幸か国内におけるパワーバランスが崩れはじめ軍部が力を持つようになる…それからかEU系の企業が日本に進出し始め、三権分立の保護を名目に特別高等管理官が現れる。


そこから日本はおかしくなっていった…


憲法九条の部分的改正法案の可決により自衛隊は防衛軍に。国連からの脱退…軍事産業複合体への荷担…最重要工学技術者の謎の失踪…


豊かさの影では不可解な事件が相次いだ。私はそのときから何かしら良くない事が起こるのではないかと思った。その矢先に事は起こった。



アルティメタルの完成とアニュエスの誕生だった…


やはり私の予想は当っていた。硬い装甲とその体躯からは想像出来ぬ機動性・火力を誇るアルティメタルは単機で作戦行動を可能とする新型次世代兵器として登場し戦場で一躍その戦果を発揮した。


世界各国はそれに危機感を覚えた


更にアニュエスはこう世界に言った


我々に従う者には力を…刃向かう者には死を…


つまり、仲間になるならアルティメタルの技術を渡すと。


それに目が眩んだ何国かはアニュエスと同盟を結ぶ。


だが同盟国になったのは発展途上国が多かった。


それも、資源や地理的な要因もなしのただ無作為としか言い様が無い程の奇怪なものだった。

アニュエスにとって同盟国の利用価値はほぼ無いはずだと私を含め皆は首を捻った。


しかし…先日アメリカの軍事偵察衛星によりもたらされた写真により各国は驚嘆する事になる。




どのような技術を使ったのかはまだ不明だが、アニュエス同盟国の山岳全てに巨大シェルターを確認。尚物資の輸送がなされていた。



彼らは世界規模で戦える基地を通常ではありえない早さで築く事に成功していたのだ。



国連は日本の復帰又は国連軍として参戦する事を明朝発した。



国際的危機状態である今我々はアニュエスと戦うべきなのだ。




アルティメタルが元々我が国の陸上防衛軍が秘密裏に開発していた鋼という兵器に酷似しているという点だ…


兵器の不必要な開発は我が国の憲法で保障されていた為開発は中止されたはずだった。


ここで私は肝心な事に気がつく。


技術者や企業からの抗議が殺到したが我々は了承しなかった。


…だが不戦の憲法への矛盾が日本の内政を益々揺れ動かす。



今…防衛大臣の身である。一国を守る者として現政権の崩壊が予測される今…



私は何をすべきだろうか?



私は目を瞑った。

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